スペイン国王フェリペ6世、3度の被災地訪問で示した国民への思い

国王のバレンシア洪水被災地への訪問に反対していたサンチェス首相

国王は国民のことを思い、行動することが務めのひとつである。そのため、昨年10月末にバレンシア県を襲った洪水被災地を、国王フェリペ6世は3度訪れた。一方で、この行動を内心で批判していたのが、自己陶酔に陥ったサンチェス首相であった。

1回目の視察は、洪水発生の翌日に予定されていた。しかし、首相官邸はこれに賛成せず、首相サンチェス自身が同行する都合がつかなかったことが理由とされた。

サンチェス首相は現在の立憲君主制に批判的であり、スペインを第3共和制に移行させ、自ら初代大統領になることを夢見ていると多くの政治評論家が指摘している。彼は共和制主義者であり、左派のポピュリストとして、国王の存在を邪魔に感じているようだ。

国王の被災地視察に際しても、サンチェス首相は自ら批判を述べるのではなく、代理人を通じて批判させることが多かった。例えば、国王一家が予告なしにカタロッハ市を訪問した際、同市のシルベント市長(サンチェス首相と同じ政党所属)は「市民が復興のために働いているのに、国王一家は飲み物を飲んで休んでいる」と皮肉を述べた。

しかし、国王一家は多くの被災者と意見を交わし、被災者は国王一家と直接話せたことを喜んでいた。また、国王一家は現地の状況を自らの目で確かめ、消防隊や治安警察官とも意見交換を行った。これこそが国王の務めである。

サンチェス首相がやらかした前代未聞の行動

一方、サンチェス首相は最初の視察で民衆から泥を投げつけられ、罵声を浴びせられた結果、現場から一目散に逃げ出した。これは前代未聞の行動であった。さらに、逃げた理由として「暴力を受けた」と虚偽の説明をし、護衛の一人に棒のようなものが当たっただけにもかかわらず、自身が被害を受けたと偽った。

その後、国王夫妻が現地に残ったにもかかわらず、サンチェス首相はその場を離れた。この行動をめぐり国王とサンチェス首相は口論となり、王妃が仲裁に入る場面もあったという。この一連の行動は、一国の首相としてふさわしくないものであり、サンチェス首相が自らの恥を晒した形となった。

国王は数日後、別の被災地を訪れたが、サンチェス首相はその後一度も現場を訪れていない。さらに、200人以上が亡くなった大惨事の合同葬儀がバレンシア大聖堂で行われた際、国王夫妻が出席した一方で、サンチェス首相は欠席した。災害対応の責任を負う首相として、この行動は非難されるべきものである。

復旧作業への軍隊派遣も遅れ、被災4日後にようやく派遣された。その間、待機していた軍人の中には自主的に復興活動に参加する者も多かった。この遅延は、バレンシア州政府が野党第1党であったため、サンチェス首相が迅速な対応をためらったとされている。しかし、この規模の災害は州政府だけでは対処できず、首相が率先して指揮を執るべきであった。

3度目の国王の視察は家族同行で

国王は3度目の視察で、王妃と王女2人を同伴した。特に長女のレオノール王女は、将来スペインを統治する女王となる予定であり、この視察に同行させたのは、王女にその責任感を身につけさせるためであったと考えられる。