真面目なのに薄っぺらい人の特徴

黒坂岳央です。

時折、「薄っぺらい仕事」にあたることがある。そうした仕事は薄っぺらい人によって作られている。

難しいのはそうした印象を与える人は往々にして「真面目な性格」ということである。つまり、本人は真面目にやっているつもりなのに相手にいい印象を与えない、これはもったいない。

治療法も含め、薄っぺらさを感じさせる理由を言語化したい。

francescoch/iStock

原因:自分の言葉じゃない

薄っぺらさを感じさせてしまう理由を一言でいうと、そうした人たちは例外なく自分の言葉で語っていない。いや正確に言うと人生経験がないので語る力がないのだ。

ニュース記事やSNS投稿、動画のインフルエンサーの受け売りばかりなので「それってあの人の発言をそのまま言っているだけじゃないか?」と感じさせる事が多く、本人ならではの意見や経験は一切乗っていない。その逆に思わず身を乗り出す面白い話や、記憶に残る話というのはその人ならではの視点や経験談が乗っており、その部分こそがその人から話を聞く付加価値になる。それがないとどうしても軽く、薄っぺらさを感じさせてしまうのだ。

思わず商品を買ってしまう営業マンは例外なく「自分の意見」を言ってくれる人だ。自分は先日、上質なペンを求めて買いに行った時に「◯◯さんは個人的にどっちが好きですか?」と販売員に尋ねたら「世間的にはこっちがよく売れてますけど、あくまで僕個人はこれが好きですねえ。完全の好みですけど。この握り心地と質感がすごくいい」と返ってきたので、確認してみると確かにそうだ。思わずおすすめを買ってしまった。

もちろん、その人がいいものは自分にもいいとは限らないが、正直なセールストークにグラッと来たのだ。実際に使ってみてすごく満足である。もちろん、最終判断は自分がしたものなので仮に自分には合わなくても全然気にしない。「自分の意見」が乗った営業は魅力があるのだ。

その逆も然り。先日、車を買いに行った時の話だ。営業マンは何を聞いても手元のカタログ表の記述を読み上げロボのようであり、「この機能の違いって、具体的に乗り心地にどう違いが生まれるものなのですか?」などデータにできない体感レベルの質問をすると「それは人それぞれですのでお答えできません」と返ってきて残念に感じた。まさにその人それぞれの部分を聞きたかったのに。

その場では車種を絞り込むに留めて、後日試乗に店長さんがついてくれてそこではたくさんの意見を聞くことができ、おかげで迷いなく購入に至った。店長さんは根っから車好きだったので非常に説得力があった。カタログスペックの話はネットで見ればいい。やはり、知りたい肝は「その人の意見」なのだと感じた。

情報より経験値を稼ぎなさい

薄っぺらくなる理由はシンプル、スマホで情報ばかり追いかけて頭でっかちになり、結果として経験値がないのだ。自分が経験していないことに自分の意見を乗せることは不可能である。一見、自分の意見を出しているように見えても、実際には感情的な反射に過ぎず、話に説得力がないのだ。

「東大を出ても平均年収の2倍も変わらない。だから頑張って勉強をしてもコスパが悪い。適当に会社に入って副業で稼ぐ方が効率がいい」たとえばこのような話である。誰がどう聞いても「いや、あなたはまず東大を出てから言いなさい」と感じるだろうし、副業でしっかり稼げる実績を持ってから言うべきだろう。

本人は経験するより検索した情報のおかげで非効率性を回避したように感じているかもしれない。だが、その実、本来色々駆け回って稼げていたであろう経験値を取り逃がし続け、結果薄っぺらい人格を形成しているだけなのである。

世の中に正解はない。ほぼすべての情報は白黒つけられないグレーのグラデーションでしかなく、自分に合うかどうかはやってみないと分からない。他の人も実体験、実績に基づく相手の話を聞きたがっている。だから手元のスマホで経験せず、答えばかり求めるほど薄っぺらい人に近づく。

ネットで見知った情報を知ってもその人が優秀になったわけではない。見方を変えればわかったつもりになって、本来得ていたはずの経験を逃すきっかけになり得る。発言に重み付けをするには経験や実績が必要だと理解し、検索より実経験を稼ぐべきだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。