米山隆一氏のレプリコンワクチンについての発言をファクトチェック

mesh cube/iStock

米山隆一氏は、原口一博氏の主張を批判した際に、Xにおいて次のように発言しています。今回は、この発言をファクトチェックしてみます。

私は、確信をもって、レプリコン・ワクチンも他の多くのワクチン同様安全である科学的根拠があると思います。

結論から言いますと、この発言は事実に反しています。

その根拠を順を追って説明してみます。

まず、薬剤の有効性・安全性を調べるプロセスは、次のようなものです。

第Ⅰ相臨床試験

第Ⅱ相臨床試験

第Ⅲ相臨床試験

医薬品の承認

第Ⅳ相臨床試験、研究機関での自主的研究

レプリコンワクチンであるコスタイベは、第Ⅲ相臨床試験が終了し、医薬品として承認された段階です。

ここで重要なことは、第Ⅲ相臨床試験の主たる目的は、薬剤の有効性を調べることであって、副作用・副反応を詳細に調べることではないという点です。

なぜ副作用・副反応を詳細に調べることができないかと言いますと、サンプルサイズが小さいからです。

コスタイベワクチンの第Ⅲ相試験対象者は、16,000名(ARCT/Placebo:8,000例/8,000例)にすぎません。このサンプルサイズでは、100万人当たり数人~数十人発生する副反応を調べることは不可能なのです。

たとえば、発症頻度が10人/100万人の副反応の場合、対象が8000人であれば、わずかに0.08人しか発症しません。これではとても分析などできません。

更に具体例を見てみます。ファイザーのコロナワクチン後の心筋炎の発症頻度は、接種1~2回目の時点では、0.5~0.7件/100万回接種と報告されています。

したがって、対象が8000人であれば、同じ頻度で発症したと想定した場合、わずかに0.004~0.0056人しか発症しません。コスタイベのレポートには、「心筋炎の報告例はなかった」と記載されていますが、報告例がなくて当たり前なのです。

報告例がないことを持って、コスタイベでは心筋炎が発症しないとすることはできません。第Ⅲ相臨床試験では心筋炎の発症頻度を捕捉することはできないということが正しい理解です。

すなわち、第Ⅲ相臨床試験では薬剤の安全性は十分に検証できないのです。第Ⅳ相臨床試験や研究機関での自主的研究が実施されて初めて薬剤の安全性のエビデンスが示されます。

以上より、コスタイベワクチンは、他のmRNAワクチン(ファイザー、モデルナ)のように第Ⅳ相臨床試験や研究機関での自主的調査が実施されていないため、「他の多くのワクチン同様安全である科学的根拠があるとは言えない。」という結論になります。

最後に、医薬品の承認後に、第Ⅳ相臨床試験で重篤な副作用が問題となったイレッサという薬剤を紹介しておきます。以下のように解説されています。

肺がん治療薬として2002年7月に承認されたイレッサは、副作用の少ない分子標的治療薬(注2)として期待されましたが、承認直後から急性肺障害や間質性肺炎(注3)などの致死性副作用が問題となりました。

繰り返しになりますが、薬剤の安全性が担保されるのは、第Ⅳ相臨床試験が実施された後なのです。したがって、第Ⅳ相臨床試験が実施されていないコスタイベワクチンは、安全であるとする科学的根拠が十分にあるとは言えないのです。