皇位継承:国民の分断を回避するために投票すべき党は?

「将来の天皇は悠仁さまか愛子さまか」といった現実とかけ離れた議論をSNSや週刊誌があおり立て、互いに罵り合うというまことに困った状況が生じている。

現実には、次期天皇はどちらでもなく秋篠宮皇嗣殿下であることは、皇室典範を改正しない限り愛子さまのあと陛下に新しく男子が生まれる可能性が少ない以上既定路線だった。

ただ、皇室典範が今上陛下の子でなく弟が皇嗣である場合の細かい既定を欠いていたので、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」を2017年に立法化したときにわざわざ皇嗣殿下と呼び皇嗣職を置き、立皇嗣礼を行うと決めて、その既定がすべて実現して、『壺切御剣』という一種の神器まで親授されている。

そして、秋篠宮皇嗣殿下の皇嗣が悠仁さまであることも自明の理であるから、愛子天皇というのは、悠仁さまに事故でもない限りあり得る話ではない。

その一方、公務の担い手不足は深刻だし、悠仁さまに男子ができなかったらという問題もあるので、それに備えた手は打たねばならない。

そこで国会決議に基づいて設置された有識者会議が現実性を緻密に考えて、詳細な報告書が出たのだが、最後の段階になって立憲民主党の担当者だった野田佳彦元首相が、それまでの経緯を無視して、自分が政権にあったときに構想していたラインと細部が違うといって邪魔して議論が止まってしまった。

しかも、その野田氏が立憲民主党の代表になったものだから、問題が余計にややこしくなった。もちろん、立憲民主党議員のなかにも女系天皇は認めがたいという人は多く、NHKのアンケートでは、党四役のうち、重徳和彦政調会長や笠浩史国対委員長は反対、野田代表と小川幹事長は回答なしであった。

しかし、そうはいっても、立憲民主党が勢力を伸ばせば、また、わがままを野田氏がいうことは避けられないので厄介なことだ。そして、①旧宮家の男子を皇族の養子にする、②佳子さまや愛子さまは本人のみ結婚後も皇族とするという案のうち、①は憲法上疑義があるから棚上げ、②は夫や子も皇族にすべきと言い張っているので、そうなれば、佳子さまや愛子さまが結婚して皇室を去るまで放置して、①だけしか可能性が残らないまでまつしかないと自民党は割り切って強い立場で交渉すべきだろう。もっともその前に野田氏が代表を辞めたら問題解決だ。

残りの政党の内、維新、公明、国民はいずれも上記の有識者会議の報告のラインを了承しているので、自民党が気に食わないなら、これらの党が勢力を伸ばしたら混乱は避けられるということになる。

ただ、維新はことさらにこの問題に熱心だった論客の足立康史氏が党内の内紛で公認を得られないのみならず、刺客を党内から立てられて政界引退に追い込まれたことが痛い。

足立康史氏 同氏HPより

また、国民民主党は立憲民主党との協力に状況によっては傾きかねないことが心配だ。

公明党については、維新が関西で公明党が議席を占めている6つの小選挙区で対抗馬を立てているのが、非常に心配だ。

というのは、皇位継承問題や憲法改正問題については、北側副代表がトップで主導権を取り、その下で弁護士でもある国重徹氏が実務を担当していた。ところが、北側氏は今回で勇退し(後継は大阪16区の山本香苗前参議院議員)、国重氏(大阪5区)は維新が現職の参議院議員の梅村聡氏を対抗馬に立ててきたので苦戦中だ。そして、北側氏が引退、国重氏が落選とか言うことになると党内でも各党間調整でも要を失うことになり酷く心配だ。

国重徹氏・同氏Fbより

あまり全国的には注目されていない戦いではあるが、自民党支持者も全国の皇位継承問題に興味のある方は、国重氏を手を尽くして応援した方がいいのでないかと私は思う。

ともかく、皇位継承問題が皇民の分断を招くのはとんでもないことだから、良識ある人たちにリーダーシップをとってほしいものだ。

日本保守党はどうかといえば、なにしろこの党の二枚看板の方々が書いた『日本国紀』では、神武創業以来、皇室は同じ血統であるのでなく、何度か断絶がありそうだとか、推古天皇の頃以前はきちんとした統一国家が成立していなかったのだろうとかかなり極端に皇室の歴史を否定しているのだから、どのていど期待してよいものやらといったところ。 自民については、安倍元首相の懐刀として活躍していた衛藤晟一氏の引退の穴が埋まるか。また、とりまとめにあたる衆議院議長に誰がなるかが焦点となる。


系図でたどる日本の皇族