「家族からの逃走」と粉末社会

要点まとめ

世界的な人口減少は急速な出生率低下を背景に進行しており、「結婚からの逃走」や「家族からの逃走」といった価値観の変化がこの傾向を加速させています。これにより、社会や経済、地政学的な構造が大きく変化し、高齢化社会への適応が急務となっています。特に労働市場の柔軟性を高め、生産性を向上させることが重要です。また、移民政策や社会的連携による対応が求められています。この転換期において、創意工夫と柔軟性をもって持続可能な未来を構築することが人類にとっての課題となっています。

Jacob Wackerhausen/iStock

国際関係論の雑誌でも「人口減少」特集

近着のForeign Affairs Report (No.12)で、「出生率が急激に低下し、ますます多くの社会が、いつまで続くかわからない、広範な人口減少時代へ向かっている。……(中略)その先にあるのは、高齢化し、より小さくなった社会で構成される世界」(エバースタット、2024:6)という指摘が見られた。

この内容は文字通り「少子化する高齢社会」(金子、2006)であるが、元来、国際関係論を専門としたこの雑誌でさえも、2024年末の巻頭論文にこのような「世界的な人口減少」が取り上げられたことは、「世界的人口減少の時代」を痛感させるに十分であった注1)

「結婚からの逃走」と「家族からの逃走」

最後まで精読したところ、新しく使われた「結婚からの逃走」と「家族からの逃走」が有益な概念だと評価できる。

われわれの学界にはほぼ85年前のフロムの名著『自由からの逃走』(Escape from Freedom 1941)があるので、念のために翻訳ではなく、実際にForeign Affairs Report  2024 No.12で確認すると、「結婚からの逃走」の言語は‘flight from marriage’であり、「家族からの逃走」は‘flight from family’であった。

この両概念は人口減少、少子化、高齢化、小家族化など多くのテーマに応用できるであろう。ただし、英語辞典によると、flightはescapeとともにrun awayと同じ意味があるようなので、ここでは両者を互換的に使いたい注2)

すべてが「人の選択」の結果

現今の「人口減少」だけではなく、これまでの地球規模での「人口増大」、さらに50年前に遡及すると「人口爆発」などの社会的減少などもすべてが「人の選択」(choices made by people)であった(エバースタット、2024:6)。

人類の歴史では戦争、革命、反革命、時の権力による「血の粛清」、大地震、気象異変、ペストや新型コロナなど感染症などによる「人口減少」が繰り返されてきたが、今回はそうではなく「生殖力の欠乏」(dearth of procreative power)だとエバースタットは断言する(同上:7)。

「生殖力の欠乏」の原因

これをもたらした直接の原因は、「子どもを産み育てるという欲求の世界規模での低下」(同上:7)である。

これもまた「人の選択」の結果であるとすると、先進国や一部の途上国を問わず、あるいはグローバルノース(GN)とグローバルサウス(GS)との違いを超えて、世界の4分の1で「生殖力の欠乏」が広がり、残りの世界もこの「人の選択」を後追いしつつある理由は何であろうか。

最大公約数的な「出生率低下」の原因群

これまでの世界の人口学界では、「出生率低下」とその結果としての「人口減少」の最大公約数的な理解として、近代化・産業化の成果としての医療知識の普及、医療機器の性能向上、医療環境の好転、医療制度の充実、薬剤の品質向上などの相乗作用による乳幼児死亡率の低下、新しい避妊法の普及、教育を受ける人々の増加と識字率の向上、女性の労働力参加と地位の向上などが挙げられてきた。

これらの要因は日本を含む先進国やGNという範疇に属する国々ではおおむね納得できるものばかりだが、世界的にはこの要因からは逸脱する国も多々あるために、依然としてこれらが世界的規模での「出生率低下」の主要因とは認められてはいない。

「人間の主体的意志の働き」(volition of agency)が原因

そのためエバースタットは、あえて「出生率低下」の主要因として「人間の主体的意志の働き」を指摘した。そのうえで世界的にはこれは受け入れられてはいないから、若干の観察と推測を交えて、より具体的に「主体的意志の働き」による行為である「結婚からの逃走」(flight from marriage)という新概念を提示したのである。

