やはりFRBの判断ミスが問われるかも:金利調整に振り回される民と企業

買収提案を受けているセブン&アイの返答が「提案拒否」と報じられていますが、実質的には「金額次第では断れない」といっているようなものです。北米で日常茶飯事行われるM&Aの様相からすれば個人的にはカナダのアリマンタシォン クシュタール社に分が出てきたとみています。もしもア社が現状の6兆円弱からあと1-2兆円上乗せすればセブンは断れなくなります。ア社がそこまでしてでもセブンを欲しいか、賽は投げられたとみています。先方が敵対的買収を仕掛けるような野蛮さはないと思いますけれど、さてさて。

では今週のつぶやきをお送りいたします。

やはりFRBの判断ミスが問われるかも…

本日発表になった8月度のアメリカ雇用統計。インフレが収まりつつある中、アメリカ経済がソフトランディングできるかどうかを占う上で今回の雇用統計はいつも以上に注目され、数日前から投資家の手も止まり気味でした。ふたを開けてみれば市場の事前予想を下回る14.2万人増。6,7月分はそれぞれ11.8万人、8.9万人と大幅下方修正で雇用情勢は悪化気味になりました。この指標だけで経済着地がスムーズに行われるかは判断できませんが9月のFOMCでの利下げ幅が0.50%になる確率は高くなっています。

今週、カナダは3会合連続の利下げを発表し、経済の連関性が高いアメリカと歩調を合わせてきた中でその差が広がりすぎています。FRBが利下げに躊躇してきたのはパウエル議長のオウムのように繰り返す「様々な統計が1回だけではなくトレンドとして利下げと判断するに至っていない」としている点ですが、私から見れば時遅しだと何度も申し上げてきたとおりです。私ごときが統計の遅効性を主張するのもおかしな話ですが、数字Driven=数字しか信じない方々に経済のコンディションは体温計がすべてである、と言わんばかりで患者など見なくてもわかる、ということなのでしょうか?

もちろん、客観性は大事です。ではカナダはなぜ3会合も前からそれを判断できたかといえば以前にも申し上げたように適正な金利水準設定は温度調整のようなもので5%なのか3%なのか1%なのか最適なところを刻むための「神の手」のようなもの。ところがFRBは歴史的に見ても急激な利上げと利下げを繰り返しています。金利調整が緩やかにできないから民も企業も振り回されるのです。その点では頑固なパウエル氏は任期満了交代でよいと思います。

パウエルFRB議長

ここまでくると茶番か、自民総裁選

今週は茂木、林、小泉各氏が出馬表明しました。来週には高市さんが表明する予定です。残りの方々、上川、斎藤、野田、青山の各氏は厳しいでしょうか?いや仮に20名の推薦をとったとしてもその後が戦えるとは思えません。今回のように乱戦模様の時には出馬表明は早めの方がよいと思います。その点で一部の層から期待感が高い高市さんがここまで遅れているのは推薦人の取りまとめに時間を要した、つまり議員内にすそ野が広がっていないとみるべきでしょうか?(都知事選における小池さんのような戦略的ケースとは相違します。)立民の泉代表がようやく推薦人の目途をつけたのも議員の支持が集まっていなかったからでしょう。

早い者勝ちの観点からすれば下馬評が高い小泉さんも個人的には遅かったと思います。つまり議員支持の広がりがないかもしれません。小泉(父)は散々議員の不評を買ったので「リメンバーコイズミ」がないとは言えないでしょう。高市さんの票は小林さんに一部流れ、更に青山さんが遅まきながら参戦しようとしたことで余計面倒なことになったとみています。つまりカニバリゼーションです。ユーチューバーの皆さんは自分の推しの議員がいかにも有利で、芽があり、可能性が大で、決勝なら勝てる…と好き勝手放言し放題になっていますがかなり割り引いて聞いた方がいいでしょう。

ではお前は現時点でどう見ているのか、と聞かれればあくまでも個人の好き嫌いを排除した上で考えると石破氏が緒戦リード、その対抗馬が誰か、です。基本は菅、麻生両名の影響力を無視できないのです。麻生さん側から見ると河野さんが嫌いな人は多いのですが、バランス感覚は中国がらみ以外は悪くはないし、国民とのコミュニケーションも取れます。ただ河野さんと菅さんの関係はイマイチなので、麻生氏が推し、菅氏が妥協できるのが茂木氏とみます。不人気だけど賢いし、官僚や議員とのやり取りも幹事長経験でこなすでしょうし、経済政策に焦点を当てればこの人が一番無難かもしれないと思っています。小林氏は議員票をある程度とれるかもしれませんが、党員票が厳しいかもしれません。小泉さんはまだ軽すぎで勝手に想像している立憲、野田党首との論戦には勝てないでしょう。首相の器はまとめる力と経済が分かるかであり、外交ではありません。これが肝です。

ゼレンスキー氏は利用されているのか?

ゼレンスキー氏が西側諸国に必死に応援を求め、果敢にロシア内まで攻撃していますが、自国にはロシアが攻め入り、東部のみならず、キーウにもその攻めの手が入るなど混迷の度合いを深めています。ウクライナがロシア領に攻め入ったのは将来あるであろう終戦/停戦会議で有利な立場を築くため、ロシアがウクライナの領土を侵攻するなら自分たちはロシアに攻め入り、「領土相殺」の発想で取引条件を良化することとされています。

一方、国内統制は非常に悪いと言えます。3日には副首相以下5名の大臣が辞表を出し、4日にはクレバ外相も辞表を提出しました。ゼレンスキー氏は内閣改造と言っていますが、これだけの閣僚や要人が一斉に辞めるということは方針の不一致であり、ゼレンスキー氏の一人芝居がより強まる可能性が懸念されています。ではそのゼレンスキー氏は自身の意思で一歩も引かず、更に犠牲を伴いながらも戦況改善にまい進するのでしょうか?50カ国のウクライナ支援国による会議、ラムシュタイングループ会合が6日、開催され、欧米主要国は引き続きウクライナへの支援を約束しています。非常にうがった見方ですが欧米は武器刷新のためにウクライナを利用しているように見えます。

かつて「景気が悪くなれば戦争をする」と言われたことがあります。ウクライナが侵攻されてから2年半以上経ちます。欧米の景気が良くなったかと言えば株価はよく上がった、これは確かに言えますが、景気が良くなったとは感じられません。ただ、軍需産業が国家に利益をもたらすことは確かでこの戦いが止められない、止まらない既得権益になりつつあるようにも感じます。その点でゼレンスキー氏が大統領である限り欧米には都合がよい、というとんでもない私の偏見が絶対に間違っているとも言えない気がするのです。

後記
会社の同僚ではないですが、事業立ち上げ以降長年一緒に働いた「女帝」が数年前に退職後、クロアチアに帰国し「第三の人生」をエンジョイ中、交通事故で即死したとの報を受けました。私のカナダ32年間で数多くの人と関わった中で彼女の印象深さは横綱級でした。「I am a cobra. If you did a bad thing, I will bite you!」が口癖。正当な理論派ながらも強引に押し通すため、多くの人は彼女が大嫌いでいつも批判の渦潮がぐるぐる巻いていても決してくじけず、強かった点は見倣いました。私もコブラに何度もかみつかれそうになったけど、だみ声で「仲間にゃ噛まないよ」と優しさもあり、私は批判が多かった彼女の数少ないサポーターの一人でした。今ならコブラもコンプラに飲み込まれ、こんなユニークな方は雇われないのでしょう。ある意味、面白い時代がなくなったといえそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月7日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。