私の近著『世界のニュースを日本人は何も知らない5』でも解説していますが、北米や欧州の実態を知らない日本人は外国の「先進国の人々というのは自分の意見をはっきりと主張する」と思い込んでいます。
外国かぶれをこじらした人の中には海外は日本よりも自由に意見が言えて非常に個人主義だということを頑なに信じている人たちがいます。
ところが海外で長く仕事をしているとこれは全く嘘であって、大きな落とし穴であることがよくわかります。
北米や欧州といっても広いので国によって差はあるのですが、日本と比較すると実は全体的に本音と建前の乖離が激しく、彼らは自分の意見をはっきりと言わないということが珍しくありません。
例えばアメリカの場合、一見非常に明るい人々でフレンドリーな感じですが、実は彼らは自分の意見や提案を主張するときはかなり遠回しに言っている場合があります。
例えば誰かの提案に反対する場合、
「わお、君アイディアはすごくオウサムだね!すごくユニークだし、君の経験やこれまでの学習がすごく生かされている。前の職場での例のトラブルも活かしててすごく勉強になるよ。もっと話を聞かせてくれると助かるな。ところでこの前市況のニュースを見たんだけどね。今の消費者の変化を考えると、もしかしたらこんな方法もあるかなって思ったんだよ。まあ僕の思いつきに過ぎないので、君の経験に裏打ちされたアイディアに比べたらどうかとは思うんだけども。どうかな?まずちょっと市況のデータを一緒に見てみないかい?結構興味深いんだよ。」
この思いっきり前向きで長々とした口上方から読み取らなければならないのは、
- お前の提案はクソ!
- 前の会社の経験は役に立たないんだよ。
- お前市況がガンガン変わってんのに気がついてないの?バカじゃね?
- お前さ、市況のデータ見てないだろ。俺に確認しろよ。おらよ、一緒に見てやるからよ。
- お前本当につかえねーな!!
という本音の部分です。
つまりこのような超アメリカ人的で前向きな言葉には裏の意味がたっぷりと含まれているのです。
ところが海外歴が浅く様々な人と付き合った経験がないとこの「裏の意味」を読み取ることができません。
言葉通りに受け取ってしまうので相手が想定する修正を行わなかったり、アクションを取らないのでこいつは本当にダメなやつと判断されて降格になったり、仕事から外されることが多いのです。
気がつかないのは当の日本人だけなのです。
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