自公政権と国民民主党の政策協議が注目されている。先週の幹事長会談では、とりあえず「103万円の壁」の見直しが決まったようだ。
自公政権後の4つのシナリオ
この「103万円の壁」は壁ではないが、特別国会で石破首相が指名されないリスクを恐れ、自民党は最大限の注意を払っている。ここでいくつかのシナリオを考えてみよう。
- 自公が国民案を拒否する:基礎控除・給与所得控除を103万円から178万円に上げる国民案を自公が拒否すると、国民は特別国会の首班指名で首班指名で「玉木」と書く。野党はまとまらないので石破再任は同じだが、11月末の臨時国会の冒頭で内閣不信任案に国民も賛成するだろう。
- 自公が国民の減税案を丸のみする:自公が国民案を全面的に認めても、国民は「玉木」と書いて無効票を投じるが、石破首相の再任が決まる。しかし国民の提案する大型減税には財務省が反対している。
- 玉虫色の妥協案:「何らかの形で年収の壁を解消する」という曖昧な合意文書をつくることもありうるが、国民は今年の当初予算ではトリガー条項で自公政権にだまされたので乗らないだろう。年収の壁は103万円ではなく130万円(大企業の場合106万円)にあるので、物価スライドで「基礎控除・特別控除を130万円まで上げる」という合意文書を出すことも考えられる。
- 玉木首相の誕生:それでも少数与党の不安定な状態は変わらない。政権を組み替えないと安定政権はできないが、そのための最後の手段として、自民・公明が首班指名で「玉木」と書けば、自公国の連立政権が絶対多数となって安定する。
このうち1の確率はゼロだが、2の丸のみは10%ぐらいありうる。3の確率は80%ぐらいだろう。基礎控除・給与所得控除を130万円に上げても、第3号被保険者が残っている限り壁はなくならない。扶養控除や配偶者控除などが変わらないと効果はほとんどないので財務省も認めるかもしれないが、国民は「成果を上げた」とアピールできる。
「自公国連立政権」はありうる
4はいまのところ確率10%ぐらいで、玉木氏も「連立を組む気はない」と否定しているが、石破政権は遅かれ早かれ行き詰まるので、臨時国会までの間に自民党内でも「玉木首相」待望論が高まるかもしれない。玉木氏が連立の条件とするのは
・憲法改正
・安保法制支持
・原発の新設
の3条件だから、立民とは相容れないが、自公とは一致する。玉木氏はもともと郷里の香川1区で自民党から立候補しようとしたが、できなかったので香川2区の民主党に回った経緯もあり、自民党とは政策的に近い。政治家としての資質を考えても、自民党総裁選に出ても勝てるぐらいの実力はある。すでに安倍派からも国民案を支持する声が出ている。
この場合は国民の減税案が100%実現するので、玉木氏としては悪くないが、財務省は強く反対するだろう。自民党内にまったく基盤のない玉木首相が、どこまで持続するかもわからない。村山首相のように自民党のあやつり人形になって、使い捨てされるかもしれない。
ただあと8ヶ月後に迫った参院選を考えると、いずれ沈む石破政権の泥舟に乗っているより、安倍派を中心にして玉木首相を実現するほうがましという判断はありうる。国民の減税案には問題が多いが、福沢諭吉もいったように「政治は悪さ加減の選択」である。玉木首相も悪くない選択だと思う。