防衛装備庁に装備開発を主導する能力なし

安達・前防衛装備庁技術顧問が語る 防衛技術戦略の未来予想図

安達・前防衛装備庁技術顧問が語る 防衛技術戦略の未来予想図 | 実業之日本フォーラム
防衛装備庁が国の防衛力強化に必要な技術分野などをまとめた「防衛技術指針2023」。2022年12月に策定した

みずから提議している問題から逃げています。総論賛成しか言えていない、自分たちの能力不足を自覚すらしていない。

その自覚があれば国内生産企業が決まらないのに、AMVを選定し、しかも音声無線機しか搭載しないか間抜けなことはやっていません。

「人員」については、人材不足の問題があります。防衛装備庁は約2100人の職員(事務官・技官約1700人、自衛官約400人。2024年7月時点)を擁する大きな組織ですが、防衛技術指針に記載されていることを全て遂行するには、質・量ともにまだまだ不十分であると感じています。

他国と同じように調達数、調達期間、調達金額を決めて契約すれば、ずいぶん仕事は減ります。他国が5年で調達するものに30年も人間貼り付けていれば、人手が足らないのも、勉強不足になるのも当たり前です。さらに申せば、メーカーや商社も同様に貧乏暇なしになるのは当たり前です。

防衛省・自衛隊HPより

耐用年数を過ぎた装備を交換することも可能だったはずです。例えば、戦車の消火器とか各種リチウムイオン電池とか、防弾チョッキとか。一旦調達したら放りっぱなしの装備が大変多い。これらを見直す良い機会だったはずです。

耐用年数が過ぎたものをなんの問題もないかのごとく交換しないのは犯罪的であります。

それがわかっていないのは馬鹿だからです。無能だからです。

政府は7月、2023年度予算に計上した防衛費を巡り、使い残しが約1300億円に上ることを明らかにしました。例えれば、非常に能力の高い戦闘艦艇1隻分が国庫に返納されたことになりますが、苦労して予算を確保したにもかかわらず、忸怩(じくじ)たるものがあったと思います。

使い残しの背景には、防衛装備庁における契約の仕方や会計業務の能力の問題というより、受注する国内企業の事情があると思います。

輸入を優先すれば良かった。3年ぐらい細々と買っている輸入品をまとめ買いすればよかった。その間に国内企業の生産拡大体制を整えればよかった。

防衛装備庁は当事者の能力がないのでそれができない。「防衛装備庁における契約の仕方や会計業務の能力の問題」という事実を直視しないで逃げている。

目標とする性能と設定期間内での達成を「成功」とし、5年の目標に6年かかれば「失敗」とするような評価の仕方を取り入れるべきです。

これをやると企業は「できる簡単な開発」しかしなくなります。技術開発を舐めているとしか思えません。

防衛省が従来の組織の中でDARPAやDIUのような手法を取り入れようとすると極めて窮屈になるので、既存の枠から離れて円滑に進める狙いから、イノベーション研究所の設立を決めたと思います。先進的な技術について、テーマごとにプロジェクトチームを編成し、チームごとに技術研究開発を推進していく流れになるでしょう。

無理です。

装備庁に目利きのできる人間はいません。メーカーでものづくりをした経験もない。目利きでいれば商社から有能な人間をヘッドハントしてくるべきです。

ぼくが問題にするまで技本の海外視察予算は100万円以下でした。しかも大半が退職前の偉い人の卒業旅行でした。それが解消されても、未だに装備庁の人間は見本市を有効活用する能力がない。せっかくパビリオンを出しても、その管理だけに人をだしているだけで、パビリオンを拠点に10人単位で人間を派遣して情報を収集や情報交換といったことをやる気はない。

だから18式防弾ベストみたいなクズを一桁高い調達価格で「開発」し、調達計画ありませんとか言えるわけです。この期に及んでもプレートキャリアもなく、採用したプレートはわざわざSAPI規格からはずしているし、重たくて防弾性能が低く、しかも衝撃吸収が考慮されていないので小銃で撃たれたら死にます。

医官がそういう提案をしても余計なことをするなと無視しました。

米軍のものをそのまま採用する方が、よほどまともで、コストも低い。

18式に関していえば、ぼくの記事がきっかけで改良がされるそうです。

全体的に見ると、日米の安全保障上の利益になるとは思いますが、日本の造船業も厳しくなり、例えば、昔は護衛艦の建造所として5社ありましたが、今では2社に減りました。人手不足の問題もありますので、米国との役割分担が行き過ぎると本来の日本の防衛力整備に遅れる可能性もあります。このため、わが国の国益の観点での判断が必要かと思います。

何を行っているか本人もわかっていないのでしょう。支離滅裂な文章です。

要は事業統合する気はないということです。小さな国内市場を分断して細簿とした売り上げで、研究開発も重複し、将来性のない事業も救済する。それでバラ色の未来が開けていると信じているのでしょう。

そして商社をどう活用するかという視点もない。先端の情報を持っているのは商社です。日本のメーカーは商社にアテンドしてもらわないと見本市の視察すらできないレベルですよ。その現実が見えていない。

そしてイージスアショアを断念したときに見切ることもできず、SPY7の有効活用と称して金食い虫のクズとなることがわかりきっているイージスシステム搭載艦を2隻建造することを決めてしまった。装備開発、調達の当事者として無能の極みです。

装備庁よりも、かつての技本の時代の方がまだしでした。このような自覚すらない無能な役所に、多額のカネを渡すべきではありません。

【本日の市ヶ谷の噂】
18式防弾ベスト、新個人装着セットはキヨタニの指摘で、新規にプレートキャリアが開発されるなど、改良が決定している、との噂。

Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
海上自衛隊の潜水艦メーカーは2社も必要あるか川重の裏金問題で注目される潜水艦の実態

月刊軍事研究8月号に防衛省、自衛隊に航空医学の専門医がいないことを書きました。
軍事研究 2024年 8 月号 


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2024年9月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。