【外国人の脱退一時金と生活保護】令和6年12月10日行橋市議会の質疑答弁:外国人の人権を尊重した生活保護の縮小に向けて

外国人生活保護の縮小へ

令和6年12月10日行橋市議会で外国人の脱退一時金と生活保護の質疑

令和6年12月10日、福岡県行橋市議会にて小坪慎也市議から外国人の脱退一時金と生活保護に関して質疑がありました。動画の25分過ぎから。

「外国人の脱退一時金問題」を端的におさらいすると、外国人が厚生年金・国民年金の脱退一時金の支給を受けた後に日本国に定着して永住資格を有する外国人や元外国人の帰化日本人として定年を迎えた場合、無年金乃至は低年金状態となり、生活保護を受給せざるを得なくなるケースがあり、このままでは今後膨大な数になると予想される、という問題です。そして、それは地方自治体の財政上の問題であるということになります。

週刊新潮特集に繋がった代表質問・社会保障審議会、全国市長会の要望

小坪市議 まずは今までの流れを問います。昨年9月の当市の一般質問を端緒としまして、結果として週刊新潮特集記事がでました。本制度の問題点の概要並びに自由民主党からの代表質問、また、厚生労働省社会保障審議会、さらには厚生労働大臣に対する全国市長会からの要望等、これ直接会ってですね、それがどのようなものであったのか全体の流れで答弁お願いします。

市民部長 議員の質問にお答えいたします。まず、本年7月に発行された週刊誌におきまして、脱退一時金に関する記事が掲載をされており、その記事に関連して市区町村での外国人の転入出事務について9月定例会で答弁をしたところでございます。

次に、自由民主党からの代表質問につきましては、令和5年10月24日開催の第212回国会において、稲田朋美幹事長代理の質問に対して、武見敬三厚生労働大臣より「次期年金制度改革改正に向けて必要な検討をおこなってまいります」との答弁がされております。

また、社会保障審議会年金部会においても、本年3月13日に開催をされた際に脱退一時金について議題とされ、継続して検討することとされております。

全国市長会からの要望につきましては、本年6月および9月定例会にて、市長公室長が答弁をされておりますが、6月7日に厚生労働大臣に対して、「公的年金の脱退一時金制度の影響により、老齢期に十分な年金額が受給できなくなる可能性がある」などの問題提起がされ、外国人労働者が増加している状況が自治体の財政負担に影響することについて、社会保障の分野における外国人労働者の負担のあり方などを含めて総合的な対策を講じるように国に対して正式に要請をしたものとなっております。

※「いっさくねん9月の当市の一般質問」と発言している部分は、実際は昨年の令和5年9月の一般質問です。

週刊新潮特集に繋がった代表質問・社会保障審議会、全国市長会の要望などについては、既にここでもまとめています。

 

脱退一時金支給を受けた外国人の約4分の1が事前の再入国許可の実態

小坪市議 帰国すれば納め損になると特例的な対応とされていた年金脱退一時金の支給を受けた外国人のうち、日本への再入国許可を事前に得ていた者が4人に1人とは事実か?

市民部長 いまご質問頂きました点につきましては議員より資料も配布されておりますが、本年11月15日に第20回社会保障審議会年金部会が開催されております。この会議は、大臣の諮問に応じて調査審議する会議でありますが、11月15日に開催された際の資料がホームページで公開されておりますので、その資料に基づいてお答えいたします。

令和4年度脱退一時金受給の支給決定者は94,266件であり、そのうち再入国許可を得ていた者は22,803件で、その割合は全体の24.19%と記載をされており、議員ご指摘の通り、4人に1人が再入国許可を得ていたものとなっております。

年金脱退一時金の支給を受けた外国人の4分の1が事前の再入国許可を得ていたという実態が今年11月の厚労省社会保障審議会年金部会で明らかにされました。

脱退一時金というのは支払った年金保険料の払い戻しであり、本来は外国人が帰国したら納め損になってしまうから用意された制度です。

支給を受けたら加入期間がリセットされてしまうものですから、再入国(おそらく就労することが予定されている)の場合でも脱退一時金の支給を受けている者がこれだけの数存在していることがオフィシャルの数字として出てきたというのは、非常にショッキングな話でした。

こうした実態を受けて、厚労省からは「再入国許可付きで出国した外国人には、有効期間内は脱退一時金は支給しない」という見直しの方向性が示されたばかりです。

永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者・定住者・特別永住者・入管法上の認定者が約11.5%

小坪市議 4人に1人の再入国許可を受けて脱退一時金を受給した者のうち、生活保護適用になる在留資格の外国人の割合はどのくらいになりますか?

