一度、貧乏に落ちると抜け出すのが難しくなる理由

黒坂岳央です。

人生をそれなりに生きていると、他者の生き様を目の当たりにする機会が増えてくる。中には「どちらかというと豊かな生活を送っていたのに、まさかの事情でいきなり貧乏へ転落」という人もいる。そして一度でも貧しい生活に落ちた後はそこからはもう這い上がることができない、というケースをいくつも見てきた。

自分自身、両親が事業に失敗してシングルマザーで兄弟4人で育った貧乏で人生がスタートした。自身の経験も踏まえて「貧乏から抜け出す難しさ」について論じてみたいと思う。

Suntorn Somtong/iStock

貧乏に対する罰

「貧乏な人は怠惰で努力しないから貧しい」と自己責任論で考える人は存在する。確かにそうした人はいるのだが、あまり知られていない事実に「貧乏であることの罰」が存在する。端的に言えば、「貧乏に落ちると時間がなくなってしまう」という本質的事情がある。

件の「元々豊かな生活をしていた人が貧乏に転落」という話を深堀りしよう。自分が実際に知るケースとしては、地元の名の知れた企業経営者の息子と結婚した女性がいる。結婚後は子供も3人授かった。しかし、ある日旦那と離婚、子供を抱えて市営住宅に移り住んだ。そこからあわててパートに出るも、彼女にはキャリアもビジネススキルもなくどうしても日雇いや単純労働の仕事しか見つけらず身を粉にして働くもなかなか豊かになれないでいる。

このケースは何が問題なのだろうか?まず、お金がないので市営住宅に住むしかなく、そこから勤務先までの長距離通勤になるので時短勤務になる。また、ハイスキルや経験を活かして高単価の仕事ができないので時給は安く、そこで子供が寝静まった夜間にWワークに時間を取られる。

さらに、食事は忙しいときは自炊と宅食、外食を組み合わせたいところだが、お金がないと自炊しか選択肢がないので買い物や調理、後処理に時間が取られる。スマホやPCが古くて激安機種しか使えないので、処理が遅くて時間を取られる。

すなわち貧しさとは、「あらゆる行動に余計な時間が取られてしまい、日々を必死に生きることに一日の時間を使うしかなくなる」ということなのだ。

貧しさを回避する方法

一度でも貧しくなると時間を失い、時間がないから将来の発展性につながる自分への投資が難しくなる。ではどうすれば貧しさを回避することができるのだろうか?その答えは徹底的に「知識やスキル」に投資することだ。

自分自身、元々貧しかったのだが、学生時代からサラリーマン時代まで一貫してやっていたのは「知識やスキルへの投資」である。やったことは図書館にこもって本を読んで勉強し、ネットを使って先人の知恵を学ぶ活動である。そして空き時間はすべて自分の人生を豊かにすることに投資し、そこで得られたわずかな生活改善や時給単価アップの資源を再投資し続けた。現在は貧乏ではなくなったが、それは何か一発ドカンと大当たりを引いたような変化ではなく、少しずつ緩慢な前進の積み重ねだったと思っている。

知識やスキルに投資すると何が起きるか? 結論、時間効率が高まるのだ。仕事について言えば、ハイスキルの仕事で時給が高まることで無理に残業やWワークをしなくても十分な給与を手にすることができる。

給与が高くなれば会社の近くに住んで通勤時間を減らしたり、食事の健康へ投資して日中のパフォーマンスを高められる。時短家電や家事代行サービスで時間を買い、そこで浮いた時間をさらに再投資できる。浮いた時間は時給を高める勉強に投資する。

これを繰り返すと、極限まで時短効果が積み上がり、まず時間持ちになり、そしてお金も増えて徐々に豊かな生活へと近づいていく。

ある程度豊かになれば、給与をすべて使い切らなくても生活がまわるようになっていく。そこで余剰資金を指数株への投資など資産運用に使うことで複利効果を得られるようにある。時間の経過とともに資産は少しずつ、だが着実に増えて経済的、精神的な余裕を得ることにつながるのだ。

現在、すでに貧しい生活に落ちてしまった人も諦めずに、まずは徹底的にムダを省いて生活習慣を時短することに再投資をし続けることだ。スマホのSNSはアンインストール、ニュースや他人のゴシップ消費に時間を使わない。与えられた時間のすべてを自分の人生を豊かにする情報、仕事に直結することだけに投資し続ける。そうすることで、わずかなスキマ時間をかき集めるだけでも少しずつだが日常は豊かになっていくだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。