兵庫県知事選が残した課題:マスコミのありかたにも一石投じる

斎藤元彦氏が兵庫県知事選を制しました。これを書いている時点では得票数が発表されていませんが、次点と相当の差がついたような気もします。不思議なのは朝日、産経、毎日が午後8時から8時半ごろに「当確」を出したのに対してNHKが23時46分、日経が23時11分となっています。当確を出すのに3時間もずれるのは異例中の異例だとも言えます。なぜ、一部メディアは当確を素直に発表できなかったのでしょうか?

斎藤元彦氏インスタグラムよ

私はこのブログでは何度か兵庫県自治問題を取り上げさせていただきました。まだ問題が発覚した初期の7月13日に「…今回の元県民局長の自殺と片山副知事の辞任と斎藤知事の辞任拒否は因子が複雑でパズルが解けなくなりそうです。久々に聞いた知事の「嘘八百」は失言です。ただ、元県民局長が真に問題追及するなら百条委員会を前に自殺する理由は見当たらないはずです。」と述べています。

その後のブログでは世論に押されるような形で斎藤氏はなぜ辞めないのだろう、という趣旨のことを何度か書かせていただきました。ただ、すっとスッキリしなかったのは県民局長の自殺と斎藤氏との因果関係、また百条委員会が結果ありきのつるし上げ委員会で見るに堪えず、委員会側が質問を遮り、「〇〇ですよね」としきりに誘導する尋問形式もしばし見受けられた点において異様な様相だったと思います。

今回の選挙の際に立花孝志氏の話を含め、「あれっ?」という話が聞こえてくるにあたり、その信憑性も含め、自分自身、さっぱりわからなくなったのが正直、本音です。私が日頃、一次情報を判断せよ、と言っていましたが、選挙前のトーンがほぼ統一された色合いに染まっていた中で兵庫県と何ら縁がなく、一次情報が入ってくるわけでもない中、すっかり乗せられてしまいました。反省です。

斎藤氏は今回、民意をバックに再選を果たしたわけですが、私から見れば勝負はこれから始まるとみています。斎藤氏と県議会、及び県職員の信頼関係はほぼ壊れており、県内の29の市長会うち22市長が稲村氏を推すなど八方ふさがりの中での再選は本人にとって雪辱戦と言えるでしょう。ただ、選挙に勝利するのは単なるスタート地点であり、ここからすべてを正常化させるには相当の力技が必要になってくると思います。

まず、議会は解散選挙すべきかもしれません。県庁人事も大幅刷新が必要でしょう。理由は民意を反映させるためには抵抗勢力となるものを取り払うか、賛同を求めなくてはならないからです。そして判断は県民がしっかり行うべきであり、その情報源はオールドメディアでは賄えなかったことが大きな意味合いとなるでしょう。

ところで一般ニュースでは絶対に取り上げない内容の一つに同和問題があります。日本全国の中で同和問題が多いところは関西に集中しており、京都、大阪、岡山あたりは非常に悩ましい状況にありました。その3県に悩みがあるならその間の兵庫県にない方がおかしいわけで当然、何らかの潜在的事実はあるものと推定しています。

そして同和問題と役所の関係が結構あるのが実態です。同和の方が一般企業になかなか雇用されなかったことで雇用機会を与えるために役所が採用したという背景です。また役所内で一般職員と同和出身者の間で見えない差別化が起きていたことは大阪府の例をとってもわかるでしょう。そんな同和問題が未だにあるのか、と言われればまだ全国的に残っていると推測しています。大阪などは浄化が進んだと思いますが、京都は地理的問題から悩ましいはずです。

もしも県の職員に裏表があるならその点も一応、レビューした方がよいと思いますが、非常にタッチーな問題故にこれこそ本当の話がどこにあるのかわからないようなことになるかもしれません。

もう一つは役所職員の立ち位置です。役所の職員は基本的に同じ職場に何十年と勤めているのです。よく知っている半面、保守的になり、斎藤知事のような改革勢力を極力嫌います。そのため、前例主義がはびこり、地方行政は全く刷新されないのが世の常だと思います。東京都あたりだと様々な外的刺激が多く、国内外とのやり取りも多いため役所の職員が自然と開花させられやすいのですが、地方の県だとそれはなかなか進まないのが現状でしょう。それこそ戦後ずっと同じスタンスといっても過言ではないのです。

今回の選挙の結果は兵庫県の指導者層である県政党団体、議会、県庁、市長会が押した候補者が負けたわけですが、彼らが素直に平伏するとは微塵だに思えません。嫌がらせもするでしょう。県政の運営も滞ることもあるかもしれません。その中でまず第一歩目は県民は「結局、あの騒動は何だったのか、真実をわかりやすく説明せよ」ということだと思います。もちろん、県外人の私も知りたいです。

その上で斎藤氏がどれだけの手腕をもって県行政を正常化させるか、期待してみましょう。

またマスコミのありかたにも一石投じました。選挙もSNSの影響力がこれほどまでに浸透するなら国政を含め、ネット投票も含めた抜本改革は考えるべきでしょう。また出口調査がいかに不正確なものかも見せつけました。これはアメリカの大統領選でもお墨付きでした。

それにしても先の国政選挙で国民民主党の玉木氏がヒーローになったように斎藤氏もすごい民意に押されました。比較的年齢層が若い人からの地響きのような勢いが生まれ、選挙は高齢者が支配しやすいという流れも破りました。あらゆる意味で型破りの社会になって来たようです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年11月18日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。