売り上げや社員数にこだわる経営者の「センス」

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経営者や起業家の人たちと仕事について情報交換することがありますが、いつも違和感を感じるのは「利益」ではなく「売り上げ」にこだわる人が多いことです。

例えば「来期は売り上げ100億を目指します」というようなイキった話を聞くと「で、利益はいくらなの?」とツッコミを入れたくなります。

売り上げが多いという事は、それだけ商品やサービスの販売数量が多いということです。たくさん売れるのは悪い事はありませんが、数が増えれば増えるほど顧客とのトラブルやクレームのリスクが高まります。

同じ利益ならできるだけ少ない顧客に少ない量を販売した方が低リスクです。

また、売り上げが大きいのに、利益が小さいとという事は、提供している商品やサービスに対する付加価値が小さいことを意味します。

薄利多売といえば聞こえは良いですが、裏返せば競合他社が多くレッドオーシャンビジネスをしているから価格競争に巻き込まれているだけともいえます。

スタートアップ企業の将来の成長のための一時的な赤字は健全なのかもしれませんが、基本的に会社が低収益だったり赤字であるのは「悪」だと思っています。

最終的に企業が伸ばすべきは売り上げではなく利益です。

売り上げ100億円で経常利益1,000万円の会社より、売り上げ10億円で計上利益1億円の会社の方が健全な経営。これが私の考えです。

売り上げだけではなく、社員数についても同じです。

社員数が増えて会社の規模が大きくなったことを自慢する経営者を見ていると、リスク管理がわかっていないなと思ってしまいます。社員が増えれば人件費もオフィスの費用も増えていき利益を圧迫します。

社員の数が少なく、一人当たりの利益額が大きい方が筋肉質で低リスクの会社といえます。

しかも社員が増えれば増えるほど、確率的に不祥事を起こす社員が出てくるリスクが高まります。社員教育や人事管理をどこまで厳格にしたとしても、これは変わりません。社員がプライベートで不祥事を起こせば、いくら真面目に経営していても会社の信用はあっという間に失われます。

だから、大人数の社員を抱えマネジメントに疲弊しながら、売り上げ達成にこだわっている経営者を見ると、何かが間違っていると思ってしまうのです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2024年12月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。