逆に貧しくなる間違った節約術

黒坂岳央です。

先日、保護者会の集まりの際、「最近、とにかく物価高で家計がきつい!」という話題になった。物価高対策でそれぞれやっている節約術を話しだしたので興味があって耳を傾けてみたが、正直どれもずれた努力になっておりやはり金融教育は大事だと痛感した。

3つほど各々から出たアイデアは、どれもまったく抜本的対策になっておらず逆に貧しくなる。持論を述べたい。

koumaru/iStock

対策1. タイミーでWワーク

最近、タイミーでサクッと仕事をするという新たな働き方が注目を集めている。従来は週末にバイトをしたり、派遣で日雇いの仕事をする人も多く、筆者の会社でも夏と冬の繁忙期は毎日派遣の人に来てもらっている。だが、これには派遣会社や採用元への面接が必要になる。突発的に空いた時間に働くということができない。

一方でタイミーなら、面接なしでパッと来てパッと働くことができてしまう。話を聞いてみると皿洗い、配送、清掃といったハイスキルを求められない業務が中心のようである。自分はタイミーで苦しい家計を支える「苦肉の策」をバカにするつもりなどない。目先の支払いで働かざるを得ない人がいる事実は理解している。

だが「物価高への対策」としては、必ずしも有効性は高いとは言えないだろう。なぜなら働ける時間は限界があり、タイミーで働くことで持ち時間は確実に減ってしまうからだ。保護者たちは自分を除いて全員30代とまだ若く、今すぐやるべきは本業の収入を増やすスキルアップと転職だろう。時間単価をアップさせれば、時間を失わず総所得を増やすことができる。

対策2. 宝くじを買う

家計が苦しい中、捻出した1万円を使って宝くじを買っているという人がいた。だが、これは本人が考えるような効果は期待できない。宝くじの控除率はおおよそ50%で負ける確率が非常に高いギャンブルである。いや、他のギャンブルよりさらに悪い。しかも外れた場合は1円も返ってこない。やればやるほど、統計的に負けに収束するゲームだ。だから資産を増やすために買うことは論理的に間違っていると断言できる。

宝くじを買うなら、まっとうな資産運用をするべきだ。長期のインデックス投資をしたり、株25%・ゴールド25%・債券50%といった固いポートフォリオを手堅く運用することで物価高のインフレヘッジになる。

ただこれには勉強が必要になる。記事や動画で見て真似をして始めても、資産の増減というリスクにメンタルが耐えられないので、高値で買って底値で売るという行動になる可能性は高い。だから集中的な勉強と経験を積む必要があるだろう。

対策3. セール日にまとめ買い

最後は安売りセールの日にまとめ買いをしてストックをするという戦略である。一見、どこの家庭でもやっていそうな話ではあるが、これはおすすめできない。

まずものをまとめ買いをすると、自宅のスペースを侵食する。賃貸の場合は空間に対して月額使用料を払っているので、今すぐ必要でないものを買うとその占有スペースはデッドスペースとなる。ホコリがたまれば掃除の手間も発生するし、下手をすると収納棚を買ったり、収納スペースを借りるという出費で本末転倒になりかねない。

最も理想なのは必要なものは必要な時だけ買い、余剰資金はスキルを付ける自己投資か資産運用に回すことだ。筆者は収納棚は買っていない。収納棚を置くスペースが使えなくなる上に、結局これに頼る前提の生活はすでにムダに物を持ちすぎている証拠だからだ。

物価高という新たな局面で場当たり的な思いつきで対応すると、かえってその対策で貧しくなってしまう。節約術は合理的に処理する必要があるので、包括的に勉強をして取り組むことをおすすめしたい。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。