ゲル長官からゲル総裁、そしてゲル首相へ:石破茂が描く曖昧な未来図

自民党HPより

ゲル首相の誕生

石破が最初に入閣、防衛庁長官に任じられたとき、ゲル長官という渾名がついた。2002年小泉内閣の時のことである。

「いしばしげる」をワープロソフトで変換したら〝石橋ゲル〟と変換されたからだといわれている。まださして石破が世の中に知れ渡っていない頃の出来事だった・・・今は石橋ゲルは真っ先に〝石破茂〟に化ける。

このゲル長官が自民党総裁に選ばれ、10月1日に晴れて日本国の長である首相になる。これをしてゲル首相の誕生である。

ゲル長官の成れの果て、魔人ブウ
出典:日テレNEWS

言い得て妙:ゲルとは一体なにか

ゲルとはもの(物質)のとある状態をいう。物質は液体ー個体ー気体という3つの状態に分けられるが、このゲルというのは液体でも個体でもない、その中間に位置するきわめて曖昧な物質だと言われている。

言い得て妙——石破のこれまでの言動を見るに、保守右派なのか中道なのか曖昧模糊としてさっぱりよくわからない。保守の革をかむった左派でないかと思える側面さえある。

国防に関しては、憲法改正ー自衛隊の位置付け明確化、日米地位協定改定、はてはアジア版NATO創設と極めて右寄りのスタンスを撮り続けている。

エネルギー問題、とりわけ原発に関しては、表面上は消極的原発容認のふりをしているが、心の芯は相当強固な反原発である。

小石河連合のその後:変節漢の脱原発空想
バラバラになった小石河連合 ちょうど3年前の2021年9月、自民党総裁選の際に、このアゴラに「小泉進次郎氏への公開質問状:小石河連合から四人組へ」という論を起こした。 当時、小泉進次郎氏、石破茂氏、河野太郎氏は信条と気脈...

再エネで全てまかなえると思っているのである。この点はもう立憲民主と同じ立ち位置である。

拉致問題に関する位置どりもよくわからない。平壌と東京に連絡事務所を置く、というようなことを言ってるが、今更連絡でもあるまい。日本のスタンス、北朝鮮のスタンスは相交わらずエッジが立ったままである。小泉訪朝時に閣内に居たのだから、その後の経緯も含めてよくご理解なさっているはずなのではないか。

そもそも氏は北朝鮮に関しては、1992年の金丸訪朝団の一員として参加したときの彼の地での「出来事」がもし今後メディア上で再燃したら、どうするつもりなのだろう。私の周辺にいる右派の口さがない連中はすでに連絡事務所?——ハニとら事務所の間違いぢゃねーのかと言い始めている。

読書家の墓穴

石破は大変な読書家であるらしい。

私の先達や知人にも大層な読書家が何人もいる。彼らは概ね書物の世界に生きている、埋もれている、そしてそのセンスで世の中をみようとしている。

私は研究と教育に長年携わってきたが、教科書は言うにしれず専門書というものに説かれている諸行も事実の一側面を捉える程度に止まっていることが多々ある。いわんや一般書をや、である。

言いたいことは、本をいくら沢山精読してもそこから得られるのは現実の一部でしかない・・・読書に埋没するとかえって見るべき現実が見えなくなってしまうことがある。墓穴を掘ってしまうのである。

石破の言動はいつも注意深く見ている。これまでは石破は批判的傍観者でよかった。これからは、先にあげた公約(のようなもの)を含めて、全てに責任を持って取り組み目鼻をつけて、解決への〝処方箋〟をしっかり提示して、薬をうって病を直していかなければならない。読書家の空論は通用しない。

座右の銘は、〝至誠の人、真の勇者〟。自分のことを言っているのであろうか。少なくともそうありたいということなのか。

いずれにしたところで、これまで述べてきたようにとてもそんな風には見えない。まず、至誠の人については???だ——そして真の勇者かどうかは数多連ねた公約のような甘言がどこまで処方箋をもって実行され成果つまり寛解に結びつくかで、存外すぐに白黒つくのではないか。いつまでも曖昧なゲルではいられまい。

第7次エネルギー基本計画

第7次エネルギー基本計画の策定がその真っ最中である。石破政権がこの問題にどう出るかが、ひとつの分かりやすい試金石だと私は思っている。岸田政権は原発の最大活用に舵を切って閣議決定までした。その時代はもう終わるのか?

ここでのポイントは、総裁選の決選投票にある。1回目の投票では〝サナエあれば憂えなし〟の高市早苗氏がトップで石破は2番目だった。決選投票で両者以外に投じられた国会議員票がどのように誰に漂着するかが焦点だった——報道等の分析によれば〝岸田派〟の票の大多数が石破に寄り付いたようである。

それが真ならば、ゲル政権のエネルギー基本計画での原発の扱いはいかが相成るのか? 心根が真っ黒反原発で、表面上曖昧ゲル原発消極派の石破が、岸田が閣議決定までした「原発最大限活用」から「原発最小限活用」に舵がきれるのか・・・。あるいは已む無く岸田路線を踏襲するのか。

岸田政権で原発活用に舵を切った原動力は、経産省から政権に主席首相秘書官として入った嶋田隆にあった。

ゲル内閣の組閣に応じて、この辺りの人事がいかが相成るかで第7次エネルギー基本計画の先行きもほぼ見えてくるのではないだろうか。

ゲル石破が馬脚を現すのは存外早いかもしれない、と私は思っている。