がんに立ち向かうには、どうすればいいでしょうか? 消化器内科・腫瘍内科医師の押川勝太郎さんに、がん治療における患者と家族のあり方を伺いました。
『押川先生、「抗がん剤は危ない」って本当ですか?』(押川勝太郎 著 光文社新書)
[本書の評価]★★★★★(90点)
【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
悩みを抱え込まないこと
今回は、消化器内科・腫瘍内科医師の押川勝太郎さんに、がん治療における患者と家族のあり方について伺います。
押川さんによると、がん告知を受けた方々の多くは「否定→怒り→落胆→回復」の心理状態をたどるといいます。がんは死の告知ではありませんが、葛藤する人が多いということです。
事実、筆者の周りにも、怪しげな民間療法に手を出して不幸な結果になってしまう人もいました。がんを正しく知り、正しく恐れ、限界に制限をかけないことが必要なのだと理解しました。
「しかし、中には『落胆』したまま『回復』できない方もいらっしゃいます。『落胆』と『回復』は言い換えれば、『絶望』と『希望』です。同じ病に苦しむ方々の心理状態が、なぜこのように二極化してしまうのでしょうか。その原因は、もともとの性格にあります」(押川さん)
「生来、ポジティブな性格の方は立ち直りやすいですが、1人で悩みを抱えがちな方はふさぎ込み、生きる気力を失ってしまうのです。悩み抜いた結果、抑うつ状態に移行するケースも珍しくありません」(同)
患者の味方はどこにいる?
押川さんは、患者さんに次のように伝えるそうです。
「自分一人ではどうにもならないときは、仲間のところに行きましょう。孤独に悩んでいては、どんどん世界が狭まってしまいます。そもそも、個人の発想の範囲はかなり狭いものです。それでは、いつまでたっても現状から抜け出すことはできないでしょう。そんなときは、外の世界の人たちに会うのが一番です」(押川さん)
「心強い味方は、がんの苦しみを分かち合える存在。『がんサバイバー』の方々です。経験者である彼らは『先輩』といえます。過去には、絶望の淵に立たされていた方も少なくありません。健康な家族や友人には理解してもらえない悩みも、彼らは深く共感し、よき相談相手となってくれるでしょう」(同)
1人で悩みを抱え込んでしまっている方は、がん患者会やがんサロンを訪れてみるといいと押川さんは言います。きっと、心優しいがんサバイバーの方々があなたを迎えてくれるはず。生きる気力を取り戻させてくれるでしょう。
(コラムニスト、著述家 尾藤克之)
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