「本当のことを言えば国民は喜ぶ、しかし党からはたたかれる」
石破が首班指名され、晴れてゲル首相になったのちに野党の各党首を表敬訪問した。
このふと漏らしたひとことは、前原誠司氏を訪れたときに口をついて出た。撮り鉄・乗り鉄仲間で、いつか一緒に政権をつくりたいという。そういうトモダチの前でつい本音が漏れたのであろう。
しかしまあ、〝本当のことを言えば国民は喜ぶ〟とはいかにも上から目線で、国民を愚弄馬鹿にしている。
こんな国民を馬鹿にした男に日本が守れるのであろうか。
日米地位協定
石破の総裁選での約束言のひとつに〝日米地位協定の見直し〟があった。数日前までは、米国内に自衛隊の訓練基地をつくるなどと絵空事を吐いていた。
しかし、本日(10月4日)の所信表明演説では石破のライフワークの重要な柱であるはずの〝日米地位協定見直し〟はまったくもって触れられることがなかった。
石破の『本当のこと』は一体どこに行ってしまったのだろうか。
無責任、嘘つき、詐欺師の誹りを免れない。
日米地位協定は、1960年に日米間で締結された。その源流は1951年に両国間で署名された日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約(旧安保条約)である。
とりわけ重要なのは、協定の第二条が、『日米合同委員会を通じて締結される協定によって、在日米軍の基地が決定される』と定めていることである。
要すれば、米国側が望めばいつ何時好きな時に好きな日本国内の場所に米軍基地が作られることを拒否できない、ということになる。
普天間基地問題も少女暴行事件も、日本国民として不可解。不愉快極まりないこれらの事態はこの地位協定の不平等性にあるといえる。
また、プーチンが安倍政権時代の北方領土交渉において、日本は主権国家でないと断じたのは、北方領土を返還してそこに米軍が基地を置きたいと言ったらお前らは拒否できないだろうということにある。
日米地位協定の改定は、石破がいう〝激変する安全保障環境から日本を守り抜く〟ためにまず取り組むべき中核的課題だったのではないのか。
日米合同委員会——そのいびつな構成
日米合同委員会は日米地位協定の25条に従い、両国間の正式な協議機関として設立されている。政治家は参加せず日本の官僚のトップと在日米軍のトップがカウンターパートナーとして月2回、協議を実施することになっている。過去60年あまり、1600回以上の会合があったという。
官僚のトップは外務省の北米局長であり、かたや在日米軍のトップは在日米軍司令部服司令官である。いずれも外務省のトップでも在日米軍のトップでもないものが合同委員会の〝トップ〟なのである。奇妙というほかない。
奇妙なことはまだある、日本側は職業軍人ではない文民だが、米国側はバリバリの職業軍人である。非対称というかいびつ極まりない。
また、政治家でもないものども、つまり国民の選挙によって選ばれていないものどもが、このような国家の主権に深く関わる事項の決定権を握っているというのは、さらに歪であり、摩訶不思議という他ない。
ゲル首相のオトシマエ
日米地位協定、日本国民の約8割がその改定を望んでいるという調査結果もある。しかし石破にとっては、国民を喜ばす甘言の一つにすぎなかったのか。
所信表明演説では、故渡辺美智雄元副総理の言葉「政治家の仕事は勇気と真心を持って、真実を語ることだ」を引用した。自民党が派閥裏金事件などで失った国民の信頼回復を目指すと訴えたかったのであろう。議場のヤジはこの時最高潮、石破が何を言っているのか聞き取れない。
官邸という城にいて、周りを重鎮・同士・SPに囲まれているうちはいいが、兜を脱いだ時このオトコはどのツラ下げて国民と相対峙し落とし前をつけるつもりなのか。