ミリンゴ大司教と聖職者の婚姻問題

当コラム欄の読者ならば、「悪魔の存在」、「悪魔祓い」(エクソシズム)の話をしたとしても笑われることはないだろう。今回はエクソシストとして世界的に有名なザンビア出身のエマニュエル・ミリンゴ大司教の歩みを少し振り返りたいのだ。

21世紀の聖職者の先駆者、ミリンゴ大司教
ドイツのカトリック通信=KNAから

ローマ・カトリック教会ではエクソシストといえば、ガブリエレ・アモルト神父、ヨハネ・パウロ2世、そしてミリンゴ大司教の名前が直ぐに浮かんでくる。ミリンゴ大司教は1930年生まれ。2021年8月に亡くなったという情報が流れたが、94歳の大司教は健在だ。ザンビア・オブザーバー紙によると、大司教は現在、韓国に戻っているという。

同大司教の名前がメディアで大きく報じられるきっかけとなったのは、同大司教が2001年、旧統一教会(現世界平和統一家庭連合)の創設者文鮮明師から祝福を受け、韓国人女性マリア・ソン女史と結婚したからだ。

ミリンゴ大司教は旧統一教会と接触前からカトリック教会内外でさまざまな物議を醸してきた聖職者だった。同大司教は、エクソシストとしても広く知られており、彼のエクソシズム(悪魔祓い)の活動は、カトリック教会内で大きな注目を集めてきた。

ミリンゴ大司教は、アフリカのザンビアにおいてエクソシズムを行っていた。彼は、アフリカの伝統的な霊的信仰や呪術に関する知識を持っており、それを西洋のカトリック教義に融合させる形でエクソシズムを実施していた。

1970年代から1980年代にかけて、ミリンゴ大司教はエクソシストとしての能力を発揮し、多くの病気や精神的な問題が悪霊によるものであると強調し、その祓いを行った。この活動により、彼の活動は地元の人々から大きな支持を得る一方、バチカンや一部の聖職者からは疑念を持たれた。なぜならば、彼のエクソシズムのやり方は、カトリック教会の公式な儀式とは異なる点があったからだ。

ミリンゴ大司教のエクソシズム活動は、アフリカ以外でも注目されるようになり、特に病気や精神的な問題に苦しむ多くの人々から依頼が殺到した。彼のエクソシストとしての能力を高く評価し、彼に治療や悪魔祓いを求める人々が後を絶たなかった。しかし、この活動はローマ教皇庁(バチカン)の関心を引き、カトリック教会内部で問題視され始めた。1983年には、彼のエクソシズムに関する活動が制限されるよう指示が出され、最終的にはローマ教皇庁に呼び戻された。

同大司教はそれ以降もエクソシズムの活動に強い関心を持ち続け、癒しと悪霊払いの活動を続けていた時、旧統一教会と接触し、故文鮮明師と会合し、その教えに強く感動する。そして先述したように、文鮮明師から祝福を受ける。その後も同大司教はエクソシズムの活動を継続する一方、「結婚した聖職者の権利」を強く支持し、カトリック教会内での聖職者の結婚制限を批判し、自らのグループを率いて、「結婚した聖職者を支援する運動」を展開している。

ミリンゴ大司教の統一教会との結びつきと結婚が公になった後、バチカンはミリンゴ大司教に対し、結婚を解消し、教会の教義に従うように命じ、一時的にミリンゴ大司教は統一教会から離れ、カトリック教会に戻る動きを見せたが、最終的には再び統一教会との結びつきを強めていった経緯がある。

2006年にはさらに物議を醸す行動をとり、教皇の許可を得ずに4人の司教を秘密裏に叙階した。これはカトリック教会の規律に対する重大な違反であり、これを受けてバチカンは大司教を破門した。破門は教会法上の最大の懲罰であり、ミリンゴ大司教はこれによってカトリック教会から正式に追放された。

ミリンゴ大司教は生涯、カトリック教会との対立、エクソシズムの実践、旧統一教会との関係などでメディアの注目を浴びてきたが、その業績に関する評価はもう少し時間がかかるだろう。特に、聖職者の結婚問題ではカトリック教会の再考を促し、「結婚前、私にとって神は男性的だったが、結婚後、神の女性的な要素を学んだ。自分は結婚を通じて神をより理解できるようになった」と語り、結婚をとりなした故文鮮明師に感謝している。ミリンゴ大司教は婚姻前、「私は、文師が私の経験したのと同様に、深遠な方法で霊界をご存じだということに気づきました」と証をしている。

一方、カトリック教会では聖職者の未成年者への性的虐待問題が契機となって、聖職者の婚姻問題が再び大きなテーマとなってきている。イタリアのメディアによると、ミリンゴ大司教は2015年2月、フランシスコ教皇宛てに手紙を送り、そこで聖職者に婚姻の道を与えるように強く要請している。

なお、新約聖書の預言書「ヨハネの黙示録」によれば、「終わりの日に、霊界の戸が開き、無数の霊人がこの地上界に降りてくる」という。終わりの日、封印されていた戸が開き、多くの悪魔が地上に降りてきて、世界はハルマゲドン状況になるというのだ。

新しいミレニアム(新千年紀)が到来して以来、実際、悪魔に憑かれた信者たちが増えてきている。悪魔の業を明確にする一方、婚姻を通じて二性性相の神を追認したミリンゴ大司教は21世紀の聖職者の先駆者の一人といえるかもしれない。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年9月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。