「お金持ちの子供は人生イージー」という誤解

黒坂岳央です。

「お金持ちの子供は楽をして育つからずるい」
「お金持ちの子供は頭の悪さを親の資金力でカバーする」
「お金持ちの子供はワガママで性格が悪い」

このような意見をよく見る。人並み以上にお金がない家庭で育った自分自身がそう思っていた。しかし、今はまったく異なる考えを持っている。子供の教育に非常に興味関心があり、資産が何十億もある社長など、様々な家庭の子供に触れてきて、このようなよくある話はほとんどの場合は誤解だと思っている。

今回、統計データなどを出せる内容ではないため、独断と偏見による個人の意見だが思うところを取り上げたい。

※本稿はすべての事象を一般化した話ではなく、例外の存在は当然あるものとして認識した上で「あくまでそのような傾向がある」という前提で執筆している。

kohei_hara/iStock

しつけが厳しい

「お金持ちの家庭ほど甘やかされてわがままに育つ」という意見をよく見るが、自分が知る限りこれはまるっきり逆が正しい。

地方へ行くと兄弟が4人以上いる家庭はまったくめずらしくないが、そのような家庭は両親ともに忙しく働いていて「どちらかといえば放置気味」になっていると感じることがかなり多い。実際、保護者会などで聞いてきた話では、「朝は毎日チョコレートと菓子パン」「学校から帰ると寝るまでスマホで動画」みたいに親が子供の栄養管理や過ごし方についてあまり手を出す余裕がないようである。

翻って裕福な家庭の子供は放置どころか、大変厳しくしつけられている。魚のきれいな食べ方や、食べる順番から始まり、甘いお菓子もめったにもらえない。また、スマホに子守をさせずに親自身が相手をする。言葉遣いもその場で都度細かく注意を受ける。

また、極めつけは勉強だ。平均以上にたくさん勉強をするような環境を作っており、親同士がLineで有効な学習環境構築の情報共有をするほどの熱心さである。筆者も過去に、「我々の教育論に課題があるかあなたの意見がほしい」と言われたことがあって、集合知の力で子供を教育しようとする真剣な姿勢に驚かされたことがある。

スイミングや英語など習い事は当たり前にいくつもこなし、インターナショナル幼稚園で英語漬けだったりととにかくすさまじい教育熱である。自分もそうした家庭の親と会話することがあるのだが、こうした親との話題の9割は「子供の教育」である。子供の将来のためとはいえ、本人は大変だろう。

努力家

「お金持ちの子供は甘やかされて育つので根性がない」というイメージがあったが、これは誤りだと思っている。実際は真逆で平均以上に努力家が多い。

まず、お金持ちの家庭は親が例外なく努力家で向上心が非常に高い。筆者自身、仕事や勉強を通じた自己鍛錬に強い関心があり、子供にも毎日自分が努力する姿を見せている。「人生は自己育成ゲーム、毎日少しずつレベルアップを楽しもう」と啓蒙して毎日、同じ机で自分は仕事、子供は勉強という日々を送っている。

子供も頭を抑えつけられていやいやするのではなく、親である自分から影響を受けて「いろんなことがたくさんできるようになりたい」と前向きな思考に変わってきた。他の家庭でも似たような感じで、親が努力する姿を子供に見せることで、「一緒に頑張ろう」という話を聞く。自分が知っている話では母親が子供の勉強に付き合う中で高い英語力を身に着け、中学生になった子と一緒に海外旅行を英語で楽しむ夢を叶えたというものだ。人は他者からの影響、とりわけ親からの影響を強く受けるので家庭内で一緒に学ぶというのはとてもいい環境作りになるだろう。

そして努力の基準値も高い。自分は子供が勉強をやり始めた頃は「これ苦手。全然分からない。できない」と泣き言を言い出したので、「練習は1回や2回では足りないよ。パパは20回は繰り返してやっとできるようになったのだから。考えすぎずに、まず20回は練習しよう。大丈夫、きっとできるようになる」と反復は数十回こなすのが基本と教え続けた。それにより、今では息を吸うように反復練習をこなすようになり、成長を実感して自己肯定感を作っている。

お金持ちほど長期でビジネス、投資で結果を出しているのでそのプロセスで努力の基準値が非常に高いという特徴がある。それが子供にも引き継がれているのだ。

恵まれた環境ではあるが、楽とは言えない。いい学校へいけば優秀な他の子と厳しい競争、厳しい受験、そして会社では出世競争。お金持ちの子供は人生イージー、は逆が正しいと思っている。むしろ大量の努力をして育つのでかなり大変だ。

性格がいい

「お金持ちの子供はワガママに育てられ、他者を見下して性格が悪い」という意見があるが、これは傾向として誤りである可能性が高いと考えている。

学校へいくと、どのクラスでも問題行動を起こす子供は必ずといっていいほどいる。そしてそうした子供は例外なく家庭環境に問題を抱えている。本人に確認したわけではないが、親が子供に厳しくあたったり兄弟から自己否定につながる接し方をされていたりするようである。そしてその原因はさらに親の職場の上司や、兄弟のクラスメイトなどにあるようだ。

その点、まずいい家庭の子供は親が子供に当たり散らすようなメンタリティにない事が多いだろう。ストレスや悩みがない人などこの世にいないが、それを表に出さず、上手に処理して他者に好ましい接し方ができる胆力のある人間が上へいけるものなのである。子供も自己否定になるような対応を受けていない。

加えて、そうした家庭ほど世の中は人間関係で成り立っており、いかにその中で好ましいふるまいができるか?という不文律を教えていると思うのだ。優秀な家庭の子と遊ばせると、優しい気遣いを感じられ気持ちに余裕が感じられることも多かった。

筆者自身も子供に人間関係を上手に接するよう、きっちりしつけている。学校で友達とトラブルがあった時は話を聞き、「その子はこう感じたんじゃないかな?」「どうしたら仲良くできると思う?」「人間関係は技術で突破できる課題だよ」とその体験から学ばせて上手に付き合える処世術を学習させるようにしている。

わがままな子に育つのは、パワーバランスの差を利用して相手を服従させる時に起こる。おそらく「わがまま、性格が悪い」など言われることがないと思っている。

「お金持ちの子供はずるい」といった意見を見るが、その実、大変なことも少なくない。しつけは厳し目でしっかり教育もされるので、子供ながらに忙しく過ごす。うちの子供も「休みの日はゆっくり過ごしたい」とサラリーマンのようなセリフを言うときもある。筆者はその反対に自由奔放にあまり厳しいしつけを受けずに育ったので、大変なのは間違いなくあれこれしつけられている家庭だと思うのだ。

 

■最新刊絶賛発売中!

■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

YouTube動画で英語学習ノウハウを配信中!

ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。