不幸の原因「他者比較」を確実にやめる方法

黒坂岳央です。

人間は十人十色、様々な価値観の人がいる。同じことを見聞きしてもポジティブに捉える人、ネガティブに捉える人にわかれる。だが、一つ確実に不幸になる方法がある。

それはイギリスの哲学者であり、ノーベル賞受賞者であるラッセルの「幸福論」にも答えを出されている。すなわち、他者比較であり、本書にも「他人と比較する習慣は、致命的な悪習慣だ」とある。

筆者も例外ではなく、若い頃は他者比較で苦しみ抜いていた時期があったが、心理学などで学びながら色々試した結果、今はそこから抜け出すことが出来た。その方法論をシェアしたい。

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嫉妬は認知の歪みがほとんど

ほぼすべての人間は程度の差こそあれ、必ずといっていいほど認知が歪んでいる。物事、出来事を自分の感覚で解釈し、「あるがままに理解」は不可能に近い。

誰もが「自分は事実を見ている」と思いこんでいるが、実際には「自分色の世界で歪んで見ている」のである。まずはこの事実を受け止めることがファーストステップだ。

「隣の芝生は青く見える」という言葉がある通り、他人は自分より優秀で有利に見えるように人は出来ている。だから「あの人ばっかりいい思いをしてズルい。それに引き換え自分は不遇だ」と良い結果を出した人を嫉妬して自分を責める。だが、これは強い認知の歪みが起きているのだ。

「自分が今身たり感じていることは、実際とは大きな乖離がある」としっかり理解しておくことで、他者比較を卒業する準備が整う。

嫉妬を尊敬に変える

他者比較から起きる嫉妬を卒業する方法の1つ目は、嫉妬を尊敬に変えるである。

嫉妬が起きやすい人、起きにくい人がいることをご存知だろうか?たとえば自分と同じ年代、同じ業界で働く人が年収100万円多い場合などは嫉妬が起きやすい。同僚やクラスメート相手に嫉妬は発生確率が高いのだ。

そして嫉妬を感じた時に、「悔しい!ズルい!」と「年収が自分より多い」という事実だけを見る浅い解釈で終わらせず、「なぜ高いのか?」という原因を冷静に分析するのだ。

その結果、自分が妬んでいる相手は転職を繰り返し、残業手当もない管理職の道を選んだことで年収アップしていたと判明。

「収入を増やすために差し出した努力」が見えたら「ああ、頑張っていたんだな」とか「自分は年収が低くても、責任が大きくない今のポジションがいい」と一気に嫉妬の熱は覚めるということが起きる。

また、英語の勉強をしていて「あの人はもうこんなに進んでいるのか。悔しい」と嫉妬の感情が湧いたら、具体的に努力量を見る。

自分は毎日30分勉強しているが、比較対象の相手は毎日3時間、土日は8時間やっていることが分かったとする。そうなれば「悔しい」という感情の代わりに「自分はもう少し努力する余地があるんじゃないか」とか「すごい努力だ、立派だ」と一気に相手はリスペクトの対象に変わる。

こうした事例からも分かる通り、単に「表面的な結果だけ見て嫉妬で終わる」という姿勢は、厳しい言い方をすると「物の見方が浅すぎる」と言える。「自分と同じ条件なのに、より好ましい結果を得ている」と強い認知の歪みが起きており、それが「ズルい」という嫉妬が生まれていたわけだ。

もっと冷静に、より分析的に相手を見ることで「自分と相手のギャップ」を把握し、そこから自分を成長させる要素を引き出す努力に転換するのだ。

そうなれば比較対象は「嫉妬の対象」ではなく「自分を成長させる対象」に変わる。

比較属性を変えてしまう

実は嫉妬する相手というのは「自分より優れている相手全員」で起きるわけではない。自分を近い属性で起きやすいという特徴を持つ。

性別、年代、生まれた地域、所属団体、経歴など自分と近ければ近いほど、その相手に嫉妬が起きやすいのだ。つまり、同性で同年代、同じ日本人の同じ地域の出身者、同じ会社、同じ部署の相手となれば、ものすごく嫉妬が生まれやすいということになる。

結論、比較する相手の属性を変えてしまえばいいのだ。たとえば同業他社の同じ年代の社員を見ると嫉妬する人も、イーロン・マスク氏や孫正義氏といった大物経営者にはまったく嫉妬は起きないはずだ。その理由は業界や年代の違いもあるだろうが、まず圧倒的にすさまじい実力者であることから比較できるレベルではないからだ。だが、こうした相手からも多くの学びを引き出せるはずだ。これを利用する。

筆者が勉強に目覚めた時、自分を奮い立たせてやる気を引き出した相手は同じ勉強相手ではなく、歴史上の人物ばかりだった。歴史上の偉人に嫉妬する人はいないことからも、これは非常に有効だったと思っている。野口英世やエジソンの伝記を読んでやる気を高めていたのだ。

近い属性の相手は見ない

筆者は英語学習系YouTube動画を配信している。発信者でありながら視聴者でもあるが、視聴しながらトークの技やプレゼン技術など学ばせてもらうこともある。

だが、自分と同じ英語発信者の動画は見ない。理由は自分でも気づかないレベルで相手から影響されてしまうことを理解しているからだ。

煽りサムネイルやタイトルで、半分視聴者を騙すような内容や、キャッチーだが内容が不正確でまったく再現性が考慮されておらず、とても有益とは言えないものもある。

だが、そんな動画に称賛のコメントが多く並び、非常に多くの再生数を取る様子を見ると、なるべく直球勝負をしたいと考える自分はあまり気持ちの良いものと感じない。精神状態に悪い影響があるなら、「同業相手を見ない」と完全に見ないルールにしているのだ。

だから毎日生きていて筆者は嫉妬を感じることがない。その要素を完全に排除しているからだ。

嫉妬は上手に活用すれば、自助努力するエンジンに転換できることもあるだろう。しかし、ほとんどの人にそんな器用な真似をすることは難しく、多くの場合は自信を削り、不幸一色に染め抜かれるのでできるだけ自分の世界に入れないに越したことはないだろう。

 

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。