破綻したハリス・民主党政策と大統領選の帰趨

熱狂的な盛り上がりを見せた民主党全国党大会(於シカゴ:19日(日本時間20日)〜22日)で、大統領選候補者受諾をしたカマラ・ハリスであるが、現下の大手メディア等によるハリス優位の世論調査に反し、筆者はやはりハリスはトランプに勝てないだろうと見る。

当初筆者は、国境対策を担当したハリスは、「不法移民を入れないようにして、入れろ」という矛盾した命題を与えられて無理ゲーをやらされていると同情する見方をしていたのだが、バイデンが降りて大統領選候補とされて後の発言を見ても、本人もそれから外れた考えを持っていない事が分かってきた。

-カマラ・ハリス氏インスタグラムより

大統領選に於ける政策としては、現バイデンのもの、採択された民主党の政策綱領、ハリス独自案があるが、当然ながら大きな方向性は一致しており、大統領選を通じてどうアレンジして行くかが問われる。

米民主党が党大会で党政策綱領を発表:ハリス氏の独自案は盛り込まれず

国境政策

民主党としては、不法移民を大量に入れて、何年か先には市民権を与える。それ以前の市民権が無い状態でも人口動態調査により州別選挙人割り当てを左右出来る。また、投票時にIDの提示を求めないようにすれば、もしやろうと思えば不正選挙は容易となる。

そのため、不法移民を「入れないように装って、入れる」事は、民主党の長期短期の利益となり、揺るがぬ基本方針だろう(なお何らかの暴動が起きた際に、仮にこれらに不法移民が加われば大きな脅威ともなる)。

経済

基本的にバラマキ&増税路線である。バイデンが試みたと同様の学生ローン返済免除は、最高裁で再び否決されると見られるが、構わずハリスの政策にも引き継がれる可能性がある。

インフレ対策としてのハリス独自案の食料品等の価格統制、住宅取得への補助は、民主党内からも市場メカニズムへのリスクが多いとして反対の声が挙がっているが、選挙の目玉としては押し通すのではないか。なお、オワコン化している感も出て来つつあるCO2削減策の推進は揺るがないようだ。

外交

ウクライナ戦争で、結果的に中露を組ませ、BRICSやグローバル・サウスもそちらに追い遣る事になっており、このまま続ければ早晩、西側は詰み米国は覇権を失うだろう。多額の援助は軍事産業に還流してくるが、血税がそこに注がれる事に一般米国民の理解は得難いのではないか。

中東政策では、トランプの親イスラエル側スタンスからのアプローチが、果たしてアブラハム合意の拡大進展と言う形で妥協の下に一定の安定を齎すものかは見通せないものの、一方の民主党の具体性と意志が希薄な政策では混乱は拡大して行くと思われる。

その他、大きな所では、中絶の権利問題があるが、トランプ自身は各州の判断に任せるとしており、民主党が狙う程の大きな争点とはならないのではないか。

以上を踏まえると、期日前投票はあるが11月の投票日までに、党大会の熱狂は薄れて行く中で、トランプ陣営に徹底的に政策の矛盾や実現性の無さを攻撃されるだろう。なかんづく国境対策やインフレ対策で「なぜ、現職の副大統領期間中にそれをやって来なかったのか?」という問いに答えるのは難しい。トランプなら何かそれを端的に攻撃する標語を創って攻めて来るのは容易に想像出来る。

6月末のバイデン vs トランプの討論会でバイデンが手痛い失態を演じた約2週間後にトランプ暗殺未遂が起き、その後民主党は候補者をハリスに差し替えた。

なおクルックス容疑者は、「クルックス容疑者と仲間たち」であったとも言われており、トランプを抹消してさえその再選を阻みたいと思う者の予備軍は、まだまだ多いと想像される。

仮に9月10日の第1回討論会の前後で、圧倒的にトランプ優位で覆せない状況になった時、第2のクルックス容疑者が現れる可能性は否定出来ない。あるいは、ハリスを抹消して弔い合戦でトランプを屈しようという倒錯した目論見を抱く者の出現すら考えられなくもない。

勿論、もしハリス優位で進めば、親トランプ派の中から上記と全く逆のシナリオを描く者が出て来る可能性もある。

世界は今、歴史の岐路に立つ。その運命を握る米大統領選に於いては、何れにしても警備当局には万全の態勢で臨んで頂きたいと願う。

追記:上記再度の暗殺事件云々は、所謂「陰謀論」の類となるが、陰謀論として押し込める事には事件の再発を助長しかねない懸念がある。陰謀論として論じるのを忌避する事は、事件を企図する者に予防体制の手の内を明かさないメリットは考えられるものの、恐らく警備当局の弛緩、怠慢を放置する事に繋がるデメリットの方が上回ると思われる。

なお、大手メディア・プラットフォームに見られる先の暗殺未遂を矮小化しようとする動きは、結果として次なる事件を誘発するよう作用してしまうだろう。