基礎控除「103万円」議論:75万円増やして178万円にする意味

このところ選挙の話題が続きますが、ひろ的に妙に興味をそそるのが兵庫県知事選。既に期日前投票が始まっています。現状、尼崎市長を歴任した稲村和美氏がリードし、前知事の斎藤元彦氏が追う展開と報じられています。今後、この両者の戦いに的が絞られそうです。県庁内部、県民、マスコミ更には維新と自民からもそっぽを向かれ四面楚歌の中、それでも戦う斎藤氏に強い支持が集まり始めているのをみてこれは日本版ハリス対トランプの戦いではないかという気もします。トランプ氏なら「あいつらは嘘を流布した」と言うところ、斎藤氏は「黙して耐え、戦う」の違いでしょうか?斎藤氏の支持が猛追するには何か理由があるのでしょう。知りたいです。そしてその結果にはもっと注目です。

では今週のつぶやきをお送りします。

大きすぎる市場のボラティリティ

決算ウィークなのでその明暗で株価が大きく動くのは世の常ですが、その動きは分かりにくいこともあります。2.5兆円の巨額損失を計上したインテルは先行き見通しが前向きだったことで株価は上昇しました。日本の半導体銘柄関連の代表格、レーザーテックは決算は事前予想を下回り16%安、日本のハイテクの雄、日立も高値から2日で1割以上下落しました。決算が好調だったアマゾンは素直に上昇、アップルは決算数字はまずまずなものの中国市場など成長不安を感じさせます。ボーイングは冴えない業績故に組合員がストが終結する見込みとなり哀愁を誘いながら上昇となるなど投資家泣かせの市場の荒くれぶりです。

本日発表のアメリカ10月度雇用統計は純増わずか12000人、その理由は2つのハリケーンとボーイングのストライキの影響が大きくで当初から今回の統計的価値はないとされていました。ちなみに専門家の事前予想もプラス1万人から18万人までばらけており、この統計結果はスルーしてよいでしょう。いよいよ来週火曜日に迫ったアメリカ大統領選の行方をめぐってはどうでもいいようなニュースを含め、SNSの空中戦で激しいバトル状態にあるも、ここまで日にちが迫るとトランプトレードとかハリスへの賭けといったこともほぼ沈静化し、なるようにしかなりません。

来週はその結果を受けての市場の動きなので読みづらく初期反応に振り回されない様にした方がよいとみています。あと、忘れてはいけないのが中国の全人代常務委員会が11月4-8日に開催され、ここで中国の大型景気刺激策が発表になると予想しています。中国関連向けのマネーは待機中とみています。よって日本が政治的にぐずついており、11日の首相指名選挙までは水面下の戦いになるなら、蚊帳の外となるとみています。金曜日の日経平均の1000円を超す下落も海外勢の利確とされ、銘柄によっては来週あたりバーゲンとなりますので下値を拾うと小遣い稼ぎ程度にはなるとみています。(つまり今は「小すくい」に徹するべきだという意味です。)

基礎控除「103万円」議論

正直、この切り口は実に面白いと思います。玉木雄一郎、香川県出身、東大法学部から財務省、その後、野党時代を長く過ごしています。なかなか開花しなかった玉木氏が突然「政局キーマン」になるのですから世の中わからないものです。選挙までは野田佳彦氏の声がデカかったのに今はしゅんとしているように見えます。私もかつては玉木氏の国民は存在感を打ち出せないと申し上げたこともあります。ところが不思議なもので今回の選挙で自民と立憲が熾烈な戦いをしている間に議席を4倍に増やしてしまい、まさにスルスルと伸びた「ジャックと豆の木」であります。

