法政大学ハンマー問題 私見:日本へのバッシングが起きかねない事件

法政大学のクラスで仲間外れにされたと思った韓国の女子学生がクラスメートにハンマー攻撃をして多くのけが人を出した事件ですが、私はこの事件は慎重にことの成り行きを見ています。

法政大学多摩キャンパス 法政大学HPより

日本人同士のいじめが原因の事件と違い、外国人学生がその加害者である点からその動機が明らかになった場合、日本へのバッシングを含め想定以上のことが起きかねないからです。

いずれ動機は判明するでしょう。その際に仮に非日本人という差別意識が若干でもその理由に含まれているならそれは相手及び相手国が大きく盛り上がるきっかけを作ってしまいます。これは相手国の国民がどう捉えるか、あるいは初期のSNSなどへの反応次第なので予見しずらくそれ故に要注意だと思います。

例えば日本国内では中国人やベトナム人による犯罪事件がしばしば起きますが、もはや日常茶飯事的なところもあるし、同胞同士のトラブルが原因の場合も多く、小さな事件は話題になりません。警察庁の資料によると令和2年のデータですが、外国人の検挙数は11756人で国別でみるとベトナム36%、中国23%、フィリピン7%、ブラジル4%であとは非常に小さな数字です。ちなみに韓国は3%です。多くが窃盗であり、それが国際間の問題になることはあまりありません。

ところが人が絡む問題、それも事故ではなく故意である場合、人々の反応は急激に鋭くなるものです。

中国で昨年あった2つの事件、蘇州で日本人のスクールバスが襲われて日本人親子がけがをし、中国人女性がなくなった事件、もう一つが深圳で日本人学校に通う日本人児童が襲われ死亡した事件がありました。前者の事件は初公判が9日に行われましたが、日本のメディアには非公開です。(たしか日本国総領事は法廷傍聴をしていると理解しています。)後者の事件の初公判は1月24日でこちらの方のインパクトがより大きいと思います。ご記憶にあるかと思いますが、それらの事件後に多くの日本人駐在員の家族に動揺が走りました。帰国したり単身赴任などに切り替える措置をした方もいるやに聞いています。

どこの国においても外国人の居住の立場は弱々しく、裁く側のルール適用もより厳格になりやすと思います。外国人はお客様であり、居住については一種の仮免許のような立場故に少しでもルールに逸脱した場合は国外退去を命じ排除しやすくすることはあるでしょう。スリランカ人の名古屋入管での死亡事故は非常に大きな話題となりましたが、排除する側の論理と人権問題が真正面からぶつかったケースではなかったでしょうか?

では外国人が絡む事故や事件がどこの国でも同じような反応をするのか、というとかなり違うというのもまた事実です。例えば昨年バンクーバーで飲食店に勤める日本人の若者が帰宅途中に殺害されました。その後、その現場には数多くの花束が飾られ沈痛なムードもありましたが、ひと月もすればほぼ何もその痕跡はありません。

個人的には東アジア、つまり日中韓のセンシティブな国際関係を背景に憶測や話が増幅されたり、はたまた事実無根の噂話がSNSで一瞬にして情報展開されることでことを複雑にしやすいと思います。

ましや韓国は今、国がどういう状態がさっぱりわからず、私から見れば泥沼国家にしか見えません。そこにもってきて日本人にいじめられてハンマーを振り回す暴挙に出たというのは一部報道にあるように犯人の女子学生がかなり変わり者だったようなので、仮にいじめられていると妄想していただけだったとしても悶々とする韓国社会には刺激的であろうと察します。

もちろん、私は最悪のケースを思っているだけで問題の原因が究明され、関係者同士の理解が進めばそれがベストだと思います。ただ、往々にしてこの手の情報は途中で尻切れトンボになるのです。するとSNSなどで事件の事実だけを知っているけれどその後、情報がアップデートされず、感情論が先行することが時折おきます。私はそれが怖いのです。

一度出た噂話は火消してもとに戻すのは極めて難しいものです。そういう意味で今回の事件は小さな案件ですが、小さいからこそ私は慎重な対応が求められると思うのです。

あと、付け足しですが、大学側に学生カウンセリングの仕組みがどこまで浸透していたかもありそうです。カウンセリングにもいろいろありますが、留学生が抱える悩みを聞いてあげるような仕組みを持つ大学カウンセリングの仕組みはそう多くはないと思います。大学は留学生頼みとされるところも増えてきていますが、そのあたりの環境整備にも力を入れなくてはいけないでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年1月13日の記事より転載させていただきました。

会社経営者
ブルーツリーマネージメント社 社長 
カナダで不動産ビジネスをして25年、不動産や起業実務を踏まえた上で世界の中の日本を考え、書き綴っています。ブログは365日切れ目なく経済、マネー、社会、政治など様々なトピックをズバッと斬っています。分かりやすいブログを目指しています。