年金20万円で生活することは可能だろうか?

月当たり20万円以上の年金を受け取っている人は、全体の約15%にすぎないというデータがある。つまり、年金受給者全体の約85%は、20万円以下の年金で暮らしていることになる。この現実を踏まえると、多くの人が比較的少ない年金額で生活しているということだ。

また、仮に年金受給者が68歳で、毎月20万円の年金を受け取っている場合、税金や社会保険料が控除された後の手取り金額はおよそ17万円になる 。では、この17万円で本当に生活できるのか、現実的なシミュレーションを行ってみた。

1. 住居費
まず、生活費の中で大きな割合を占めるのが住居費だ。地方であれば家賃が低めの物件も多く、約4万円の家賃で借りられる賃貸や団地もあるかもしれない。しかし、都市部ではこの金額では難しいだろう。また、家賃に加え、管理費や光熱費(電気、ガス、水道、インターネット、電話代)として約1万5千円を見積もると、住居関連費用は合計で5万5千円となる。

2. 食費
次に、食費だが、節約を心がければ約3万円で自炊中心の食生活を維持できるだろう。外食を控え、安い食材を使ってバランスの取れた食事を作ることで、食費を抑えることが可能だ。しかし、物価が上昇している現在、食材費が増加していることもあり、さらなる工夫が必要だろう。

3. 医療・保険
年齢を重ねると医療費がかかることも考慮しなければならない。保険適用範囲であれば月々の医療費は約5千円に抑えられるが、病気や怪我での出費が増えると、これを超える可能性がある。特に、高額な医療が必要になると家計に大きな負担をかけるため、健康維持の重要性はますます高まる。

4. 交通費
交通費に関しては、公共交通機関や自転車、徒歩での移動を中心にすれば、月々5千円程度に抑えることができる。自家用車を所有している場合はガソリン代や車の維持費がかさむため、できるだけ低コストの交通手段を選ぶことが節約に繋がる。

5. 日用品・雑費
日用品や雑費として約1万円を見積もっているが、これはトイレットペーパーや洗剤、その他の生活必需品の費用を含んでいる。日々の生活の中で使い捨てるものが増えると、費用が想定以上にかかることもあるため、無駄遣いを避ける意識が必要だ。

6. 交際費・娯楽費
老後も友人との交際や趣味を楽しみたいが、これらの費用は大幅に削減できる場合もある。交際費や娯楽費を月5千円程度に設定すれば、予算内で楽しむことが可能だが、外食や旅行などにお金をかけたい場合は、他の項目での節約が必要となる。

7. 貯蓄・予備費
緊急時の予備費として1万円程度を積み立てることも重要だが、万が一の出費に備えるため、さらに多くの貯蓄があると安心だ。

これらを合計すると、月の支出は約17万円になる。つまり、年金17万円で生活することは可能だが、非常に限られた予算の中で生活を送ることになる。特に住居費や医療費が大きな出費の要因となりやすく、予期しない医療費の増加や物価の上昇があれば、生活の質を大きく左右する。

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また、現実的な生活を送るためには、家賃をできるだけ抑えることが重要である。退職前に住宅ローンを完済しておくことや、場合によっては公営住宅に住むことも検討すべきだろう。マンションの場合でも、管理費や修繕費がかかるため、それらの費用も見込んでおく必要がある。

さらに、医療費や緊急時の予備費が大きく膨らむことも想定し、ある程度の貯蓄や準備を進めておくことが重要である。このように、老後の生活費として公的年金だけでは不十分と感じる人が多く、夫婦で老後を過ごすためには約2000万円の貯蓄が必要であるという「老後2000万円問題」も想起される。

一方で、老後の生活において重要なのは、無理なく働き続けることかもしれない。特に若い世代は、年金支給額が減少する可能性が高いため、健康を維持し、できる限り長く働ける環境を整えることが、老後の安心に繋がるといえるだろう。