地方駅前タワマンで「君主」になることの魅力

秋田駅に出かけた時に印象的だったのは、県庁所在地なのに、繁華街の人出が極端に少なく、閑散としていたこと。そしてそれにも関わらず、駅前にはタワーマンションの建設が進んでいたことです。

歩いていて見つけたのは「君主たれ。」というマンション広告でした(写真)。旧城主だった佐竹家を意識したマンションポエムで宣伝し、100平米を超えるような大きな部屋もある高級志向の新築タワーマンションです。

調べてみると、秋田だけではなく、高松、松江、宮崎、長崎、佐賀、富山、福井といった地方の県庁所在地の駅近に、次々とタワーマンションが建設されていました。

地方の駅前タワーマンションは、開業医のような地元の高所得者以外は、親からの相続などで資金調達をしている富裕層が主な購入層です。地元の物価水準から見れば、高額な物件ですから購入できる人は限られています。

対照的なのが首都圏の郊外です。

東京23区のような都心部の不動産価格が上昇続ける一方、千葉、埼玉などの郊外の不動産に関しては、価格が頭打ちとなり、値下がりするところも出てきています。これは、価格上昇が急ピッチで進み、サラリーマンが購入できるレンジを超えてしまったことが原因の1つと思われます。

人気を集める地方の駅前タワマンと人気が無くなってきた首都圏郊外の居住用不動産ですが、中長期的にはどうなるのでしょうか?

地方では高齢化と人口減少が続いていますから、周辺の商業施設などは今後も衰退が続くことでしょう。

となると、建物の眺望や駅近のロケーションは変わらなくても、住環境は徐々に劣化していくのではないでしょうか?

一方で首都圏は引き続き全体としては人口流入が続き、自治体の政策によって人気となる郊外の都市も出てくると思われます。

いずれ地方都市の駅前タワマンの資産価値は相対的に落ちていくというのが、私の見立てです。

地方都市は温泉郷やリゾートエリアのような観光資源を持たない場所はこれからますます厳しい環境になると予想します。

だから、そんなこれから鄙びていく場所で「君主」になることにはあまり魅力を感じません。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年10月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。