これはかなり包括性に富んでいて、「晩婚化や非婚化」(people getting married at later ages or not at all)、「同棲や一時的な結びつきの広がり」(the spread of nonmarital cohabitation and temporary unions)、「一人で自活しながら暮らす世帯の増加」(the increase in homes in which one person lives independently)などを含んでいる。

世界的に拡散した自立性、自己実現、生活のしやすさ

「結婚からの逃走」という行為は、先進国と途上国および豊かな国と貧しい国の違いだけではなく、文化や価値システムの相違も超えて、世界中に拡散しているというのがエバースタットの立場である。しかも宗教の力すらも乗り越えて、現世代の「結婚からの逃走」は前世代や前前世代との差異を際立たせはじめたという(同上:12)。

その背景には、世界中の人々に求められ受け入れられた理念としての自立性(autonomy)、自己実現(self-actualization)、生活のしやすさ(convenience)がある。

ただしこれらが「結婚からの逃走」の主な説明要因ではなく、むしろエバースタットは、それらを阻害する「子どもはたくさんの喜びを与えるが、その反面でもつ本質的な生活の不自由性」(children, for their many joys, are quintessentially inconvenient)こそが「結婚からの逃走」の主因であると強調するに至った(同上:12)。

「子育ての持つ不自由性と不便性」が抽出された

要は、未婚者としての一人暮らしの人が持つ「自由性」と「利便性」が、子育て者に伴う「不自由性」と「不便性」とに対置されていて、後者を感じる女性(男性も)が世界的に増えてきた。その結果世界中の人々の多くが「自由性」と「利便性」を求めて最終的な「結婚からの逃走」という選択をしてきたことが、「世界的な人口減少」の原因と見なされたのである(同上:13)。

エバースタットは、このような「結婚からの逃走」現象の広がりを「模倣理論」(mimetic theory)で説明する注3)。なぜなら、模倣(imitation)が意思決定を促し、人間がもつ調整活動(human arrangements)における意志(volition)と社会的学習(social learning)を強調するからである(同上:13)。

模倣の対象が「結婚からの逃走」者ばかり

多くの人たちが子どもをできるだけ少数しか持たないために、身近には大家族が乏しくなった。すなわち世界的に見ても、模倣して学習する対象(大家族)が喪失したので、見えるのは少ない子どもをもつ男女ばかりになり、結果的に「結婚からの逃走」者の模倣が多くなってしまった。

すなわち「人口減少」の背景には、長期にわたる模倣による「出生率の低下」があり、たとえ80億人が健康で暮らし向きがよい世界(healthy and prosperous world)であっても、すべての家系があと一世代で消滅してしまうとエバースタットは究極の予言まで行っている(同上:13)。

高齢者ばかりの国から社会システムの消滅が見える

その断片はすでに日本でも全国の過疎地域で現実化しているが、細かくいえば出生率が低下して生まれる子どもが減り続ける一方で、高齢者増大がしばらくは続くようになる。

一世代が交代する30年間それが続いた後には、その「消滅」のタイミングは早ければ2053年とみて、遅くても2070年代から2080年代になるとエバースタットは予想する(同上:13)。

ただし50年先の時代でも、日本では毎年70万人前後の令和生まれの子どもたちの大半は健在であり、社会システムの中核を担っているはずである。だから「消滅」は大げさな表現だと思われるが、日本も含めて世界のあらゆる地域で、15歳から49歳までの集団が縮減してしまうのは事実である。

したがって先進国やGNだけではなく、ラテンアメリカ、インド、東南アジア、アフリカなどを含む全世界で、「消滅」の前に「高齢社会が常態化する」(同上:14)はあながち的外れではないと私も考える。

世界各国の政策立案者はその事態に備えていない

にもかかわらず、世界各国の政策立案者はその事態に備えていない。エバースタットの原文では‘Policymakers are not ready for the coming demographic order.’という一文が小見出しになっているが、日本語訳ではなぜか省略されている。

もちろん「政策立案者は到来が予想される人口秩序への用意をしていない」というこの内容は、日本を含めたかなりの国々では当てはまらない。なぜなら日本でも、「高齢社会対策大綱」や「子ども未来戦略」など「人口ビジョン」は繰り返し策定されてきたからである。

「老化の波」(wave of senescence)

「少子化する高齢社会」現象が顕著になってきた他の国々でも、いろいろと策定された「計画」が実行されているが、そのトレンドを阻止できないままで推移してきたというのが先進国の実状であろう。その結果、「老化の波」が世界中を覆いつくす(同上:15)。

