サンチェス首相の政権維持へのエゴがイーリャ氏を州知事にさせた
8月に入ってカタルーニャ州の州知事にカタルーニャ社会党(スペイン社会労働党と連携)の党首サルバドール・イーリャ氏が就任した。独立派カタルーニャ共和左派と極左スマールの支持を得て就任したものだ。
上述2政党がイーリャ氏の就任を支持した背後には、カタルーニャ州で徴収する税金のすべて100%が同州に納められることになるという合意が交わされたからだ。徴収されたその一部をスペイン政府に交付金として付与するというシステムになる。即ち、これもカタルーニャ独立へ向けての一歩となる。資金源をコントロールするのは独立への重要なカギだ。
勿論、そこにはサンチェス首相がそれを承認したからだ。同首相は自らの政権を維持するには、どのような犠牲を払っても良いというエゴがそこにある。このシステムを導入すると、他の自治州への交付金が減少するのは明白だ。唯一、バスク州とナバラ州は例外だ。この2州はスペインが民主化へ移行した時点から歴史的な背景もあって、このシステムを採用して来た。
これまでだと、カタルーニャで徴収した大半の税金をスペイン政府に一旦納め、そのあとスペイン政府が同州に交付金として支給するシステムであった。それが、カタルーニャ州では廃止になるということだ。なお、これはまだスペイン議会での承認が必要となっている。
他自治州への交付金が削減されないようにするためには、税金の徴収を増やすことしかない。これは共産主義化したサンチェス首相が得意とする分野である。
保険相だった時に最も高額の汚職を記録したイーリャ元保健相
カタルーニャ州知事に就任したサルバドール・イーリャ氏であるが、同氏はコロナ禍で最も汚職金額が高い保険相であったということが忘れられているようだ。即ち、その責任がこれまで一切問われていないということだ。
自ら保険相だった期間中に多額の汚職が発生したという管理の不十分を反省すべきだ。その責任を取って辞任し、その汚点を償うという意識がまったくない。これもスペインらしい。スペインで閣僚が汚職や罪を犯しても辞任することはまず稀である。
サルバドル・イーリャ氏はコロナ禍下で医療品の買付のすべての決定権をもっていた。その為に、彼が買付予算として持っていた金額は25億7800ユーロ(3100億円)。ところが、少なくとも7億ユーロ(840億円)余りが現在までに損出とされている。即ち、マスク、人工呼吸器、手術手袋、ガウンなどを輸入したが、不良品が大半で、しかも納期も大幅に遅れた。(3月12日付「リベルター・ディヒタル」から引用)。
ところが、不良品と納期の遅れに対して保健省は輸入業者や仲介業者に返金の請求をしておらず、損出と計上されている。なぜ請求しないのか? 理由は明白だ。彼らが相当額のマージンと手数料を頂戴しているからだ。しかもその大半がイーリャ元保健相の関係先でもあった。中国の輸出企業に対し不良品の返金要求をしても先ず回収は不可能である。しかも、多額の手数料を取っていたその輸入業者や仲介業者からも返金を要求するということは現実的には不可能だからである。