各種メディアの予想を覆してあっさりとトランプ氏の大統領選勝利が決まりました。半日前まで「歴史的大接戦」と報じていたメディアは何だったのでしょうか?
数字の受け売り、独自の分析力のなさを示したとも言えます。いや、もしかすると民主党に配慮した可能性もあります。より接戦になればメディアへの注目も続くし、仮に結果が見えていたとしても民主党支持者にはこれだけ民主党支持が多いとアピールすることで民主党系のメディアにとっては先々の営業になると考えたかもしれません。
メディアなんてそんなレベルです。真実を知りたければ誰かの情報を信じるよりも自分で調べるしかない、そしてそんなことができないというなら一時情報を丹念に見て考えるしかないと思います(もちろん、そんなこと、ほとんどの方にとって不可能です)。
日本のメディアも基本的には色がついています。私が見るのはネット配信のニュースが中心になるので国際関係の報道が充実しているTBSニュースを見る機会が多いのですが、このニュース番組に強いTBSは政治に関しては左寄りの偏向報道傾向があるので、その部分はほとんどスルーで事実だけを拾うようにしています。そうしないと騙されてしまうのです。
さて、ドナルド トランプ 2.0、早々の結果に驚きはなく、この数週間の市場の動きは正しい予想をしたな、と改めて感じているところです。個人的な興味は議会の方に移っています。上院は共和党が過半数を確保しそうで、激戦の下院が勝負のカギを握るとみています。下院は今までは共和党が過半でしたが、一部の州で民主党が巻き返し、僅差の勝負が続いているため、こちらの方が判明まで時間を要する状態になっています。
仮にトリプルレッドになった場合、法案が通りやすくなり、トランプ色はメタリック レッドに変わるのでしょう。
今回のトランプ氏の勝因ですが、私は各種メディアや専門家の分析とは全く違います。以前から申し上げていたようにコロナが招いた国民不満であります。2024年という選挙イヤーにおいて正当な選挙が行われた国や地域では多くが与党の敗退、ないし政権交代が起きています。
その理由はシンプルに経済問題であり、物価高対策でした。今回のアメリカ大統領選挙における国民の最大の関心も経済問題でした。なぜ物価高になったかといえばポストコロナで滞留した消費が一気に噴出し、需給関係を崩したことにあります。
つまり私から言わせれば民主だろうが、共和だろうが、保守だろうが、リベラルだろうが関係なしにオセロゲームをしたのが2024年選挙イヤーの総評だと考えています。
国民は顔を変えることでスッキリする、そういうことでしょう。国民は常に一定の不満を持っています。そのはけ口は政治であり、政治家なのです。「国家元首ほど嫌な商売はない」というのがこの4年間だったと思います。コロナはすっかり過去のもの、と考えている人が多いと思いますが、その集大成が2024年選挙イヤーだったと私は結論付けています。
ではトランプ2.0の時代に何が起きるでしょうか?私は正直、あまり期待していないのです。理由は「今の世の中、いうほど簡単ではない」からです。トランプ氏は言いました。「俺ならウクライナの戦争を24時間で止めてやる」と。手法はわかっています。手術中に酸素注入を停めるぞ、というわけです。それをした後の影響は未知数です。戦争は終わった、だけどもっとカオスが待ち構えているかもしれません。
関税はどうでしょうか。全世界に10%、中国には60%、メキシコからの自動車には100%関税をかけることでアメリカは産業が回復するでしょうか?アメリカにおいて製造業はおおよそ半世紀前からその能力を徐々に無くしてきたのです。無くなった能力を資本移動という手段で海外の安く、可能性があるところに投資をして今のアメリカの富を築いたのです。
トランプ1.0の時、レパトリエーション(国内回帰)を進めました。ではアメリカの製造業の競争力は上がったでしょうか?繊維や鉄鋼だけでなく、最先端で競争力ある航空機や半導体はどうでしょうか?「国が成熟すると労働者は講釈を垂れる」から生産性は上がらないのです。「黙って仕事をせい」とは言えないのです。
関税により物価が上がる、よって金利は思った以上に下がらない、だからドル円は円安に向かうというまことしやかなストーリーもささやかれています。一方でトランプ氏はドルは強すぎる、と文句を言いました。金利はさっさと下げるべきだとも言いました。ここは市場とトランプ氏の思惑がまったく一致していない部分であります。これ一つとってもトランプ氏がGreat Americaを構築するには結構苦戦するだろうとみています。
最後に日米関係ですが、高橋洋一氏がトランプ氏は石破氏に会うだろうか、とコメントしています。私もひと月以上前のこのブログでトランプ氏と石破氏の会談は想像できないと申し上げました。本音を申し上げると私は石破氏はトランプ氏に会わない方がいいと思います。下手に会って変な要求を突き付けられて宿題をもらって頭を抱えることが容易に想像できるからです。
むしろ石破氏がもう少し継投するなら、日本の政界の足元をもう少し固めたほうがいいでしょう。11日の首相指名選挙でよれよれ指名を受けた首相が剛腕のトランプ氏とどう対峙するのでしょうか?単にご機嫌伺いなら岸田、麻生、茂木各氏の誰かに全権で会いに行ってもらう方がよいと思います。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月7日の記事より転載させていただきました。