先週は来春のJR各社のダイヤ改正や運賃、料金体系の見直しの報道が続きました。往復割引や連足乗車券の廃止などこれまで慣れ親しんできた鉄道の運賃体系の変更があり物議をかもしてきましたが、今回私が気になったのはJR九州に関する記事でした。
かつて日豊本線を走る特急列車は小倉から宮崎までを特急にちりん号が結んでいましたが、大分・宮崎県境周辺部分の乗車率が悪いため大分止まりとして、これを博多からの特急ソニック号に統合し、にちりん号は大分(または別府)から先、宮崎までの運転となりました。
その際、大分駅を挟んで移動する利用者を救済するため、ソニック号とにちりん号を乗り継いでも特急料金は通算するという特例を設けました。同じ特例は日豊本線特急と鹿児島本線特急を乗り継ぐ博多駅にもありますがこちらは継続するようです。
近年、さまざまなものが値上げされる中でJRも特急の全車指定席化や乗継割引の廃止など客単価が上がる方向で制度の改正を進めています。今回のルール改正もその中のひとつにすぎないと思えばいいのかもしれません。
一方、日豊本線に関しては、もうひとつこういう報道もされました。
この春から宮崎県内を走るすべての普通列車で車掌業務を廃止し、ワンマン運転を実施するとのことです。すでにJR九州管内では鹿児島などで車掌業務は行っておらず、これも合理化の一環なのかと思えばいいのかもしれませんがー
まだ記事にしていませんが先日、わたしは宮崎、鹿児島をJRに乗って旅してきました。宮崎県内の日豊本線はラッシュ時4両で走り、県都・宮崎を走る箇所では多くの乗客が乗っていました。主要な駅こそ有人駅ですが無人駅も目立ちます。運賃収受業務は運転士に委ねられますが、大量の乗客の運賃生産をしている余裕は運転士にはありません。無人駅から無人駅を移動する乗客は無賃乗車ができてしまいます。
鉄道を利用する乗客の多くは、学生や通勤客であり定期券を持っています。切符を買って鉄道を利用する乗客は一握りであり、その中で無賃乗車をしようとする輩はまたその一部。その一部の運賃をとりっぱぐれることによる損失よりも、合理化による経費の削減の方が大きなメリットになるのでワンマン化に踏み切るのでしょう。
でもそれは不公平ですし、公衆道徳の崩壊にもつながります。これを許すなら先に述べた大分駅での乗り継ぎ通算の特例も継続するべきです。一方の利用者に不利益を与えて利益をカバーし、一方の無賃乗車の利益を補填するべきではありません。
JR九州は警察と連携して2022年にこんなポスターを作成しました。今回私が旅した宮崎、鹿児島両県でもこのポスターを見ました。車内でも無賃乗車防止の啓発の自動案内が何度も流れます。
昔もキセル乗車は問題となっていて、そのようなポスターが掲出されていましたから、運賃をごまかそうとする輩は昔も今も一定程度いるんでしょうが、駅の無人化、列車のワンマン化の拡大化がこれを助長している気がします。実際この報道であげられている香椎線で明らかに無賃乗車の乗客が改札を抜ける姿を見かけました。
不正を働くには動機、機会、正当化がそろうと人間は不正を働く可能性が高まりますが、少なくとも今の体制は機会を作ってしまっています。啓発の一方で、一部の列車ではワンマンなのに無人駅ですべての車両の扉を開けて乗客を降ろし運賃収受の確認もしないので、運転士の運賃収受の意識もほかの鉄道会社に比べて足りないのではないかなという感想も持ちました。
運転士は定時発車の責任も持つので仕方ない部分もありますが、しっかり切符の確認をする会社のほうが一般的です。
今回は苦言の多い記事になってしまいました。苦しい経営環境にありながらも地域の足として路線を残そうと懸命に努力しているのは十分理解できます。鉄道に対する愛から発せられる苦言だとご理解ください。
この問題は九州に限ったことではありません。鉄道事業者はタダ乗りは見過ごさず、しっかり運賃を収受できるような体制を作りあげていってもらいたいと思います。それができていない分を特急料金通算の廃止など、他のところで取ろうとするのは筋が違うと思うのです。抜き打ちの検札実施、自動改札機の増設などできる限りの手を打っていただきたいものだと思います。
編集部より:この記事はトラベルライターのミヤコカエデ氏のnote 2024年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はミヤコカエデ氏のnoteをご覧ください。