S&P 500はVIX高止まり下で最高値更新

Shen

S&P 500は一度押し目を提供してから上値を伸ばした。月曜は雇用統計で金利が上昇した余韻で一度調整したものの、前回の記事でサポートとして挙げていた5670を前に反発し、週足は二本目の下ヒゲ陽線となった。

「レジスタンスとしては5750はまだ健在と言えなくもないが、調整は水準としてのレジスタンスよりも地政学リスクなどのヘッドラインに誘発されやすいだろう。それが起こらずじり高が更に続くようなら過剰ヘッジの炙り出しが見られるだろう」としていた通りである。

米国CPIは予想より高かったが、弱い新規失業保険にかき消されたのか材料視されなかった

前の週に続いて再びVIXは高止まりしており、S&P 500高値更新とVIX高止まりの組合せはいよいよ目立ってきた。VIXの高止まりはMOVEと原油発と思われ、それに大統領選を前にした売り手不在が背景と思われる。

そういう意味でVIXは大統領選のシーズナリティ通りでもある。MOVEはもちろん金利低下の根拠であった原油が跳ねた上に、指標もよいのでFedの金融政策が再び不確実性を帯びてきたためである。

しかしインパクトが伝播したのはMOVEからVIXへのルートだけであり、金利上昇そのものはS&P 500のアンチゴルディロックスを誘発しなかった。これは本ブログがかつて取り上げた「Fedのデュアルマンデート復帰に伴う債券と株式の逆相関の復活」の通りである。

VIXとS&P 500の10日リアライズドVolの格差はいよいよ14ポイントまで拡大した。これは素直に見るとプライシングされすぎたVIXの剥落を通して中期的にポジティブである先週の記事はこのロジックで先週の高値追いを正しく当てられたが、裏はないのか。

VIX高止まりの背景として挙げられるのは個人投資家によるVIX関連ETFへの投資である。8月のクラッシュでプット買いが利益を挙げられたことも影響しているようだ。

9月の記事では9月上旬もクラッシュしたため1ヶ月リアライズドVolの高止まりが続いてしまうとの感想を抱いたのだが、何となく1ヶ月リアライズドVolを脳死で眺めている機械勢だけでなく、クラッシュは人間の脳にも跡を引いたわけである。

これらの経緯からいわゆる「コール買いが主導するVIXとS&P 500のダブル高」という崩れやすいパターンとはまた一線を画す。VIX高止まりから考えられるのはVIXショートカバーによる自己実現的なVIX高騰の可能性、Volコントロール型の買い出動の抑制と、0DTEの活動低下である。

現に個別株のオプション取引は盛り上がっていない。今からの決算期もマグ7等の個別銘柄のコールが盛った状態では迎えなさそうということか。

DBの統合ポジショニングは8月に落としたところから少しずつ復元している。

NAAIMもじわりと楽観に近付いているが、値動きと比較して依然慎重である。GSセンチメント・インジケーターは再び引っ込んでしまった。すぐに挙げられるリスクはあまりにも多いのか。

決算期はJPMの好決算から始まった。今週はまだGAFAM決算が本格化しない。自社株買いは完全にブラックアウト入りしており、抜けるのはシーズナリティも改善する10月末となる。経済指標は小売売上高が控えており、このあたりでいよいよ良かったら金利上昇、悪かったらリスクオフとオッズがやや悪化しそうである。

9月末以降の中国の一連の経済対策は間違いなく(中国自身はともかく)米国の景気後退リスクを低減させたが、今度は中国株の大きな値動きに引きずられないかにも要注意となる。

テクニカル。週足は二本目の下ヒゲ陽線となり5687が新たにサポートとなる。とはいえ遠いと言えば遠いので、レバレッジを積み増して上値を追いかけるほどではない。

レジスタンスは依然ない。テクニカルというよりはVIX周りの挙動を観察しながら随時判断する局面になりそうである。指数急騰と共にVIXも一段と上昇するような分かりやすい雑なコール買いケースがあれば売りとなるが恐らく期待薄であり、指数が動かなくても例えば欧州時間からVIXのブローアップが止まらないケースを次にチェックすることになるか。

ただそれらが実際に起きるまでモメンタムは上向きになっており、5687より上の範囲内の調整は引続き押し目と判断されるだろう。

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編集部より:この記事は、個人投資家Shen氏のブログ「炭鉱のカナリア、炭鉱の龍」2024年10月14日の記事を転載させていただきました。