この記事こそ削除されろ。
朝日新聞記事【偽情報を減らすには規制必要?】
【偽情報を減らすには規制必要?】「日本のネットの父」と憲法学者に聞く
「日本のインターネットの父」といわれる慶応大教授の村井純さんらに聞いた記事です。https://t.co/3sTouVeXBy
— 朝日新聞社会部 (@Asahi_Shakai) January 11, 2025
朝日新聞が「偽情報を減らすには規制必要?」と題した記事を発出していました。
【偽情報を減らすには規制必要?「日本のネットの父」と憲法学者に聞く ネットと災害 「つながる技術」は命を救うか 赤田康和 田渕紫織2025年1月11日 9時01分】
能登半島地震で偽の救助情報が出回ったことについてサムネイルとなっていますが、内容の大半は、ほとんど関係ありません。
この記事、おかしなところがあります。
朝日新聞記事の嘘:「偽情報」に固執した削除ルール押し付けの意欲
日本では今年、情報流通プラットフォーム対処法が施行される。偽情報のうち誹謗(ひぼう)中傷などの投稿について削除申請から1週間での対応をSNS事業者に義務づける。
ただ、対象になるのは誹謗中傷など他人の権利を侵害する投稿に限られる。「有害だが違法とはいえない偽情報」は含まれず、効果は限定的とみられる。
ここには明確な誤情報があります。
かつていわゆるプロバイダ責任制限法と呼ばれていたものが改正された、いわゆる情報流通プラットフォーム対処法=「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」に関する説明では、「偽情報のうち誹謗(ひぼう)中傷などの投稿について」とありますが、同法では「偽情報」というカテゴリはありません。
偽情報か否かは関係なく、権利を侵害する情報や、公職の候補者に関しては名誉侵害情報とされた情報への対応=送信防止措置を採るか否かの判断が義務付けられているだけです*1。なお、真実相当性があって違法ではないとしても、真実性が無いものは国語的な意味での偽情報と言えます。
EUのデジタルサービス法における「偽情報」=disinformationは、意図的なものというニュアンスがあり(定義されてない上に本則上の用語ではない)、一般的にもそのような定義を用いる例があります。それとは別に、そのような意図を持たずに発信した情報を「誤情報」(misinformation)と定義する事例がありますが、こうした切り分けが常例と言えるほどの社会実体があるのかどうか。意図の無いことを装った、上掲の意味での意図ある偽情報などいくらでもある。
なぜ、朝日新聞は「偽情報」に固執するのでしょうか?
その判断は、いったい誰が行うのでしょうか?
既にMetaがファクトチェック機関の政治的偏向によって多くの正当な政治的言論が検閲的な状態だったと主張し始めていますが、「情報の真偽」をベースにした不可視化措置や公権力による制裁は、非常に危ういものになるでしょう。
朝日新聞の書きぶりでは「有害だが違法とはいえない偽情報」を取り締まった方が良い効果をもたらすと考えているようですが、その論法ならば、この朝日新聞の記事も削除・制裁金の対象となっても良いということになります。
テレビや新聞の誤報は偽・誤情報の対象外にしろと言うJFCの水谷瑛嗣郎
偽情報をめぐる法規制に詳しい関西大准教授(憲法学)の水谷瑛嗣郎(38)は「偽情報が生み出す悪貨の循環を断ち切るべきだ」と話す。「偽情報の市場」が成立してしまっており、「偽情報での金もうけ」を止めることが重要だという。
SNS事業者と広告業界が公開の場で協議し、「偽情報による金もうけ」を止めるためのルールを作る。政府はルール策定の議論には介入しないが、SNS事業者にルール作りに参加し、情報を開示するよう促す。政府が対話を重ねても、協力しない事業者には課徴金などの制裁も視野に入れる――。
「偽情報の市場」が成立しているため、偽情報での金もうけを止めることが重要。
これは同意です。実際、既にXはその手段を取っており、収益化をインプレッションではなく他のプレミアムユーザーによるエンゲージメントを指標とし、コミュニティノートが付いた投稿からは収益が発生しないように仕様変更されました。こうした自主的な取り組みを政府が支援するという形式が望ましい。
ただし、水谷瑛嗣郎氏と言えば、総務省のデジタル情報空間に関するワーキンググループにおいて、『パロディ・風刺や伝統メディアによる誤報など、「客観的な有害性」及び「社会的影響の重大性」がともに小さい情報については、対応を検討すべき「偽・誤情報」の範囲に含まれないものと考えることが適当ではないか。』などと提案していました。あの日本ファクトチェックセンター=JFCの運営委員です。
「偽情報による金もうけ」の抑止の主体に、テレビ・新聞・出版業界が無いことを。
SNS事業者と広告業界のみにルール策定せよと迫っている。
偽医療本がどれだけ新聞の広告欄に掲載されてきたと思ってるのか?
自分らは自主規範の対象外にしつつ他の主体のリソースを奪う社会を作ろうとしている。実に不公正で非対称な主張であり、社会の公器を名乗って軽減税率の対象になってはいけないでしょう。
「偽情報」のみならず、誹謗中傷や災害関連情報、医療情報、不安商売の収益化停止を
さて、この記事は消費者の関心と時間を奪い合う「アテンション・エコノミー(関心経済)」を最初に対象にしていました。
その観点からは、「偽情報」のみならず、誹謗中傷、災害関連情報、不安商売、レイジベイティング、医療情報での「アテンション」も収益化停止するべきでしょう。
この対応はプラットフォーム事業者の営業の自由であり、投稿それ自体の削除といった不可視化が無ければ表現の自由の問題ではない、ということは以下で書いた通りです。
有害な情報のカテゴリ化とそれへの対応策案はどんどん明確になってきているので、あとはどう実行に移すか、という段階になっています。
*1:当初稿では「送信防止措置が義務付け…」とあったのを修正しました。
編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2025年1月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。