1. アジア・大洋州とは
前回は、IMFのデータベースから、主要国や経済水準の高い国の1人あたりGDPについてご紹介しました。
普段のOECDのデータには含まれない中東諸国や、シンガポール、台湾、香港などのアジア諸国の水準が高いようです。
せっかくですので、今回からはIMFのデータから地域ごとに世界各地の1人あたりGDPの詳細をご紹介していきたいと思います。
地域の区分は外務省のホームページを参照し、次のような区分としています。(参考ページ: 外務省 国・地域)
<アジアの国・地域>
インド | インドネシア | カンボジア |
シンガポール | スリランカ | タイ |
韓国 | 中国 | ネパール |
パキスタン | バングラディシュ | 東ティモール |
フィリピン | ブータン | ブルネイ |
ベトナム | マレーシア | ミャンマー |
モルディブ | モンゴル | ラオス |
北朝鮮 | 香港 | 台湾 |
マカオ |
<大洋州の国・地域>
オーストラリア | キリバス | クック諸島 |
サモア | ソロモン諸島 | ツバル |
トンガ | ナウル | ニウエ |
ニュージーランド | バヌアツ | パプアニューギニア |
パラオ | フィジー | マーシャル |
ミクロネシア |
2. 1人あたりGDPの推移:為替レート換算値
アジア・大洋州で代表的な国・地域の1人あたりGDPの推移を見てみましょう。
図1がアジア・大洋州の1人あたりGDPの推移です。
シンガポール、オーストラリアが高い水準に達していて、香港、ニュージーランドも2010年代から日本を上回っています。
日本は2022年、2023年で減少傾向で、台湾、韓国に近い水準となっています。
その他、アジアの国々は少しずつ水準が上昇している事も確認できますね。
中国、マレーシアは1万2000ドルを超えています。
3. 1人あたりGDPの国際比較:為替レート換算値
続いて、アジア・大洋州の国・地域についての1人あたりGDP(為替レート換算値)の国際比較をしてみましょう。
まずは1997年の比較です。
図2が1997年のアジア・大洋州の国・地域の1人あたりGDP(為替レート換算値)の国際比較です。
当時日本はアジア・大洋州で最も1人あたりGDPの水準が高かったことになります。日本から韓国までの水準が突出していたようです。
続いて、香港、シンガポール、ブルネイ・ダルサラーム、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、韓国と続きます。
当時中国は775ドルで日本の50分の1程度、インドは415ドルで日本の80分の1程度という水準でした。
ブルネイ・ダルサラームはあまり聞きなれない国ですが、この地域でかなり経済水準の高い国のようです。
同国はインドネシアのあるボルネオ島に位置し、イギリス連邦の加盟国の人口40万人程の国となります。
図3が2023年の1人あたりGDP(為替レート換算値)の国際比較です。
2023年では日本は7番目の水準と大きく後退していて、韓国や台湾と同程度となっています。
シンガポール、マカオ、オーストラリア、香港、ニュージーランドの順で水準が高いようです。
アジア圏での日本の立ち位置が相対的に低下している事が良くわかりますね。
中国が12,000ドルを超え、順位を大きく上げているのも特徴的です。
東南アジアではマレーシアが高めの水準ですね。
4. 1人あたりGDPの推移:購買力平価換算値
続いて、アメリカを基準とした数量的な比較となる購買力平価換算値について見ていきましょう。
まずは、代表的な国・地域の推移からです。
図4が購買力平価換算値の推移です。
1990年代頃までは日本はオーストラリアや香港と同程度で推移していたようですが、その後は大きく差が付いているようです。
1980年代から既にシンガポールが突出しているのも印象的ですね。
近年では、日本はシンガポール、台湾、香港、オーストラリア以外にも、韓国、ニュージーランドを下回ります。
為替レート換算値と比べると日本は右肩上がりに上昇してはいますが、伸び具合では他国と比べてやや緩やかな印象です。
東南アジアではマレーシアが高い水準になっていますが、中国やタイなども為替レート換算値と比べて大幅に高い数値となっています。
5. 1人あたりGDPの国際比較:購買力平価換算値
続いて、1997年と2023年の国際比較をしてみましょう。
まずは1997年からです。
図5が1997年の国際比較です。
日本は為替レート換算値では突出した水準でしたが、購買力平価換算値だとアジアの中でも4番目の水準だったようです。
ブルネイ・ダルサラームの水準がかなり高いのが特徴的ですね。
続いて、シンガポール、香港、日本、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、韓国と続きます。
中国は購買力平価換算値でも当時日本と10倍以上の差があったようです。
図6が2023年の国際比較です。
日本は52,215ドルでアジアでも9番目の水準に立ち位置を低下させています。
シンガポール、マカオが突出していて、続いてブルネイ・ダルサラーム、台湾、香港、オーストラリア、韓国、ニュージーランドと続きます。
中国も12番目の水準にまで水準が高まっているようで、タイやインドネシアを上回っています。
日本との差も2倍強にまで縮まっています。
6. アジア・大洋州の1人あたりGDPの特徴
今回は、IMFのデータベースから、アジア・大洋州の国・地域について1人あたりGDPの国際比較をしてみました。
為替レート換算値でも購買力平価換算値でも、日本はかつての水準からすると、この地域での立ち位置を低下させているようです。
特に、シンガポールや香港、台湾、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの水準が高く、他の国々との差が大きい事もわかります。
中国も水準が高まり、大きく国際順位を上げている事がわかります。
これまで先進国をはじめとするOECDでの比較ばかりご紹介してきましたが、このように新興国も含めた国際比較も大変興味深いですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年11月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。