核を使えばロシアは全滅:ロシアの核は「使えない兵器」なのか?

ロシアによる「核恫喝」

ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナ側の徹底抗戦により長期化している。米国を含むNATO諸国による武器弾薬支援があるとはいえ、軍事大国のロシアによる侵略を食い止め、持ちこたえているウクライナ国民には敬意を表したい。

ロシアによる侵略は、今回、北朝鮮軍の援軍を受け入れたことからも明らかなように、所期の戦争目的すなわち、「ウクライナ全土占領」「ウクライナ現政権転覆」の目的を達していないことは明らかである。だからこそ、ロシアのプーチン大統領はこれまでたびたび「核の使用」に言及し、ウクライナをはじめ米国を含むNATO諸国を恫喝してきた。

第16回BRICSサミットでのプーチン大統領 クレムリンHPより

ロシアの核戦力

確かにロシアは米国に匹敵する5000発以上の核弾頭を保有している。長距離戦略ミサイルや長距離爆撃機などの核運搬手段も相当数保有していることは事実であろう。しかし、ミサイル防衛能力や核防衛施設(核シェルター)は明らかに米国に劣っている。また、核弾頭を発射できる原子力潜水艦の数も米国に比べ明らかに劣っている。

のみならず、米国以外のNATO諸国の中でも、英国とフランスは核保有国であり、それぞれ数百発の核弾頭を保有している。さらに、英国とフランスは長距離弾道ミサイルや長距離戦闘爆撃機、原子力潜水艦などの核運搬手段も保有している。また、ドイツ、イタリア、ベルギー、オランダ、トルコは米国と核共有し、国内に相当数の核弾頭を保管している。上記の国々は「核シェルター」も整備されている。

このように見てくると、ロシアの核戦力は、米国、英国、フランスの核保有国およびドイツなど5か国の核共有国に比べ、ミサイル防衛能力や核シェルターを含め質量ともに劣っていることは明らかであると言えよう。

核を使えばロシアは全滅

したがって、万一、ロシアがウクライナや米国を含むNATO諸国に対して戦術核や戦略核を使用すれば、米国をはじめNATO諸国から核による反撃を受けることは確実であり、上記の国々に比べ、通常戦力のみならず核戦力においても、質量ともに劣るロシアは首都モスクワをはじめ、サンクトペテルブルクなども全滅し、致命的な打撃を免れないと言えよう。

もとより、米国をはじめNATO諸国も一定の被害を免れないが、ロシア側の被害に比べるとミサイル防衛能力や核シェルターにより、数分の一であろう。なぜなら、ミサイル防衛能力や核シェルターを含む防空能力においてロシア側は明らかに脆弱だからである。

尚、中国がロシア側に与して核戦争に参戦する可能性は極めて低い。なぜなら、中国は自国が危機に陥らない以上、ロシアのために核戦争のリスクを負うことはないからである。北朝鮮がロシア側に与して核戦争に参戦したとしても、北朝鮮の防空能力はロシア以上に極めて脆弱であり、核シェルターもなく、国土も狭小であるから、瞬時の全滅を免れない。

ロシアの核は「張り子のトラ」

このように見てくると、ロシアは米国およびNATO諸国に対して核を使用することはできない。なぜなら、反撃を受けて自国が全滅するからである。その意味で、ロシアの核はまさに「張り子のトラ」であり、「使えない兵器」であると言えよう。