-玉木雄一郎代表 国民民主HPより

さて、玉木氏の基礎控除103万円を75万円増やし178万円にしようというアイディア、これ私は賛成です。抵抗する側はいろいろ御託を並べるのです。別に103万円の壁を越えたところで突然とんでもない課税になるわけじゃないといった声はフィナンシャルプランナーあたりから実務面としても聞こえてきます。それでも103万円の壁として今回の議論の焦点になった理由は物価スライドせず、ずっと放置したからだろうと思うのです。今の103万円が設定されたのが1995年。つまり29年間放置したのです。その年の最低賃金は611円で今は1055円。その上昇率73%。仮に103万円を最低賃金の上昇率73%を適用すれば178万円になります。(報道でも同じ指摘をしていました。)

主婦は計算してバイトをしていました。スーパーのレジを打ちながら「今月のバイト代をもらうと年収が95万円だから今年残りは8万円稼げば終わりだわ」と。いっぽう政府は女性の社会進出を謳っているもその女性とは独身女性にフォーカスした逆差別ではないかと取られても致し方ないのです。主婦を「扶養者の枠組み」に押し込み、子育てが終わって社会にもう一度出ようとしても社会が変わりすぎていて「私、ついていけないわー」。政府はそのあたりのポリシーの一貫性に欠けていたのです。東大法学部、財務省、やるじゃないか、と思います。自民党はこれは真摯に受け止め、相当前向きに検討せざるを得ないでしょう。そうすると玉木人気が野田人気を抑えるという将来的な含みも出てくるかも、です。

2つの戦争は新たな局面入りするのか?

ウクライナの戦争は北朝鮮軍がいよいよ前線に投入され、早ければ来週にもウクライナ軍と対峙することになりそうです。以前、私はこの件に憤りを感じると書いたのですが、ウクライナも同じようにすればよいではないか、という意見があるのには非常に驚きました。人命を道具だと思っているのでしょうか?思考回路が壊れているのでしょうか?また北朝鮮軍もわずかな訓練で前線に出されるわけですが、私は203高地で乃木将軍が大苦戦したあの話を思い出してしまいました。乃木さんはあの戦いで英断を下したのか、といえば私はゼロ評価です。(だけど私は学生時代、乃木会館でバイトしていましたが。)個人的にはあの戦い方を前向き評価したことが第二次大戦下での日本軍の悲惨な負け方につながらなかったとは言えないと思います。

それはさておき、もう一つの戦争、イスラエルの戦争は相手が誰だかわからなくなってきました。近いうちにイランがイスラエルに報復攻撃をすると情報が漏れており、その前線はイラクにあるとされます。イスラエルが先制して防御をするならイランが手配するイラクにある敵陣を攻める必要がありますが、それはいくら何でも戦略的に不都合だと思うのです。ましてや来週ということはアメリカは大統領選挙の結果が出る頃でありましょう。イスラエルは不敗で勝ち続けていますが、世の中永遠に続くこともないのです。

ウクライナの戦いが長引く一つは兵站が伸びすぎたことがあるとみています。当初はロシアが意表を突く感じでしたが、それがうまくいかず、結局、双方、薄く長い兵站が伸びた状態に見えます。イスラエルもガザ地区にフォーカスした際は圧倒的な攻め方、そして北からヒズボラが来た時もガザ地区の部隊の一部をヒズボラ戦に回す器用さがあったのは国が小さいからできた技。(第二次大戦の時のソ連の前線の話を思い出してください。)ところがこのところイランとの空中戦がさらに加わり、今度はよりイスラエルに近いイラクから攻められるとなればこれはまた別次元の防衛が必要でしょう。2つの戦争は実に無駄なエネルギーを消耗し続けていると思います。

後記
今週は久々にトロント出張。弾丸0泊2日で行こうと思ったのですが、思った以上にアポも多く、1泊2日フル稼働でした。トロントはカナダ最大のビジネス都市だけあり活気もあり緊張感すらあります。昼にお世話になった方に連れて行って頂いた寿司屋は久々に素晴らしく感動しました。バンクーバーの寿司屋ではここまでしっかり握れるところはないでしょう。大将のこだわり、そして日本の食文化を守るという意気込みが一つひとつの握りにしっかり込められおり大変感動しました。辺鄙なところにありますが、トロントトップクラスとされます。しかし今回の出張の最高の収穫でした。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月2日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。