アクティブ運用はビジネスとして成り立つのか?

アクティブファンドを運用・販売するビジネスは果たしてビジネスモデルとして成り立つのか?ずっとこれまであれこれ考えてきましたが、考えれば考えるほど懐疑的に感じてしまいます。

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アクティブファンドとは、ファンドマネージャが銘柄を選んで投資してインデックスを上回る投資成果を目指す投資信託のことです。

そもそもアクティブファンドがインデックスに勝てる可能性は50%以下。確率的に分の悪い投資手法です。

そして運用会社にはファンドマネージャーだけではなく、アナリストや管理部門のスタッフも必要です。アクティブ運用を主体とするブティック型の運用会社では、最低でも20人程度の人員が必要です。

控え目に見積もって1人500万円の年収としても、年間1億円の人件費がかかります。さらにオフィスを借りたり様々な運営費用もあります。

一方で、運用会社の収益はファンドにかかる信託報酬からの手数料収入です。

独立系投信と呼ばれる販売会社を通さず直販型でアクティブファンドを運用する会社の場合、年間に受け取る信託報酬は1%程度です。

仮に会社の運営コストが年間2億円として、信託報酬1%なら200億円の残高が損益分岐点になります。

これよりも残高を増やさないと収益化しない反面、アクティブファンドはサイズが大きくなってくると運用パフォーマンスが下がる傾向があります。

これはインデックスを上回る収益機会が限られており、金額が大きくなると規模に見合ったチャンスが見つけられなくなることが理由と思われます。

また、サイズが大きくなると機動的な売買がやりにくくなります。流動性の問題も考える必要が出てきますから、時価総額の小さい銘柄は組み入れにくくなります。

明確な金額は分かりませんが、日本株であれば500億円を超えると規模によるマイナスの影響が出ると聞いたことがあります。

それ以上になると、インデックス化が進みアクティブ運用としての存在価値が無くなっていきます

少ないファンドを少数のファンドマネージャーで運用するブティック型の運用会社では、スケールメリットを追求することができず、ビジネスとして成り立たないのではないかという疑問が生まれます。

大手の運用会社のように多数のファンドをそれぞれのファンドマネージャーが担当して、数兆円レベルの残高にあれば別ですが、そこまでの規模に到達するのは極めて困難です。

アクティブファンドのこのような規模の制約は、規模が大きくなればなるほどコストを削減でき、トラッキングエラーが減らせるインデックスファンドとは対照的です。

アクティブ運用はビジネスとして成り立つのか?私のこの根源的な疑問に関して、資産運用業界の専門家の方々のご意見もぜひ聞きたいと思っています。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年10月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。