地方の人気飲食店が東京で「ポップアップ」をする訳

最近、地方で人気の飲食店が東京の飲食スペースで「ポップアップ」と呼ばれる短期間の営業をするケースが増えています。

私が知っているだけでも、専用の施設として南麻布の寿司カウンターや東京ミッドタウン日比谷の飲食スペースなどがあります。厨房設備が完備していて、料理人とスタッフが材料や調理に必要なものを持参して営業する形式です。

先週は、錦糸町にあるイベントスペースで、北海道のイノベーティブイタリアンのお店が「ポップアップ」をやっていました(写真)。こちらのスペースも全国から様々なお店が東京にやってきて営業を行っているようです。

こちらのお店は現地にも行ったことがありますが、北海道の札幌駅からも遠いアクセスがあまり良いとは言えないお店です。そんなアクセスの悪いお店が東京まで出てきてくれるのはありがたいことです。

お店にとっても東京で食べた人が気に入れば、地元のお店にも来てくれる可能性がありますから、プロモーション効果も期待できます。

ただ、このような東京での「ポップアップ」には限界もあります。

まず価格です。料理人やスタッフの交通費、東京での宿泊代、そして、食材や調理器具の運搬コストなどがかかってきます。ワインペアリングの場合だとワインまで運ばなければなりません。

このようなコストが価格に転嫁されますから、地元で提供する価格に比べると、料金は2倍以上に跳ね上がります。

また、限られた機材で料理をすることになりますから、地元で食べる味と全く同じものは提供できません。

食材やお酒は輸送している間に劣化している可能性もあります。鮮度が重要な食材の場合、東京で調達しなければならない材料も出てきます。

お店の雰囲気も違いますから、現地のお店に行ったのと同じ経験ができるとは言えないのです。

今回は現地が先でポップアップが後でしたが、東北や四国にあるお店は東京のポップアップがきっかけで現地に予約して出かけました。

交通費と時間をかけてわざわざ行くわけですが、やはり東京で味わったのとは別格の感動がありました。

しかも交通費はかかりますが、価格は圧倒的に安く、東京の有名店の価格の高さに改めて気がつくきっかけとなりました。

現地で食べて得られる感動が、100%再現できるわけではありませんが、東京のポップアップは地方の名店に出かけるきっかけにはなります。

ただし、現地で食べるものとは「別物」と思った方が良いでしょう。だから気にいったら現地のお店に予約を取ってでかけるべきです。


編集部より:この記事は「内藤忍の公式ブログ」2025年1月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。