心の距離感が決め手!?感情の変化と人間関係の悩み

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距離を置きたいママ友、好かれなくてもいいが、嫌われたくもない上司……人間関係は、「自分と相手との心の距離」によって取るべきコミュニケーション方法が変わる。

感情のメッセージに気づくと、人間関係はうまくいく」(神谷海帆 著)三笠書房

[本書の評価]★★★(75点)

【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★  「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★   「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★    「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満

ネガティブは問題の本質を教えてくれる

人間関係の悩みが解消されないのは、悩みを根本的に解決できていないからだと、神谷さんは言います。

「多くのケースで表面的な対処法に終始してしまう原因は、悩みのきっかけとなる出来事が起きた際に、『そのとき感じた感情』に基づいて対処してしまうからです。感情は変化していきます。例えば、恋愛をイメージしてみてください。付き合いはじめた当初、ふたりの間柄はラブラブで幸せな時間を過ごします」(神谷さん)

「そのうち、どちらかの仕事がいそがしくなったり、資格取得のための勉強時間を優先するようになったり、ふたりの共通ではない趣味の時間が増えたりして、ふたりきりで過ごす時間がどんどん減っていきます。最初は、会えなくて『寂しい』と感じるでしょう。寂しい気持ちを抱えながらも仕方がないと理解しようとします」(同)

それでも会えないと、寂しい気持ちは少しずつ「不安」へと変化していきます。「もしかしたら、会えない理由をもっともらしく作っているだけで、本当は気持ちが離れてしまったのでは?」「もしかしたら、ほかに好きな人ができたのでは?」といろいろなことを考えるようになって、不安がつのると神谷さんは言います。

「なんとかして相手の気持ちを元に戻そうと、『私は大丈夫』と自分に言い聞かせ理解ある人になろうとしたり、相手の喜ぶことを必死で考えて、プレゼントを贈ったり、料理を作ったり、あれこれと手を打ちます。がんばって行動したにもかかわらず、状況は変わりません。すると不安は『怒り』に変わるのです」(神谷さん)

感情とは一体何者か

あなたが、ある商談のプレゼンに向かうためタクシーに乗った。「よし、やるぞ」と気持ちを高め、気合を入れて会社を出た。しかし、運転手がネガティブだった。「景気はどう、よくないでしょう」から始まり、「友達もリストラされて大変」「ノルマは厳しい」。訪問先に着くころには、高揚していた気持ちはすっかり沈んでいた。

結果的に、その日のプレゼンは大失敗。感情のエネルギーをすっかり運転手さんに奪われてしまい、短時問では感情を調整し高めることができなかった。こういったタイプの人はどこにでもいるものだ。きっと一人や二人は思い当たる人がいるだろう。

一方、話すと気分がよくなり、元気を与えてくれる人もいる。会うとホッとし、話すほどに元気がわいてくる人だ。彼らはいったい何か違うのか。実は、一番の違いは使っている「言葉」にある。「明るい言葉」は自分の気持ちを明るくし、周囲を明るくすることができる。この機会に感情について考えたいものである。

尾藤 克之(コラムニスト・著述家)

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