先日は敗戦記念日でした。いい加減に終戦記念日などというマイルドに薄めた名称はやめるべきです。
我が国は無謀な戦争を引き起こし、ボロ負けしたんです。戦時中は全滅を玉砕、敗退を転身と言い換えて、戦後は占領軍を進駐軍です。戦車をもってはいけないから、特車と言い換えるとか。
名称を変えても実態は変わらない。それをあたかも変わったように変えて、自らをごまかして、現実から逃げようとする。
そういう腐った根性が戦争を起こしてボロ負けしたんです。
コンテンツ成長論(上)日本発アニメ稼ぎ頭に 輸出額、半導体や鉄鋼並み ドラマやスマホゲームは韓中が先行
コンテンツ産業に官民が熱い視線を注いでいる。日本発のキャラクターやゲームが世界に浸透し、クリエーターの層の厚みも世界随一だ。革新的な技術を生かしグローバル化を進めれば、日本経済を支える基幹産業になりうる。
「デジタル赤字を取り戻すカードになる」。経済産業省幹部は日本のコンテンツ産業の将来性を強調する。デジタル分野での国際収支の赤字は2023年に5.5兆円と5年で2倍に増えた。クラウドサービスやネット広告などで海外への支払いが膨らんだ。
「韓国のような官民一体となったサポート体制があって、それに後押しされた作品と今なかなか戦えない」(是枝氏)。「支援をするにしても目利きの人が絶対要ると思う。無駄にお金が使われてしまうのは一番もったいないし恐ろしい」(山崎氏)
コンテンツ産業は生産設備にお金を投じ均一化した商品を作る製造業とは異なる。13年に発足した官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」の累積赤字は400億円近くになった。効果的な政策のあり方は難しく、試行錯誤が余儀なくされる。
なんか日本スゲーみたいな期待論です。
1998年に拙著「ル・オタク フランスオタク物語」でも指摘しましたが、クリエーターへの配分がアニメは低い。これは漫画でも同じです。
映画監督や漫画家への支払いは極めて低いし、大ヒットしても儲かりません。
例えばアニメ「超時空要塞マクロス」とかヒットを飛ばしたスタジオぬえ、とか本来ならば自社ビル建てて、自前でアニメ制作できるぐらいの稼ぎがあってしかるべきです。ですが、たいして儲かりはしていない。アニメーターとか政策現場も同じです。
現場のガンバリズムとクリエイターとしてのやる気だけが支えているのが実態でしょう。
金がなければ参考資料も買えないし、取材もできません。
例えば金持ちの設定でも実際に高級レストランにいったことがなければ、貧相な描写しかできないでしょう。作品は霞を食っていればつくれるものではない。
経産省は無能です。クールジャパンがどうなったか今更いうまでもないでしょう。単なる政治ゴロに食い散らかさされただけです。クールジャパン機構もセクハラ・パワハラで労使対立がひどくて組織の体をなしていなかった。
大手出版社も搾取するだけです。元講談社社員で、退職後調査報道支援のための、スローニュースを設立し、代表取締役に就任した瀬尾傑氏は古巣の講談社の社食でうなぎを格安で大盤振る舞いしている様子をフェイスブックで嬉々として投稿していました。
講談社にしても社員の待遇は業績が下がっても変わりませんが、ライターや漫画家のギャラや経費は増えるどころか減っています。漫画家の東村アキコさんクラスですら原稿1枚1万5千円が相場だそうです。
ある意味クリエイターを搾取して甘い汁を吸っているわけですが、それをSNSで嬉々として紹介することに、違和感を覚えないメンタリティをぼくは大変無神経だと思いました。それで調査報道のジャーナリストにキチンと経費を払えるのでしょうか。
例えば韓国やフランスといった成功例があるなかで、税金を食い物にしかできなかったならば、何もしないほうがまだましです。
まあそれでも漫画やアニメやゲームとかそれなりに儲かる可能性があるにはあります。市場も大きいし、一攫千金の可能性もある。確率は少ないですが。
対してジャーナリズム、特に軍事ジャーナリズムなんてもっと悲惨です。本を出しても大ヒットする可能性はない。ぼくが駆け出しの頃は何社か頼めば海外取材費用は賄えましたが、今は殆どでません。
ジェーンズの年鑑など1冊20万円はしますが、そういう資料を買うのも大変です。
それでもマニア誌では仕事はそれなりにありますが、シリアスな専門的な記事を書ける媒体は殆どありません。もっとも海外でも大同小異で、ジェーンズなどでも書き手の質が相当下がっています。
軍事の素養があって英語ができて、海外の文献を読み込んで、世界で取材できる対人能力がある人間は殆どいません。いても別の世界に行くでしょう。まあだからぼく程度の語学力と能力でもそれなりにやっていられるのですが。
その方向の人はえてして安全保障業界に行くのですが、たいてい論文屋さんが多い。皮膚感覚で軍事の事がわからない人が多いように思えます。例えば自衛隊の戦車の運用や性能の問題などは理解できないか、調査報道しないので現実に触れる機会がない。護衛艦の定員の充足率や、医官の不足とか興味ないでしょう。こういうことは調査しないと分からない。そういう意味では小泉悠さんや稲葉義泰さんは稀有な存在です。
本来アカデミズムとジャーナリズムは車の両輪ですが、片輪で真実に近づけるわけがない。
「お勉強」だけできる学歴満艦飾のひとたちの「安全保障」は極めて危ういと思います。
ジャーナリズムもなにか公的な負担で底上げしないと、絶滅してしまうと思います。海外に行って取材するジャーなリスがいなくなって、みんなコタツ記事を書くか、自衛隊のお仕着せの取材しかしなくなればニュートラルな立場から、価値ある情報書く書き手はいなくなります。
それは情報が入ってこなくなる、外国人の出す情報に頼ることになる、ということです。
それは国益の面でも大変問題だと思います。
【本日の市ヶ谷の噂】
陸自が銃身長の短い20式小銃用に鳴り物入りで導入した新型弾J3はMINIMI Mk1及び新たに今年なら道入されたMk3で使用すると弾道が散って使い物にならない不具合が露呈。間抜けにも採用以前に新型弾薬の試験をしてなかったことが原因だが、対策としては別な新型弾を開発することになった、との噂。
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Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態
月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。
軍事研究 2024年 08 月号
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年8月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。