選挙の大局観:現政権を揺るがす国民へのインフレの厳しい仕打ち

選挙戦に入りましたので、多くの国民は選挙の行方に一定の関心を示すことでしょう。アメリカも大統領選挙、カナダでは私の住むブリティッシュコロンビア州が選挙戦に入っています。またカナダの連邦議会も解散総選挙が近いとされていますが、たぶん、ブリティッシュ コロンビア州の状況を見て判断すると思います。

どの選挙を見ても大局観としては現与党は厳しく、政権交代ないし、与党惨敗が起こりうる点です。日本では裏金事件が与党窮地の主たる理由になっていますが、2024年選挙イヤーにおいて既に終了した他国の選挙を含め、与党が安泰だったのはロシアのような権威主義の国家を別とすれば少ない状況です。

なぜ、国民は政権交代を探るのでしょうか?与党政策とは別の理由があるような気がします。

私が可能性として挙げたいのがポスト コロナであります。ほぼすべての国で時の政権はコロナの時に国民に一定のコントロールを強いてきました。政策としてはそうせざるを得ず、正しかったと思いますが、国民の思いとしては不満だったわけです。このストレスの行き場はコロナからの解放時に飲食や旅行などを通じて発散された方も多かったと思います。

ところが同時にやって来たインフレは厳しい仕打ちだったと思います。なぜあれほどのインフレが生じたのかについては議論があるところですが、個人的には需給の歪みだったと考えています。コロナの時に国際輸送費が暴騰したのですが、あれなどもオンラインショッピングが唯一の選択肢という制約の中で消費者が想定以上の購入をしたことと荷物を捌く人が十分にいなかったのが主因であります。事実、コロナが収まり、国際貨物の費用は大幅に下がりました。

インフレは幸いにして収まり始めました。その代わり政策金利を大幅に引き上げたのです。日本は例外的に低いですが、北米などではそのとばっちりが住宅ローンを持っている方に衝撃的な影響を与えました。以前お伝えしたと思いますが、3食食べられない、だけど家だけは持ち続けるのでローンは払い続けるという報道がカナダで紹介されたとき、社会に大きな波紋を投じました。

日本の場合は確かにインフレ率は他国に比べマイルドですが、可処分所得が低い方にとっては値上げ率ではなく、値上げ幅が重要なポイントであり、%でみるのと絶対額は印象が全く変わってくると考えています。年収300-400万円層では値上げに対する耐性がなく、生活に全く余力がない事態が生じたとみています。

コロナ明けで皆が旅行だ、飲食だ、とはしゃいでいる半面、取り残された感が鮮明に出るわけです。

これが現政権に対する不満となり、2024年の選挙イヤーにおいて多くの国で国民が「NO!」を突き付けたのではないかと考えるのです。言い換えれば現政権を揺るがしているのは所得的に比較的ぎりぎりの層の大反乱ではないかと推測しています。

石破首相 首相官邸HPより

事実、富裕層とまではいかなくてもある程度の預貯金がある方は昨今の株高でメリットを得ている人は多いでしょう。これは言うまでもなく日本も所得による明白な分断が生じてきているといえます。

では日本の場合、どうなるのか、あまり無責任な予想を公言するのは憚れますが、このシナリオからすると自民党の裏金問題は理由付けであり、本質的な部分は所得が十分ではない層の生活困窮から現与党に対する不満であり、その場合は立憲に分がでてきます。自民党が総裁選で石破氏という中道からやや左寄りの方を選んだのは単に社会がそういう方向にあることを示しているのではないでしょうか?

もちろん、保守の方の声が届かないわけじゃないのです。今はオセロゲームであり今を否定し、新しいものに期待する流れがより強いのだということです。私がずいぶん前に自民と立憲が連立を組む可能性が絶対ないとは言えないかも、とつぶやいた時、こいつはアホウか無知かと思われたでしょう。2-3週間前に自公で過半数割れもありうるとつぶやいた時、評論家も専門家もそんなことはまだ一言も述べていなかったはずです。今、それが当たり前のように囁かれているのです。

私には水晶玉があって見えるのだ、と冗談をいってかわすのですが、実際のところ、外から冷静に見るとき、世の中の大局は何か、と考える癖をつけています。皆様の中には裏情報に精通した方々も多いと思いますが、裏情報は使い方があり、これだけ大衆のパワーが声を上げるときは判断材料としてはあてにならないのです。どちらかというとパブリックに出ている情報の隅々にあるヒントを丹念に拾っていくとある解に帰着する、そんなものではないでしょうか?

これから1か月程度で世の中の色はどのように変わるのでしょうか?サプライズがあるのかもしれませんね。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年10月14日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。