1. 北米・欧州とは
前回は、アジア・大洋州の国・地域について1人あたりGDPの国際比較をご紹介しました。日本は、かつてよりもこの地域での順位が下がり、存在感が低下しているようです。
今回は、北米・欧州の1人あたりGDPについて国際比較してみましょう。
地域の区分は外務省のホームページを参照し、次のような区分としています。(参考ページ: 外務省 国・地域)
<北米>
アメリカ | カナダ |
<欧州>
アイスランド | アイルランド | アルバニア |
アンドラ | イタリア | ウクライナ |
イギリス | エストニア | オーストリア |
オランダ | 北マケドニア | キプロス |
ギリシャ | クロアチア | コソボ |
サンマリノ | ジョージア | スイス |
スウェーデン | スペイン | スロバキア |
スロベニア | セルビア | チェコ |
デンマーク | ドイツ | ノルウェー |
バチカン | ハンガリー | フィンランド |
フランス | ブルガリア | ベルギー |
ポーランド | ボスニア・ヘルツェゴビナ | ポルトガル |
マルタ | モナコ | モンテネグロ |
ラトビア | リヒテンシュタイン | リトアニア |
ルーマニア | ルクセンブルク |
ロシア、ベラルーシなどのCIS諸国は外務省では欧州に区分されていますが、欧州の国が多くなりすぎてしまうため、地理上近いグループとして中東とまとめて次回ご紹介する事とします。
2. 1人あたりGDPの推移:為替レート換算値
まずは代表的な国々の1人あたりGDP(為替レート換算値)についての推移から見てみましょう。
図1が北米・欧州の国・地域について代表的な国々の1人あたりGDP(為替レート換算値)の推移です。
参考のために日本(青)も入れています。G7だけを見るとアメリカが圧倒的ですが、ルクセンブルク、アイルランド、スイス、ノルウェーなどアメリカを大きく上回る国もある事がわかります。
また、ギリシャ、イタリア、スペインなど南欧諸国はリーマンショック後変調していて、ポーランドなど東欧諸国は少しずつ上昇傾向ですがまだ他の欧州諸国との差が大きい事がわかります。
近年では特にアイルランドが急激に上昇しているのが特徴的ですね。
3. 1人あたりGDPの国際比較:為替レート換算値
続いて1997年と2023年の国際比較をしてみましょう。まずは1997年からです。
図2が1997年の国際比較です。当時からルクセンブルク、スイス、ノルウェーの水準が高く、日本を上回っていた事がわかります。
西欧・北欧諸国の水準が高く、スペイン、ギリシャなどの南欧諸国が中程度、チェコ、ハンガリーなど東欧諸国が低い水準という形で、大きく3つのグループに分かれているように見受けられます。
図3が2023年の国際比較です。ドイツ、イギリス、フランスがやや順位を落としていますが、アメリカは5位のままです。
デンマークの代わりに、アイルランドの水準がかなり高くなっているのが特徴的です。
西欧・北欧、南欧、東欧という3段階の境界があいまいになり、東欧諸国の水準が大きく上昇している様子が窺えます。
この地域には日本の水準を超える国・地域が20も存在する事になります。
4. 1人あたりGDPの推移:購買力平価換算値
続いて、購買力平価換算値についてもご紹介していきましょう。
購買力平価は空間的な価格デフレータと呼ばれていて、ドルで換算する場合は物価水準をアメリカに合わせて、数量的な比較をすることになります。まずは、代表的な国・地域の推移からです。
図4が購買力平価換算値による各国の推移です。購買力平価換算だと、ルクセンブルクの水準がひと際高い事がわかりますね。
近年のアイルランドの伸びも急激です。一方で、スイスやノルウェーなどは、為替レート換算値よりもアメリカに近い水準になっています。
これらの物価水準の高い国は、購買力平価換算する事によってやや割り引かれた水準となります。
新興国が割増しで計算されるのとは逆ですね。ポーランドやギリシャなどは、為替レート換算値よりも大分高い水準となっています。
2023年にはポーランド、スペインは日本とかなり近い数値です。
5. 1人あたりGDPの国際比較:購買力平価換算値
続いて特定の年での国際比較をしてみましょう。まずは1997年です。
図5が1997年の購買力平価換算値の国際比較です。当時からルクセンブルクは突出した水準になっていましたが、為替レート換算値と概ね順位は変わりません。
南欧・東欧諸国の水準が為替レート換算値よりも高く評価されていて、階段状ではなくなだらかな分布となっています。
図6が2023年の国際比較です。各国で水準が大幅に上昇している事がわかります。スロベニア、スペイン、チェコ、リトアニアなどは日本ともかなり近い水準ですね。
日本を超える国・地域は21か国となります。アメリカは順位を落としながらも5番目に高い水準です。
6. 北米・欧州の1人あたりGDPの特徴
今回は、北米・欧州の1人あたりGDPについてご紹介しました。
ルクセンブルク、スイス、ノルウェーなどの西欧・北欧諸国は総じて経済水準が高いようです。
南欧諸国はリーマンショック以降変調していますが、近年は上昇傾向に転じている国も多いようです。
東欧諸国は、1990年代はかなり低い水準でしたが、順調に上昇傾向が続いています。
いくつかの国では、既に日本と近い水準にまで達しています。同じ欧州地域内でも経済格差が大きい事が見て取れますが、全体的に成長しながら格差も縮小しているような印象ですね。
皆さんはどのように考えますか?
編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2024年11月9日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。