ただし、ここで注目したいのは‘senescence’が使われている点である。これは周知の‘age wave’とは異なり、もっと深刻な老齢期を意味する。なぜなら、この‘wave of senescence’は「強い老化の波」を表現していて、それは植物では「完全な成熟後の枯死に至る老化期」(『リーダーズ英和辞典』研究社)を表わすからである。

「枯死に至る老化の波」(wave of senescence)の結果

エバースタットはその結果として、「慣れ親しんだ社会的・経済的流れを根底からひっくり返し、・・・・・・富裕国の経済成長を妨げ、社会保障制度を損い、繁栄の持続への期待が脅かされる」(同上:15)と予想した。

「枯死」するかどうかは別として、もはや不可逆的な「老化の波」が日本を始めとした先進国はもとより、「これから高齢化していく貧困国」(The poor, elderly countries of the future)にも押し寄せることは間違いないであろう。なぜなら、途上国はこれまでのような富裕な先進国からのODAなどの経済的支援が期待できなくなるからである。

高齢化の併進と認知症患者の増加

以上のエバースタットの認識を受け止めると、「少子化する高齢社会」ではともすれば「人口減少」が「子どもの減少」のみに関連付けられやすいが、富裕な先進国では高齢者の増大=認知症患者の増加=介護負担の重荷という等式にも配慮しておかないと、社会的対応がうまくいかないことは明瞭である。

家族でも政府でも単独では対応できない

エバースタットはその問題については、「世界で高齢化と人口の縮減が進むと、人的、社会的、経済的なコストが増大する」(同上:16)としたが、そのコスト負担を政府だけに任せても成功しないと考えている。かといって、もはや小さく縮んだ家族には負担能力は存在し得ない。

各国の現状を正視すれば、「家族はますます小さくなり、結婚する人は減り、子どもを持たぬ人々が高い比率を占める」(high levels of voluntary childlessness)ようになった(同上:16)。

北西ヨーロッパにおけるこの1世紀の「福祉国家」の経験から、「政府が家族の代役をする」(Governments may try to fill the breach)ことは計り知れない負担コストがかかってしまうことになる(同上:16)。そしてこれはピケティが多用する「社会国家」(État providence)でも同じである注4)

Magic formula

そこで世界の「少子化する高齢社会」の現状から、エバースタットは「魔法の処方箋」(magic formula)を求めた議論を展開する。それは俗にいう「魔法」(magic)とは区別された極めて社会科学的な手法によるものである。

そしてその前提には、高齢化や人口減少にもかかわらず向上してきた生活水準の高さと各種のイノベーションへの着目がある。

分野的には、公衆衛生、健康、教育、科学技術、社会と、経済などによる組合せによって、「20世紀の間に広まった繁栄と同じ処方箋で、人口減少に特徴づけられる21世紀の世界でもさらなる前進を確かなものにできる」(同上:17)という認識がそこには鮮明に認められる。

人材の潜在的資源(potential)を増大させる

現代の経済発展のエッセンスは人材資源の増大に加えて、都合のいいビジネス環境の持続的な拡大にあり、これは人類の持つ価値を引き出すことを手助けする政策と制度で構成されている(同上:17)。

これらの主張は時代に逆行するような印象を受ける。しかし20世紀と21世紀では、確かに人口増大と人口減少の違いが鮮明であるが、20世紀の経済成長や経済発展のやり方を学ぶことは意味があるであろう。

日本で15年間続いた高度成長期でも、経済成長率と合計特殊出生率の高さが並行していた事実がある。ただし21世紀の今日では経済成長を取り巻く条件がかなり異なるから、その配慮が必要になるのはいうまでもない。

何よりも「人口減少」への適応を優先する

このような「処方箋」を描くエバースタットは何よりも「人口減少社会への適応」を優先して、「国、企業、個人は責任と資金(responsibility and savings)を重視しなければならない」(同上:18)とした。

ただ社会学の観点からは、企業以外の諸集団・組織(アソシエーション)と個人だけではなく、縮小過程にある家族の働きもまた追加したくなる。

「労働市場の柔軟性」を高める

さらに具体的には、「労働市場の柔軟性」を高めるために、「参入障壁を減らし」(reducing barriers to entry)、「活力を増進するための配置転換や繰り返しの転職を歓迎し」(welcoming the job turnover and churn that boost dynamism)、年齢差別をなくすことがあげられたが、それらにもまして「徐々に縮減する労働力の生産性の増強が急務とされた」(the urgency of increasing the productivity of a dwindling labor force)。

