最近「#飯島健太郎裁判長に抗議します」というハッシュタグがたくさん流れてくる。これは12月18日に大阪高裁が滋賀医大の男子学生2名について、一審の有罪をくつがえす無罪判決を出したことについて、その裁判長を国の裁判官訴追委員会で訴追するよう求めるオンライン署名である。
これに10万人以上の署名が集まっているが、その趣旨ではこう書いている。
証拠として提出された現場映像での女性の、
「やめてください」「絶対だめ」「嫌だ」
といった明確な拒否の言葉があったにも関わらず、加害男性の暴力的な言動を「性的な行為の際に見られることもある卑猥な発言という範疇のもの」とし、被害女性もそれを理解しているが故に「拒否したとは言い切れない」と判断を下した。
これは事実誤認である。少なくとも1次情報を取材したマスコミの報道では、高裁判決で「やめてください」などの言葉を報じていない。この噂の発信源は次の弁護士の一連の投稿と思われるが、これは一審判決(大津地裁今年1月25日)の話である。
中心となった被告Cは二審でも有罪になり、最高裁に上告して棄却された。二審もCに対しては同意はなかったと認め、脅迫と判断した。つまり二審も「やめてください」などの言葉を拒否と認めたのだ。残りの2人が脅迫に直接かかわっていなかったから無罪としただけである。この点は他の弁護士も1審判決を読んで説明している。
いまフラワーデモなどで騒いでいるのは「やめてくださいが拒否ではないというのはおかしい」という話だが、これは誤解である。「卑猥な発言」というのは男の言葉についての判断であり、被害者の言葉を拒否ではないと判断したものではない。
いずれにせよ判決も読まないで、SNSの噂だけで裁判官の訴追を求めるのは常軌を逸しており、司法の独立を脅かす行動である。この署名運動は中止すべきだ。