減税だけする日本、減税と歳出削減をするアメリカ

玉木代表・トランプ氏インスタグラムより

今回の衆議院選挙で大躍進のきっかけとなった国民民主党の「103万円の壁」。与党がこの提案に対して前向きに検討する方向になるようです。

減税によって手取りを増やし、消費を回復させ、税収増につなげるシナリオのようですが、そんなにうまくいくものでしょうか。

減税による税収不足が既に指摘されており、将来の増税は不可避です。また地方自治体の財政不足から公共サービスの低下も懸念されています。国の財政赤字は既に恒常化し債務残高は毎年増える一方ですから、今回の減税だけで終わると思う人はほとんどいないはずです。

とすれば、減税は将来の増税とセットになりますから、減税したからといってそれを消費しようというマインドにはなりません。

減税だけではなく、無駄な歳出カットをセットにして初めて消費しようというマインドが醸成されるのではないでしょうか。

日本でも財政の無駄に対する批判はありますが、抜本的な改革には既得権益者の反対もあって簡単に実現する気配はありません。

私が税金の無駄の筆頭と考えるのがふるさと納税です。ふるさとの応援というそもそもの趣旨を逸脱し、今や自治体の返礼品競争となっています。

ふるさと納税の事務処理コスト、民間の専用サイトへの自治体からの支払い、返礼品とその送付コストなどがすべて税の無駄遣いとなっています。

誰もが無駄だとわかっていても、ふるさと納税利用者が既得権益廃止の声を上げることはありません。

対照的なのがアメリカです。

トランプ次期大統領は減税だけではなく、テスラ創業者のイーロン・マスク氏を新たに立ち上げる「政府効率化省(通称DOGE)」のトップに起用し、大幅な歳出削減に乗り出すと発表しました。

実業界で実績のある経営者を抜擢して、外部からの聖域なきコストカットが始まる可能性が高いと思います。

批判も多いトランプ氏ですが、大胆な人事を実行し過激な政策によって本気でアメリカを偉大な国にするために邁進していくようです。

今までの延長で変わる気配のない日本と、前例にとらわれずやるべきことを大胆に進めようとするアメリカ。2つの国の格差はさらに広がることになりそうです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年11月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。