日本の家電はハイエンドモデルほど使いにくい

黒坂岳央です。

筆者はできるだけ日本企業、日本国内にお金を落として日本経済をまわしたいと考え、同じ商品があればできるだけ外資系ではなく日本企業から買うようにしている。旅行先も外資より日系を選び、通販もAmazonより楽天を使う。そして家電品もハイアールではなく、パナソニック、シャープ、日立のハイエンドモデルを買ってきた。

自分としてはできるだけ日本経済に貢献したい気持ちが非常に強いのに、「これでは別のメーカーの方が良かったかもしれない」と残念な気持ちになることが少なくない。

本稿はただただ文句を言いたいのではなく、日本の家電製品がユーザーニーズからズレているのでは?という問題提起と、ズレを是正しより支持を得られる地位を確立してほしいという願いを込めて書いている。

digitalgenetics/iStock

無駄機能、おせっかい機能は要らない

先日、長い間使っていたオーブンレンジが壊れたので別メーカーに買い替えた。2機種とも最も高いモデルを買い、先日購入したものは20万円近くのモデルである。もちろん、日本メーカー品だ。

早速使ってみたが、早くも初日で後悔をすることになった。無駄機能、おせっかい機能が多すぎで、最も使う「電子レンジ加熱」にたどり着くまでとにかく遠い。

ようやくレンジに到着しても、出力ワット数を細かく設定し、時間を調節する。しかも出力ワット数は使うたびにリセットされるので、毎回設定が必要になる。そして最後にスタートボタンを押しても、これがなかなか反応してくれず、3-4回押してようやくスタート。これを毎回しなければいけないと思うと後悔の念が押し寄せてくる。

正直、これなら独身時代に使っていたシンプルな低価格モデルの方がはるかに手軽で使いやすかった。そちらはドアを開けてつまみを回して閉じるだけで完璧に動作する。出力ワット数もあらかじめ固定にできる。使いたい時に数秒で動作する手軽さがあった。

そもそも、故障した電子レンジも「加熱しすぎ防止機能」で自動停止が頻発し、3秒温めたら緊急停止、これを繰り返して使えなくなったので手放した経緯がある。正直、よけいな多機能、おせっかい機能が使いにくくさせ、さらには故障の原因になっている。

こうしたものは電子レンジに限らない。冷蔵庫、電子辞書、ドラム式洗濯機、テレビなどあらゆる機器についていえる。値段が高い高性能をうたう商品ほど、逆にドンドン使いにくくなるのだ。UI(ユーザーインターフェース)が大きな問題なのだが、高機能を謳うならローエンドよりUIも優れていて然るべきと考えてしまう。

家電は未だにガラパゴス

筆者は家電メーカー内部の事は全くわからないのだが、色々ハイエンドモデルを使ってきて感じることは「まったくユーザー視点でない」ということである。

高機能家電は一生使わないであろう99%の機能を全面に押し出し、使用率99%の機能を見えにくく、そして使いにくくしている。開発者としてはせっかく苦労した開発し、搭載した高機能をずらりとスタートメニューに並べたい意図があるかもしれないが、ユーザーが求めているのはすべての機能をまんべんなく使いこなすインターフェースではないのは明らかだ。

オーブンレンジのユーザーが使うのは「電子レンジ加熱」であり、その機能が何度もボタンを押し続け、深くもぐり、毎回細かい設定をしないと使えないのは完全に致命的である。

それよりも、どんな角度からボタンを押しても反応してくれるとか、最小の労力で目的を達成できるようなインターフェースにしてもらいたいと感じる。ユーザーがよく使う機能を全面に出し、あくまで任意設定をすることでマニアックな機能を引っ張り出せる仕様の方が喜ばれるのではないだろうか。

その昔、日本のPCメーカーやガラケーを買って最初にやることは、絶対に使わない不要な多数のアプリをアンインストールすることだった。日本の家電は未だにその状態である。しかもPCや携帯と違ってアプリは絶対に削除できず、ユーザーはずっとこの使いづらさに耐えなければいけない。日本の家電が凋落したと言われるが、日本人からもそっぽを向かれてしまわないかが心配になってしまう。自分はこれからも買い続けたいのでぜひ家電メーカーには頑張ってほしいと思っている。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。