仕事や私生活がうまくいかず、日々悩んでいる人は多いと思います。今回は「感謝脳」(樺沢紫苑、田代政貴/飛鳥新社)を紹介します。
「感謝脳」(樺沢紫苑、田代政貴/飛鳥新社)
[本書の評価]★★★★(80点)
【評価のレべリング】※ 標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
健康を維持するためには
人生をより良くするためには、健康を維持することが不可欠です。樺沢さんは、健康になるためには「睡眠、運動、朝散歩」の3つが重要だと言います。
「最も重要な健康習慣が『睡眠』です。英国マンチェスター大学の研究によると、感謝の気持ちを抱きやすい人ほど、主観的な睡眠の質(ぐっすり眠れたという感覚)が良く、寝付きが良く、睡眠時間が長く、日中の眠気やパフォーマンスの低下が少ないことが分かりました」(樺沢さん)
「寝る前に『不安』や『心配』などのネガティブな感情が強いと、寝付きが悪くなります。寝る前の不安で脳が過剰に興奮し、交感神経(昼の神経)が優位になるからです。感謝の気持ちはリラックスをもたらすため、睡眠の改善に役立ちます」(同)
さらに、ロンドン大学の研究によると、2週間の感謝日記を書くことで、ポジティブ感情の増加と、睡眠の質の改善が相関して見られたそうです。
「1日1回、感謝の課題を記録してもらう。感謝のジャーナリングを1週間実践したところ、睡眠が改善するとともに、他者への寛容度が増し、経験への満足度が高まり、人生の問題をひとつ以上手放すことができたのです」(樺沢さん)
「香港教育大学による研究では、感謝日記を書いたグループでは、ストレスとうつ症状の改善が認められました。アイルランド国立大コーク校の研究では、感謝の介入を3週間行ったところ、ストレスとうつ症状の改善が認められ、幸福度も高まりました」(同)
自己肯定感を高める
樺沢さんは、感謝を意識することで、脳がポジティブに変化していくと指摘します。日々、感謝の気持ちを持つことで、周囲の人の支えや良い面に気付きやすくなるのです。
筆者は、この「感謝脳」の状態は「自己肯定感」と密接に関連していると理解しました。自己肯定感とは、自分の現在の状態をそのまま受け入れ、肯定できる感情のことです。周囲の人への感謝を意識することで周囲の人の支援や自分の成長に気付きやすくなるため、自己肯定感が育まれるようになります。
反対に、自己肯定感が低い状態では、他人と自分を比較する傾向が強くなります。そのため、ネガティブな感情を持ちやすくなり、「毎日の生活が閉塞感に包まれている」「何をするにも気乗りしない」といった状態が続いてしまいます。
大切なことは「自分のあり方」であり、自分の価値は他人によって規定されるものではないのを理解することです。他人の評価を気にせず、自分の選択を大切にすることで、自己肯定感は徐々に高まっていきます。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
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