タワマン購入をおすすめしない人

黒坂岳央です。

引っ越しをするため、複数の物件の内覧へ行ってきた。タワマンに住んでいることを自慢する予定はなく、単に希望エリアで間取りが良かった物件に含まれていたので一戸建てとともに内覧をしてみた。

結論的にタワマンは筆者のような属性とはかなり相性が悪いと感じた。世間的にはリセールバリューや都心へのアクセス、セキュリティなどでメリットも取り上げられているタワマンについては、明確に「おすすめしない人」がいると感じたのでこの場を借りて言語化したい。

※誤解のないようにいっておくと、「タワマンなんて良くない」と言っているのではない。「このような人とは相性が悪い」という話である。

CHUNYIP WONG/iStock

子育て世帯のリモートワーカーには向かない

筆者は一日の半分の時間を仕事、もう半分を育児に使う生活を送っている。また、都心への通勤を必要としないリモートワーカーだ。このような属性の人は、駅チカでアクセス抜群のタワマンはおすすめしない。

まず駅チカは通勤など都心への移動には便利でも、リモートワーカーはそもそも都心への移動がない。そのため、駅チカという条件がそのままデメリットになる。どこの街でも駅前は交通量が多く、騒音、排ガスの問題がある。

また、子育て世帯は車移動が前提となるが、スーパーでの買い物や外食をするにも、お店の駐車場がなかったり、極端に狭かったり、さらに毎回ゲート式で精算が必須だったりと何かと不便な事が多い。

むしろ都心へのアクセスがあまり良くない代わりに、近隣に大きな公園がいくつもあり、スーパーには広々とした駐車場が用意されているようなエリアの方が自分のような属性の人にとっては実生活では遥かにメリットが大きいのだ。

タワマンはドア・トゥ・ドアの時間がかかる

そして40階以上の高層タワマンを内覧する際、時間を計測してみたのだが玄関に入るまでに想像以上の時間を要することに驚いてしまった。

立体駐車場で待たされ、長いエントランスを抜けて入口にはコンシェルジュ。エレベーターまで2つのセキュリティを抜け、エレベーターを待ち、降りたらドアのロックを外す。

これをスーパーに買物に出かけるたびにやると考えると、タワマンの他にあるメリットが全て吹き飛んでしまうと感じた。さらにスーパーで買い物をしたり、図書館で子供たちの本を借りて帰る時は両手にたくさんの荷物を抱えることになる。内覧した物件にはスーパーでよく見るカートが使えるようになっており、荷物の持ち運ぶ負担は減るがそれでも待ち時間は減らせない。

タワマンは実質的なドア・トゥ・ドアに想像以上に待ち時間を要する。これは今回、体験してはじめて実感できたことだ。

タワマン内覧後、最後に一戸建てを内覧したが「やっぱりこれこれ!」と胸がときめいてしまった。セキュリティはタワマンほどではないものの、自宅駐車場に車を停めてドアを開けたら即玄関、この抜群のアクセスは一戸建てでなければ決して手に入らない。

自分には通勤がないとはいえ、一日一回は買い物で外に出かける。毎回外に出るのに長時間の待ちが発生するのは、一戸建て生活に慣れてしまった者には看過できない問題なのだ。

コスパだけで判断できない

内覧をするにあたり「このエリアは人口流入も著しく、タワマンの価格もドンドン上がっています。うまくいけば売却時に利益が出ますのでコスパ抜群ですよ!」とアドバイスを受けた。

実際、内覧物件の最上階のペントハウスは2億円以上(四捨五入すると3億円)でお手頃価格とは言えないが、新築時はこれより遥かに安かったというので近年の価格高騰には驚かされる。

目一杯住宅ローンを使って手元のキャッシュを減らさないようにすれば、営業マンの言う通りすごくオトクな買い物になる可能性もある。実際、住民は全員が大幅な含み益が出ている状態だろう。

内覧前は「コスパがいいならタワマンもいいな」と思っていた。しかし、タワマンと相性が悪い自分がコスパのために我慢して相性の悪い物件に住むという、コスパの代わりに現在のQOLを下げる行為は、「本当に人生トータルでのコスパがいいのか?」と疑問を感じた。

これはお金より時間を優先したい自分の信条と真逆を行く買い物になる。現時点ではまだ結論を出せていないが、おそらくはまた新たなる一戸建てを選択することになりそうである。

何かと話題に登るタワマン、実際にはすべての人に心からおすすめできる買い物ではなく、自分のようにあまり一般的なライフスタイルではない人間には違う選択肢になるであろう可能性を提起しておきたい。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。