「ITが苦手な人」への社会的配慮は要らない

黒坂岳央です。

日本がデジタル化で他国に大きく遅れを取り、いつまでもアナログ国家をやっている。これはパンデミック時にはんこを押すために出社したり、お年寄りにあわせてアナログ対応をしているという点に現れている。また、最近では生成AIの利用率は他国に比べて突出して低く、詐欺に騙される人も非常に多い。

これらの根本的原因は「ITが苦手」ということに起因する。大きな反発もありそうだが、個人的には苦手という人への社会的配慮を止めてしまい、デジタル対応できない人は損をするようにするようにすべきだと思っている。具体的にいえば、アナログ対応はすべて有料化してしまう。

そこまでしないとデジタル化は実現できない。論理的な根拠を述べたい。

SIphotography/iStock

「できない」でなく「やりたくない」

「ITが苦手」という人は多くの場合、「能力が不足しているためにやりたいができない」のではなく「面倒くさいからやりたくない」だけである。

特にお年寄りは「パソコンは苦手で」「自分が機械を触ると壊れる」といった人が多いように感じる。少し教えても「わからない、わからない」とバリアを貼るようにいい続ける。

だが、パソコンは5歳の子供でもやり方を教えれば操作を覚えるし、定年退職後から勉強をしてゲームプログラマーになった人などいくらでもいる。むしろ、アナログ活動と比べて、間違った時にリアルタイムにその場でエラーと原因を表示してくれるパソコンの方が遥かに優しいといえる。

CUI時代のマシンと違って、今は音声入力やAIサポートも充実しており、パソコンを使う敷居は驚くほど低い。スマホが使える人は全員がパソコンも確実に使う能力を有している。つまり、「パソコンが苦手」という人は本当はできる能力があるのにやらないのだ。

一般の人に広くPCが普及したWindows95は今から30年前のこと、現在のお年寄りも当時は40代くらいだった。現在、「自分は一切、PCを触れない」といっている人は30年間もの期間、「これからITが中心の世界になる」とメディアや周囲の盛り上がりに包まれながら、それでも頑なに何も理解するための行動をしなかったというだけである。

70代でも80代でも必要なら今すぐ訓練をすれば、半年後には使いこなせるようになっているはずだ。筆者は脳科学の専門家ではないが、おそらく脳トレで小学生向けの計算ドリルなどを頑張るより、パソコン教室に通ってPCを使う方が遥かに脳にポジティブな影響を与えると考える。

アナログ対応は全員が損をする

会社でも役所でも、一人でもITが苦手な人間が入るとそこにあわせた設計になりがちだ。本来はデジタルで効率的に処理をしたいのに、紙の運用になったりして全員が非効率性を我慢することになる。

PCが普及しだした平成初期の「デジタル化までの暫定処理」というならまだわかるが、国民のほぼ全員がスマホを持つ令和にやることではない。できない人はしっかり損をすればいい。厳しく聞こえるが冷静に考えれば当たり前の話だ。通常、会社の仕事や納税や役所の手続きで何ら自助努力をせず「わからないのでできません」といえば、置いていかれて損をするのが普通だ。それなのになぜかITだけが免罪符になっている。これは明らかにおかしい。

人間は得をしなくても気にならないが、損をするのは許容できない生き物なので、PCが使えないと損をするとなれば「苦手」といって逃げまわるお年寄りも努力して社会にキャッチアップするようになる。

厳しい意見に聞こえるが、結果としてこの荒療治は何より本人のためになる。ITに強くなれば必要な情報を自らの意思で獲得する力になるし、詐欺に騙されることも減る。脳へのいい刺激になり、引退後も社会とのつながりを保ち孤立を防止できるだろう。実は使えない本人が一番損をしていることに気づいていないのだ。

デジタルデバイド、という言葉が2000年代に流行ったが本来の意味は「ITインフラが整備されていないことで生じる格差」というものだったはずだ。日本におけるデジタルデバイドは「やりたくない」と駄々をこねて周囲にアナログ対応をさせているだけである。もうできない人に合わせて非効率な社会設計を維持する余裕はないはずだ。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。