「移民」政策は一般化できない

さらにエバースタットは、「人口減少社会の兆しの中でも、移民の重要性が現在以上に高まる」(In the shadow of depopulation, immigration will matter even more than it does today.)から、「現実的な移民戦略」として労働力、税収基盤、消費の強化を打ち出し、移民を出した国でも送金による利益の確保をあげている」とのべる(同上:18-19)。

しかしこの「移民」については、各国の事情が異なることに配慮しながら、各国政府の「大きな課題」(a major task)であり、最終的には「努力する価値がある」(one well worth the effort)と主張を和らげている。日本でも同じであろう。

地政学(geopolitics)からの展望

そして最終的にはForeign Affairs Reportらしく、地政学から世界的な「人口減少」がまとめられた。その理由は「人口減少」が「既存の世界秩序」を変化させ、緊張を高めるからである。

その素材にはアフリカ、インド、中国、ロシア、北朝鮮そしてアメリカが具体的に取りあげられた。このうちアフリカとインドでは2050年までくらいは「人口増大」が続くと予想されているが、いずれも「基本的スキル」(basic skills)を身につけていないことがネックになるとのべる(同上:19)。

これには「貧弱な教育」(poor education)、「就学率の低さ」(low enrollment)そして「初等・中等教育の質の低さ」(poor quality of the primary and secondary school)などが理由とされた(同上:19)。

そのために、「インドの台頭は人的資源の脆弱性ゆえに制約される」(同上:19)と予想した。要は人口の量ではなく、「人的資源の脆弱性」(human resource vulnerabilities)という質的な問題から、世界一の人口大国になったとしても、その影響力は中国を越えることはないという診断が出されている(同上:19)。

中国、ロシア、北朝鮮、イランの人口動態からの判断

エバースタットは、これまでアメリカ主導の国際秩序に挑戦してきた中国、ロシア、北朝鮮、イランでも、出生率の低下を筆頭にした理由に加えて、とりわけロシアでは公衆衛生と「知識の生産」(knowledge production)がうまくいかない問題状況にあるように見えることから、「流れが好転する兆しがない」と結論した(同上:20)。

また、中国でも出生率の低下と大家族主義の崩壊で、主要な社会的セーフティネットが壊れるため、「想像を絶する新たな社会保障負担」(unimagined new social welfare burdens)が必要となるから、その「国際的野望にも資金面での制約が生じる」とした(同上:20)。

アメリカの一人勝ち

では、アメリカはどうなのか。

エバースタットによれば、人種対立による国内の緊張はあるが、世界的にみても出生率が高く、2050年まではスキルのある移民による豊かな労働力にも恵まれて、高齢化の進行も緩やかなので、アメリカの優位が見込めるとした(同上:20-21)。

「二つの未知の要因」への対処

しかし、移民も含めて人口変動や人口減少には、「二つの未知の要因が特に際立っている」(同上:21)。

一つは、人口減少社会が新しい不慣れな環境にどのように迅速にそしてうまく適応していくか。もう一つは、長期化する人口減少が国民の意識(national will)や士気(morale)にどのような影響を与えるかである。

レジリエンスと社会的凝集性

そこでエバースタットは、「レジリエンスと社会的凝集性」(resilience and social cohesion)をもちだして、世界の先行きをまとめようとする。ただし、この両者は国によってかなり異なるために、いくつかの補助線として政府機関、企業部門、社会組織、個人的規範と行動などのしっかりした見直し(substantial reform)を提起する(同上:21)。

これらはいずれも重要なものであるが、社会学の観点からすれば、「個人的規範と行動」(personal norms and behavior)の見直しに触れざるをえない。なぜなら、「レジリエンス」でも「社会的凝集性」も最終的には国民の規範と行動に規定されるからである。

世界の「永続的硬直化」の危険性

エバースタットもこのような事情は理解しているようで、人口減少社会のなかで「悲観主義、不安感、見直しへの抵抗」(pessimism, anxiety, resistance to reform)による世界の「永続的硬直化」(perpetual sclerosis)ないしは「衰退」(decline)を危惧している。なぜなら、これらがそれぞれの国の「安全保障」へも影響するからである。

