先日9日に衆議院が解散され、既に選挙戦がスタートしています。
そんな中、一部野党の公約に「社会保障制度、社会保険料の見直し」がようやく登場したこともあり、SNS上では社会保障制度の見直しを求める声がかつてないほどに強まっています。
SNS上では
社会保障制度改革に積極的な維新、国民民主党
vs
高齢者の票にしか関心がない自民・公明、立民、共産れいわ
といった対立軸が鮮明化し、既存の与野党の線引きがぼやけている印象すらありますね。
一方で地上波の党首討論で「裏金問題」とか延々やってるのみると、社会保障問題を取り上げたくないためだけに自民他とメディアがアリバイ作りしているようにしか見えません(苦笑)
裏金問題ってあれ本気で重要だと思ってる人なんているんですかね?筆者は会ったことありませんけど。
あと大声で追及してた側の大石あきこに(自民以上の額の)“裏金問題”が発覚しても野党もメディアもスルーって、なんかのギャグですか?
【参考リンク】「自民の不記載みたいにしないで」れいわ大石晃子氏「納税せず一緒」指摘の橋下徹氏に反論
そんな中、筆者自身も社会保障の切り下げを主張したところ予想以上の反響がありました。
中には批判的なレスもあるのは当然ですけど、読んでみると「ああこういう人達はこういう勘違いをしてるんだな」と色々と思うところがあったので、今回はまとめて取り上げたいと思います。
どんな思考回路の人がどういう間違いを犯すのか。それって実はキャリアデザインにも通じる話だからです。
社会保障を見直す→もう生きていけない!と発狂する人たちに共通する思考回路
レスを見るとわかるんですが、社会保障制度の見直しに批判的な人というのはだいたい以下の4パターンですね。
1. 社会保険料の会社負担分が理解できない
「自分は社会保険料を月10万円天引きされてるけど、それがゼロになってもとても親の面倒は見られないです」
みたいな人ですね。いえ、あなたが実際に負担している社保はその2倍の20万円/月です。
会社はあなたにかかっているコストのすべてを人件費から払うためです。天引きしすぎるとサラリーマンが怒るから、厚労省がその半分に“事業主負担”というラベルを張らせているだけです。
2. 毎月の給料としか比較できない
「介護施設に親を入れようと思ったら月50万円はかかります。給料じゃ無理です」みたいな人。
20代から社会保険料は30%、健康保険にかぎってもおよそ10%程度天引きされ続けている点を考えましょう。正社員の生涯賃金が3億円とすると超大雑把に言って3千万円。
そしてそれらは徴収されなければ変な中抜きされることも無いですし、自分で運用も可能です。
全部米株に突っ込めとは言いませんけどインデックス投資やら何やらに分散で積立投資すれば普通に2〜3割の益は出るでしょう。
数年分の施設利用料くらい普通にねん出できると思うのは筆者だけでしょうか。
ついでに言えば、親の側もまさか「持ち家も資産もゼロ」なんてことはないでしょうし。なんたって日本の金融資産の4割を握っている世代ですから。
【参考リンク】老後資産「80歳過ぎても1割しか減ってない」実態。なぜ高齢者は資産を取り崩さないのか
百歩譲って「こちとら宵越しの銭は持たねぇ」みたいな毒親だったら縁切って無視してください。自分の生活を犠牲にしてまで親を扶養する義務はありませんから。
余談ですけど中には「自分の月の手取りはたった○○万円だぞ!それでとても親の面倒なんてみれない!」みたいな上記1、2番のハイブリッドもいましたね(苦笑)
3. 過去の成功体験でマウント取ってくる人
「自分は年収1千万円以上あったサラリーマンだったけど、介護保険があって助かりました」みたいな人。
君みたいなのがそれまで保険料払ってないのに突然介護保険なんて作って使い倒したらそりゃ下の世代が割を食うのは当然でしょう。
それって要するに「自分は介護保険制度が出来たおかげで楽に食い逃げできました。ごっつぁんです!」って言ってるだけでしょう。論外。
4. 「社会保障制度の持続可能性」という観点が無い
あと不思議なのは、筆者は「社会保障制度の廃止」なんて一言も言ってないんですね。っていうか、たぶんそんなこと言ってる人なんていないはず。
でもなぜか上記のような人たちは「社会保障制度がないと全部自費で~」と思考回路がとんじゃうんですよ。
だから全然話がかみ合わない。
筆者のようなスタンスの人間が言っているのは、今のままだと社会保障制度は持続できないから今改革しましょうねということなんです。
逆に言うとそれすら拒否するんだったら本当に20年後くらいには、リセットしなきゃならなくなりますよという話です。
そしてそれこそ、まさに皆さんの言う「毎月ウン十万円を自腹で負担しないといけない状況」に近いでしょう。
まあ正直に言うと、上記のような人たちの半分以上は「社会保険料を大して払っておらず、サラリーマンが天引きされている保険料に寄生している人たち」でしょう。
高齢者の給付を減らされたり窓口負担を上げられると、自分が支えないといけなくなるから。あるいは社保→消費税に置き換えられると自分も負担しなければならなくなるから。
「自身の負担が減る」というメリットがまったく想像できないことが、彼らの論理が飛躍する理由でしょう。
何でそういう人達だと言い切れるかというと、筆者はリアルでそういう自営業の人たちを大勢知っているからです。
なかなか表には出てきませんけど、たまに尻尾を出す人もいますね。たとえばこんな人とか↓
【参考リンク】日弁連会長ら16人、指針に違反か 厚生年金未加入問題
そういう人達というのは、このまま現行制度を引っ張れるだけ引っ張って逃げ切りたいわけですよ。その後に備えて資産形成も行っているでしょう。
でも普通のサラリーマンは無理ですよね。だって3割天引きされ続けているわけですから。
だから、上記のような反論をぶつけてくる人たちの中に混じっているであろう、本当にサラリーマンやってる人には言いたいですね。
まずは冷静になろうと。そして制度を持続可能にする、負担を社会全体で公平にするための議論をスタートさせようと。
じつはそれこそが「社会保障の無い、100%自腹の世界」が出現することを防ぐ唯一の道だったりします。
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以降、
・「解雇規制緩和でみんな年収300万円の非正規になる」という人達との奇妙な共通点
・今回の選挙で社会保障はどう変わるか
Q:「転職後、すぐに辞めても大丈夫ですか?」
→A:「構いませんが、その分、次は慎重に行ってください」
Q:「40代で昇給ゼロだった自分は転職すべき?」
→A:「まあ残ってもいいことはなさそうですね」
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