リクルートワークス研究所が発行しているワークスレポートというレポートがあります。
日本型雇用の課題として「新卒の時にコケると負の影響は長く残る」「男女間の賃金格差が高学歴ほど大きい」「自己啓発意識が異様に低い」等。不遇続きの氷河期世代、全然やる気が起きないというオジサン、虐げられてると憤ってるフェミの皆さん、敵は終身雇用制度ってことらしいです。 pic.twitter.com/XPvG7cpkBE
— jo shigeyuki (@joshigeyuki) December 30, 2024
その昨年末に出されたものがなかなか興味深い内容だったので紹介しておきましょう。特集テーマはずばり「日本型雇用の問題は何か」
日本企業は今まで人材に対して何を求めてきたのか。そしてこれからは何を目指すのか。新年の最初に相応しいテーマだと思いますね。
国際比較で日本型雇用の真の姿が明らかに
多くの人はなんとなく「日本は一回レールから外れてしまうと挽回しづらい国だな」と感じているんじゃないでしょうか。
他にも「男女間の処遇には歴然とした格差が存在する」ことや「やる気のない人、受け身の人が多い」ということにも薄々気づいている人は少なくないはず。
本レポートは様々な国際比較を通じて、それらの直感が単なる思い込みではなく、歴然とした事実として日本企業に存在していることが示されます。
※オリジナルはこちらからダウンロード可能です。
ではなぜそうなっているのか。筆者がメカニズムについて解説しておきましょう。まずは挽回しづらい国である理由について。
氷河期世代には実際に経験した人も多いでしょうが、日本では新卒一括採用が一般的なので、そこで就職のタイミングを逸してしまうと、もう新卒採用のエントリーは認められません。
「あ、既卒の方ですね、では中途採用の方にエントリーしてください」みたいに流されるはず。
といって中途採用で内定まで行けるかというとそれもまず無理です。だって正社員の職歴が無いから。
要は、ちゃんとした会社の正社員になりたかったら新卒のタイミングで内定を取るしかないということです。
それが出来なかったら中小企業の中でも万年人手不足の会社とか、正社員の弾除け用の有期雇用に行って糊口を凌ぐしかないということです。
「中小企業でも非正規でも職があるならいいだろう」という人もいるんでしょうが、その結果、わが日本国は世界的に見て「転職回数が多い人ほど年収が低くなる」という異様な社会となっています。
と書くと「日本は転職すると給料が下がるのか。何があってもしがみつくのが正解だ」と勘違いする人もいそうですが、これは新卒段階で終身雇用を前提とした会社に入れるか、そうでない会社、働き方に進むかの差ですね。
要は、新卒時にコケた影響はその後ずっと尾を引くことになるということです。
企業がそういう線引きをする理由ですが、単純に年功序列だからです。年功序列のモノサシだと、人は新卒で正社員になり、年齢とともに正社員の職歴を積んでいるべきなんですね。
それが出来ていない人間に、年功賃金は払えませんから。
本レポートでは男女間の賃金格差についても一章を使って取り上げています。
日本の男女間の賃金格差が大きいという話は割と有名ですね。でもそれは就いている仕事や業種が違うからだ、といった反論もあります。
本レポートでは業種や学歴などの諸条件をそろえると他国の場合は男女間の格差が縮小する一方、日本にはなお厳然とした格差が残ることが示されています。
これもやはり年功序列のモノサシが理由ですね。男性と同じ勤続年数であっても、ライフタイムイベントの多い女性の場合は同じ職歴が積めていない可能性があり、その差が昇給や昇進に長く影響するためです。
氷河期世代の中には「自分たちだけに苦労させやがって」と憤っている人は少なくないでしょう。また女性の中にも「日本企業は男が支配している」と怒っている人もいるはず。
でも、特定の組織や誰かを悪の黒幕認定するよりも、上記のような日本型雇用そのものが持っている構造的課題に目を向ける方がずっと生産的な気がしますね。
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以降、
・なぜ80年代までは上手くいっていたのか
・なぜ、表紙はブランクについてのグラフなのか
Q:「副業が順調なので独立するのはアリでしょうか?」
→A:「全然アリですが、意外な伏兵も……」
Q:「Z世代の新人が何考えているのか全く分かりません」
→A:「みんなで豊かになろう!という幻想が消えた後に残るのは……」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’sLabo」2025年1月9日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。