公明と国民民主と維新の競う「朝三暮四」のバラマキ政策

昔の中国で猿回しが「ドングリを朝に3個、夕方に4個あげる」というと猿が怒ったので、「朝に4個、夕方に3個あげる」というと、猿は大喜びしました。このように目先の利益にとらわれて全体がみえないことを朝三暮四といい、実際の猿でも起こるようです。

物価高対策で必要なのは物価を下げること

ゆうべの私のX投稿に、クソリプが山のようについて驚いた。ほとんどは後半の「物価高対策として所得減税するのはおかしい」という批判への反論らしいが、何いってるのかわからない。

そもそも年率2.5%も物価が上がっているとき、所得税の基礎控除を増やして減税したら何が起こるのか。

  1. 手取り所得が増える
  2. 消費が増えて超過需要が増える
  3. 物価が上がってインフレが加速する

高校の教科書にもこれは書いてある。インフレ対策としてまずやるべきなのは物価を下げることであり、通常は金融引き締めによる消費の抑制である。公明党が補正予算で「住民税非課税世帯」(年金生活者)にばらまく給付金も、国民民主の基礎控除を上げる所得減税もインフレを加速するだけだ。

バイデン政権の「インフレ抑制法」と称する10年間で2兆ドルの財政支出が大インフレをもたらし、トランプ再選の原因となった。2022年にもトラス政権が財源なき大減税でポンドの暴落をまねき、退陣に追い込まれた。景気対策に財政を使うのは悪手だというのは世界の経済学者のコンセンサスである。

所得減税は「インフレ税」でキャンセルされてしまう

日本で現実に起こっているのは一時激しかった化石燃料の輸入価格上昇ではなく、食品価格の上昇である。特に10月は、コメの価格が58.9%も上がった。なんで所得減税がコメの値上がり対策になるのか。

TBSより

多くの人がコストプッシュ・インフレには減税が必要だという奇妙な信念をもっているようだが、そんな概念はマクロ経済学にはない。たとえば手元の斎藤誠ほか『マクロ経済学』の索引には「コストプッシュ・インフレーション」という言葉もない。

物価は超過需要の増加関数なので、需要の抑制か供給の増加が必要だ。コメの増産はすぐできないので、必要なのは消費の抑制であり、政府や国民民主のやる減税や財政バラマキは有害無益である。これは今までの政府のガソリン減税についても実証されている。

それでも減税や給付金がインフレ対策になると思っている人は、たぶん手取りが増えると生活が楽になると漠然と思っているのだろう。玉木さんも「インフレに勝つために必要な手取りの増加を実現する」というが、これは錯覚だ。

今回の与野党協議で国民が提示した案は、所得税と住民税の基礎控除を150万円も増やすもので、これが満額実現すると10兆円ぐらいの財政赤字となり、長期金利と物価が上がってインフレ税になる。これはほとんどの人に意識されないまま実質賃金を下げ、消費を減らすので、国民民主の減税はキャンセルされてしまう。

クソリプを飛ばしてくる匿名アカウントの気持ちはわかる。彼らはマクロ経済なんかに興味はなく、目の前にぶら下がった減税という人参がほしいだけだ。そういう朝三暮四の経済政策を続け、国民も企業も政府に頼ってきた結果が、今の日本経済の惨状である。

この点では大学無償化(授業料の税金化)で自公と握った維新も大同小異である。野党はこんな近視眼的なバラマキではなく、現役世代の立場に立った長期的な社会保障改革を提案すべきだ。