揺れる株式市場の行方:ハリス氏優勢と出たアメリカ経済との付き合い方

株式投資に於いて「9月には魔物がいる」という格言は今年はどうなるのでしょうか?本ブログでは何度かにわたり「秋の相場には気をつけよ」と申し上げました。9月に相場が急変しやすい理由の一つとして夏休みの7-8月の2か月の間に節目ができるから、と私は考えています。日本の方には実感がないかもしれませんが、欧米の7-8月は本当に腑抜けたような状態になります。仕事の話は二の次でどこに遊びに行くか、夏をどう過ごすかがメインテーマであり、9月第一週のレーバーホリディは日曜日6時半のサザエさんの拡大版のようなものです。「あぁ、明日から仕事モードだぁ」と。

ダウの10年分のチャートを眺めていてふと思うことがあるのです。2014年秋はまだダウが16000㌦台でした。今、40000㌦越えです。もっと広範囲の銘柄をカバーするS&P指数なら当時は2000ポイントでしたが今は5500以上まで上がっています。10年間の伸び率はそれぞれ2.5倍と2.7倍です。年間で見ると単純計算で十数%/年ずつ成長していることになります。

ではその間のGDPは、といえば各年ばらつきはありますが、おおむね年間2%台前半から半ばです。移民を受け入れているけれど成熟国なのでどちらかと言えば低位安定です。ではGDPと株式指標の差はどうやって説明するのでしょうか?

もちろんGDPが国内消費の指標であり、輸出や海外で稼いだ分は反映されていないことはわかっています。企業は海外進出を図ることで業績を伸ばしていることもわかっています。(但し、逆もしかりということは忘れてはなりません。アメリカには世界中の企業が入り込んでその消費の争奪戦を繰り広げているのです。)よってこの比較がApple to Appleではないことは承知ですが、それでもGDPと株価成長率が4倍から5倍もの差があることは感性的にみても説明しにくいのではないでしょうか?

ダウチャートをもう少し拡大してこの1年ぐらいの間の動きを見てみると今年の3月終わりぐらいから変調をきたしています。上がっては下げるというボラティリティが高い動きが頻繁に起きており、今回9月の変調で4度目になります。強気と弱気がぶつかり合う形で最終的には強気筋が勝ちあがる構図なのですが、乱高下の連続は大きな変調の予兆になりやすいことも事実です。

ではそのトリガーが何なのか、これが見えないのです。統計に出てくるような雇用とかインフレ率、経済成長率ではないように見えるのです。

相場を張っている人は好き勝手な理由をつけるのが得意とされます。いわゆる自己都合の論理とも言われるものです。ただ、基本的には大多数の方はロング(買い)から入りますので良い方向に向かうことを願っているはずです。

では株価が上伸する「良いこと」の前提である業績と新しい取り組みはどこにあるのでしょうか?AIとか宇宙かもしれませんが、それはごく一部の企業がほとんど利益を生み出さない形で先行投資として行っており、夢を買っているようなものです。アップルの新型iPhoneの価格を見たらわかるでしょう。AI機能を付けて価格は以前と据え置きです。つまりAI機能が価格としての付加価値を生み出していないのです。

現実社会を大雑把にとらえると個別企業ベースではヒット商品や流行のサービスが生まれていますが、国を持ち上げるほどのニューアイディアが生まれてこないとすれば株価の成長率とGDP成長率はもう少し寄ってきてもよい、つまり年間10%超から4-5%程度にまで寄ってくるのが妥当になる時が来るのだろうと思います。

私がトランプ氏とハリス氏の討論会前日に保有していたアメリカの株式の多く売却したのは討論の結果がなんとなく見えていたのです。優劣をつけたい人のイベントであり、概してハリス氏優勢と出たのです。中間層を厚くするハリス氏の政策だと経済の引っ張り役が出ません。アップルやグーグルは欧州で叩かれ、当局に多額の支払いをすると報じられています。AI事業がまだ金にならないこともわかっています。

カマラハリス氏インスタグラムより

だけど民主党はデカい会社を叩き、ハリス氏はもっと起業せよといいます。いまさらアメリカで起業を促す政策は正直、腑に落ちません。「アメリカ人よ、こじんまりまとまれ」と言っているのでしょうか?アメリカはもっとダイナミックな国でした。私からすれば「はぁ?」「あぁ」「あーあ」のつぶやきしか出ないのです。だから私はアメリカ株とは距離を置き、資金をカナダ株に一時的にシフトすべきと考えたのです。

9月はまだ半ばに差し掛かるところです。魔物は10月にも控えます。まだ心したほうがよいでしょう。

最後に日本株がなぜ冴えないのかについても一言だけ触れておきます。為替だけが理由とは思っていません。奥底に自民党総裁選と解散総選挙が視野に入ってきたからと考えています。これで海外から見て日本の政治の安定感がペンディングとなり、予想がつかなくなったのです。誰が首相になるかさっぱりわからないし、解散総選挙で自民党の基盤がどれぐらい崩れるのかもわからないのです。これは海外投資家からするとネガティブです。

そういう意味では今は現金保有か投資先の組み換えを進める方が有利だと考えています。投資のことは市場に聞け、です。また各自各様の読み方や投資スタイルがあるはずです。あくまでも私個人のスタンスだと思って読み流していただければ結構です。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月12日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。