福祉部長 お答えいたします。生活保護に該当する在留資格といたしましては、「永住者」、「日本人の配偶者」、「永住者の配偶者」、「定住者」、「特別永住者」、それとちょっとこの資料に載ってないんですが、入管法上の認定があるということでありまして、令和4年度の脱退一時金受給者のうち、再入国許可を得て出国した方で、生活保護の該当となる在留資格の構成割合としては、先ほど市民部長が説明しました第20回社会保障審議会年金部会の資料2によりますと、約11.5%となっております。

外国人への生活保護は法律ではなく行政措置として行われていますが、全部の在留資格の者に対して行っているのではなく、「永住者」、「日本人の配偶者」、「永住者の配偶者」、「定住者」、「特別永住者」の資格の者に対して行われています。

その在留資格に該当する者が再入国許可を受けて脱退一時金を受給した者らの割合を上掲の表の数字通りに合算すると11.51%となり、この事が答弁されています。加えて、入管法上の認定に基づいて行っている例があるということも示されました。

これは現時点の数字です。これが右肩上がりに増えていくことは統計からは確定事項と言えます。

外国人生活保護の制度と最高裁判例等については以下でまとめています。

行橋市で再入国外国人の4分の1が生活保護を受けたと仮定した費用の試算:266人で約2億円

行橋市における外国人在住者数は令和6年10月末時点で1,065人であり、これが同じ割合再入国許可を受けていたと仮定し、また、その全員が生活保護を受けたと仮定した場合の年間費用についても質疑があったため答弁がありました。

福祉部長答弁 生活保護費は年齢や世帯人数で最低生活費が異なりますが、年金受給権がないことから、65歳時に収入がなくなるため、全員が65歳で単身世帯ということで仮定し試算をいたしますと、現在の65歳の一人当たりの年間生活保護費は生活扶助や医療扶助を合わせると約300万円となっておりますので、年間300万円として計算をいたします。先ほどの在留外国人の4分の1の266人が生活保護になったと仮定すると、7億9800万円になります。生活保護費の負担割合は国と市で3:1であるため、市の負担は1億9950万円となるところでございます。

生活保護費は自治体によって物価や気候等が異なるため違いがありますが、行橋市では266人で約2億円の負担が生じるという試算が示されています。

外国人は地域偏在するものであり、さらに生活保護を受けるような外国人の偏在もあることから、地方自治体においては、国全体の再入国外国人の脱退一時金受給者の数の見た目以上に、地方財政に対するインパクトは大きなものになります。

複数回受給者が再入国するまでに半年以内の割合が約半数という重要資料

市民部長 いま議員がご紹介されたこの資料も11月15日開催社会保障審議会年金部会における参考資料として添付をされております。この資料によりますと、「複数回受給者に係る資格喪失をしてから再度厚生年金保険に加入するまでの期間」が0~6ヶ月とする割合は、49.5%となっており、つきましては議員がご指摘のとおり約半数というふうになっております。

このグラフは資料の最下部にあるもの11月15日の審議会では説明すらされずに触れられることがありませんでしたが、よくよく見てみると味わい深いものだと思います。

おそらく公式に実態を表すものとして示すには不十分な把握・計算・数字となってしまうものが含まれているからではないかと予想していますが。

複数回の脱退一時金受給者というのは、もう再度日本で就労する気満々じゃないかと。そういう資料であると言えます。

こうした実態を受けて、年金部会事務局からは、原則として単純出国した場合のみ脱退一時金を支給することとし、再入国許可付で出国した者には当該許可の有効期限内は脱退一時金は支給しないこととするという方針が示され、委員も議事の中では了承しています。

外国人生活保護の縮小に向けて:議論の土台となるデータ・数字が揃い始めた

再入国許可を得た外国人が脱退一時金の支給を受けた割合だとか脱退一時金を受給した者の在留資格別の割合だとか、そういうオフィシャルの数字は、この話を進めていた中で初めて出てきたものです。この話をする中で集計し始めたデータもあります。そのきっかけは行橋市の行政職員がe-statで逆引きでまとめ上げた数字から出発しています。

これで、現在は法律に基づかない、本来は特別永住者向けを想定していた外国人生活保護について、本来の議論ができる土台が揃い始めたと言えます。

  • 在留資格別の生活保護受給者数
    特に定住者や右肩上がりの増加の永住者など、本来の措置制度が中心的な対象としていない者の数
  • 永住者や定住者・脱退一時金受給者の日本国籍取得者数と生活保護受給者数
    日本国籍の生活保護受給者数にどれだけこれが紛れているのか

今後はこういった数字も含め、上掲の厚労省の参考資料の不明な点も明らかにすることで、外国人生活保護の予備群の数とその将来予測、それによる地方財政へのインパクトについての具体的な議論ができるようになると言えます。

外国人生活保護を減らすために、外国人の人権を尊重・保護する

敵対的な発想ではなく、このような考え方で動くことが重要で、今回のデータ顕出や制度改善はそれによって成し遂げられたのだという事実・現実を認識するところから始まるのだと思います。


編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。