地方議会の権力と腐敗③:地方議会の腐敗は息をひそめる

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前稿では、腐敗した議会の事例を説明しました。

(前回:地方議会の権力と腐敗②:賛否独占による絶対権力の構造

今回は、なぜそのような「腐敗した議会」が全国的に放置されているのかを概観し、本稿のまとめをします。

Q6. そのような議会では、「過半数議員団」以外の議員が何を言っても、市長や行政にとって「痛くもかゆくもない」のではないですか?

必ずしもそうではありません。

確かに、行政が「議会のドン」や「過半数議員団」を懐柔できれば、議案は常に賛成多数で可決されます。しかし、議員は行政の予算に関する詳細、例えば予算書や議案の説明資料等に最も近い存在です。そのため、「過半数議員団に属していない議員」が議案の中で明らかな問題を見つけた場合、それを議会で問いただし、市民の皆さまに知らせることができるのです。

そのようにして議会で議論された問題がメディアの目に留まれば、テレビでの報道や、新聞記事として取り上げられることもあります。

佐倉市の場合、市職員向けの持ち家手当を復活させた議案について、私を含む複数の「過半数議員団以外の議員」により議会内外で問題が取り上げられた結果、多数のメディアに報道され、全国に佐倉市の「特異性」が知れ渡ることになりました。

Q7. そのような地方議会の問題は、大なり小なり全国的なものであるとのことですが、ほとんどの国民が知らない理由はなんですか?

要因はいろいろありますが、そういった議会では、先に説明した通りできる限り市民に「関心を持たれない」ように運営してきたことが大きいと思います。

例えば、重要な議案に対する賛否理由の説明を市民にしないのもその一つです。賛成であれ反対であれ、議会の中で賛否が割れた議案であれば、その理由を市民の皆さまに理解していただこうとするのが議員の務めですが、それをしない。

ポスターや看板をたくさん掲示して顔や名前を市民に植え付けたり、夏まつり等の地域イベントに積極的に顔をだしたりすることで票が入るのであれば、本来議員としてやらなければならない仕事をしなくても議員は続けられるのです。

例えば、皆さんが誰かに、定期的にある場所の草刈りを仕事として依頼したとします。その相手は、あなたにとって「なんとなく知っている人」あるいは「夏祭りで楽しくお話しした相手」という理由だとします。

結果、その人は草刈りをせず、その場所は草ボーボーでした。もしそこが皆さんの庭なら、二度とその人に仕事を依頼することはないでしょう。しかし、皆さんがその場所に関心がなく、仕事の確認もしなかった場合、その人は何もしないまま定期的にお金だけが支払われることになります。

上の例でいえば、「草刈りをしない知人」とは全国の多くの地方議会議員であり、「草ボーボーの荒れ地」とは地方議会の在り様です。

まして、議員には税金の使い方について強力な権力がありますから、賛否について市民が無関心ならば、「草ボーボーの荒れ地」において、自分の思うように議決権を振り回して、やりたい放題にできるわけです。

【まとめ】なぜ「議会のドン」や「過半数議員団」は市長を超える権力を持つのか?

  • 市議会の過半数をおさえれば、市の事業のすべてをコントロールすることができる
  • 結果、市長や行政職員は、「過半数議員団」の言いなりになる
  • 「議会のドン」に従っていれば、市職員は出世できる。そうなるとますます、市長や市民は軽んじられる
  • よって、「過半数議員団」は、市民に議会の運営を秘匿しようと画策し、それはおおむね成功している

以上が、私がいう「地方議会の機能不全」の典型的な一例です。

皆さまのお住まいの市町村における議会はどうなっているでしょうか?

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