社長はiPhoneとAndroidどちらがいい?

黒坂岳央です。

StatCounterによると、2024年3月時点で日本のiPhoneユーザーは約7割、Androidが約3割となっている。翻ってグローバル全体ではざっくりこの比率が逆になっており、実はAndroidユーザーが半数以上という状態だ。

会社経営者が持つべきスマホは、iPhoneとAndroidどちらがいいのか?という、本来答えなど出せないであろう疑問について考察した。結論から言えばiPhoneに軍配が上がると考える。その論拠を下記の通り展開する。

(注)本稿ではソフトウェアとハードウェアの比較が混在しており、iOSとiPhoneを使い分けると読者に混乱が生じるため、正しくはiOSと記述すべき点もiPhoneと表記している。

Vadym Plysiuk/iStock

コストと性能

まずはコストと性能面を考えたい。

よく誤解されることの一つに「iPhoneは性能が良く、Androidは性能が悪い」という考えがある。iPhoneはApple社が独占供給していて高性能、高価格帯でマーケティングをしているので、iPhoneSEという廉価版も存在するが基本的にハイスペックモデルである。

その一方でAndroidは多くのメーカーが端末を製造しており、ハイエンドモデルからローコストモデルまで非常にたくさんある。これはMacとWindowsの構図でも同様の共通点を持つ。そのため、Androidは事前に機種性能を調べて買う必要がある。「安いから買ってみたものの、カクカクして動作がもっさり」ということも十分ありえるのだ。

そしてコスト、これも性能で決まる。水平比較ができるようハイエンドモデル同士PIxel9とiPhone16の値段を比較する。数年前まではPixelが割安感があったのだが、容量やモデルの違いは多少あれど、今やほとんど変わらない価格となっている。

ここまでの情報を踏まえて考えるとiPhoneを選びたいところである。その理由を取り上げたい。まず、世の中の社長は「時間>お金」という価値観を持つのが一般的だ。Androidは探せばコスパの良い機種があるが、iPhoneは値が張るが確実に性能に問題は起きない。このような事情があるので、「時間をかけてコスパの良い機種を探し、iPhoneより性能比で割安なAndroidを探す」という割安を追求するために調査する時間を投資するという行為は経営者については当てはまらない。加えて社長がスマホを持つなら、会社経費にするだろうから、そもそも端末コストを細かく気にする経営者は少数派だろう。

以上の理由から経営者という立場の人が「仕事で使うスマホはどれがいいか?」と考えた場合に「とりあえず最新のiPhoneを買っておけばハズレはない」となる。自分は地元の年配経営者から「ITに疎いがスマホはどれを買えばいいか?」と購入相談を受けた時は、そのように答えている。

セキュリティ面

そして自分自身も意識しているのだが、大きな違いは両者のセキュリティである。

サイバーセキュリティ情報を取り扱うメディアCynbernewsの調査で次のような結果が示された。スマホが外部のサーバーへクエリ(問い合わせ)を送信先はiPhoneが60%をアップルに送ったのに対して、Androidは24%をグーグルに送信し、残りはサードパーティへ送られている。アプリや情報のアクセスについてもロシアや中国といった米国と非友好国へ問い合わせをした回数はiPhoneが少ない。

2024年7月、米商務省はロシアのウイルス対策ソフトのカスペルスキーに対して、国家安全保障の懸念を理由に取引禁止措置を講じたばかりだ。これは必ずしもセキュリティ面でAndroidが劣っているということではなくあくまで一つのデータに過ぎないが、セキュリティを考慮する上で知っておくべき事実ではないだろうか。

また、昨今ランサムウェアの被害報告が相次いで報告されているが、実はPCだけでなくスマホも対象になりえるという話もセキュリティソフト会社から報告されている。特にソーシャルハッキングを受けて、得体のしれないアプリをインストールしてしまい、促されるままに操作をしたことで資産を失うという問題も起きている。

その点でいえば、iPhoneは全般的にセキュリティリスクはAndroidより小さい。App Storeで公開されているアプリは、1つ1つがApple社によって検証プロセスを通過したものだけである。さらにiPhoneはすべてのサードパーティアプリはサンドボックスと呼ばれる隔離環境で動作する。このため、アプリ同士やシステムの重要な部分にアクセスすることが制限されている。これにより、セキュリティリスクが軽減され、悪意のあるアプリがデバイス全体に影響を与える可能性を防いでくれるのだ。一方でAndroidは拡張性や自由度は高いものの、あくまでセキュリティ面だけでいえばiPhoneだろう。

特に経営者は銀行や証券の他、会社の機密情報をスマホで取り扱う事が多いため、セキュリティレベルには注意を払う人も少なくない。自分も仕事で使用するiPhoneはセキュリティに非常に気をつけて使っている。iPhoneを使い、得体のしれないサイトを訪れない限り、そうそうセキュリティの問題は起きないだろう。

今回は社長はiPhoneを使うべきという結論を導き出したが、もちろんこれはあくまで一般論に過ぎない。社長と一口に言っても、IT知識は大きな差があり、たとえ疎い人でも厳密に調べなくても大問題が起きないだろうという前提での提案の一つに過ぎない。仮にコスト意識が高かったり、IT知識が豊富で自分にマッチした機種をしっかり見極めて使いこなせる人であるなら、Androidも問題はないだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。