その理由は、「国の防衛は犠牲なしにはできない」(同上:21)からである。

「自立性、自己実現、個人的自由の探求」と「国防のための犠牲」の衝突

しかし冒頭にのべられた「自立性、自己実現、個人的自由の探求」(autonomy, self-actualization, and the quest for personal freedom)という「国民の規範と行動」は根強いものであるから、「国防のための犠牲」は極めて困難である。

なぜなら、豊かになった国ほど「自立性、自己実現、個人的自由の探求」のために「家族からの逃走」(flight from family)が鮮明になっているからである(同上:21)。

エバースタットは、家族をつくろうとしない現代人に「見知らぬ人のために究極の犠牲を求めるのは、いかに重たいことか」( how much more so a demand for the supreme sacrifice for people one has never even met?)とのべて、ロシアによるウクライナへの侵攻における「膨大な犠牲」触れている。

「若干の創意工夫と適応力を越えるもの」の発見競争

最終的には「人口減少時代」は「人類社会を根底から変える」(Depopulation will transform humanity profoundly)とまとめながら、もう一方では「人類は世界で最も創意に富み、適応力のある動物」(humans are the world’s most inventive, adaptable animal.)なので、なんとかなるとした(同上:22)。

しかしその場合でも現状における家族や子どもの出生がもたらす将来的な結果については、若干の創意工夫と適応力を越えるもの」(it will take more than a bit of inventiveness and adaptability)が必要だと締めくくった(同上:22)。

以上がエバースタット論文についての私の要約とコメントであるが、最終的には課題が冒頭の問題意識に重なった。なかでも「結婚からの逃走」と「家族からの逃走」という「個人的規範と行動」の問題について、今後は社会学の立場から追究したい。

注1)もっとも2025年元旦の『日本経済新聞』では、相変わらず「世界の人口は2025年に2000年比3割多い約82億人に達する。50年には25年比2割弱多い約96億人となり、100億人に迫る」とした(『日本経済新聞』2025年1月1日号)。ただし、この両者の予測は国際関係の研究者とマスコミの姿勢の差によるので、どちらが正しいとは言いがたいが、研究者としてはエバースタットの研究姿勢を評価したい。

注2)本文の引用は原則として日本語版からの訳文とするが、適宜に英語原文を添えて、読者の理解に供したい。なお、日本語訳の一部を分かりやすい表現に私が改めたところがある。

注3)「模倣」を「社会結合」の原理としたのはタルドである。なお、高田もまた「模倣の社会結合に対して有する意義は極めて深い」(高田、1949=1971=2003:54)として、「自己への伝達」はもとより「他者への伝播」までを「模倣」の機能とした。この「伝播」機能こそが「結婚からの逃走」についての最終的な社会学的理由であるといえる。

注4)ピケティの「福祉国家」(État providence)と「社会国家」(État social)については、金子(2025)で詳しく検討した。

【参照文献】

  • Eberstadt,N.,2024, “The Age of Depopulation Surviving a World Gone Gray” Foreign Affairs Report  No.12  (=2024 藤原ほか訳 「高齢化と人口減少の時代―人口減少と人類社会」Foreign Affairs Report  No.12):6-22.
  • Eberstadt,N.,2024, “The Age of Depopulation Surviving a World Gone Gray” Foreign Affairs Report  No.12  Published on October 10, 2024.
  • Fromm,1941=1950, Escape from Freedom, Rinehalt & Company,Inc.(=1965 日高六郎訳『自由からの逃走』東京創元社).
  • 金子勇,2006,『少子化する高齢社会』日本放送出版協会.
  • 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房.
  • 金子勇,2024,「『世代と人口』からの時代認識」金子勇編『世代と人口』ミネルヴァ書房:1-71.
  • 金子勇,2025,「社会資本主義の国家像-先行研究からの教訓」『西日本社会学会年報』No.23:1-13(近刊予定).
  • Piketty,T,2013, Le capital au XX1e  siècle, Édition du Seuil.(=2014 山形浩生ほか訳 『21世紀の資本』みすず書房).
  • 高田保馬,1949=1971=2003,『高田保馬社会学セレクション3 社会学概論』ミネルヴァ書房.